201 / 785
旅路〜デザリア〜
209
しおりを挟む
「あの岬が目印だ。
明日の昼には“デザリア”に着くだろう。」
クロス伯爵の指差す方角に目をやりイオリは微笑んだ。
「なんだ?陸が見えて安心してるのか?
吐かなくていいもんな。」
揶揄うアレックスに周りは笑い、イオリは頬を膨らます。
「なんですかー!
アレックスさんも一昨日に吐いてたでしょう?」
「それは、閣下に無理やり酒を飲まされて悪酔いしたんだよ。
お前と一緒じゃないの。」
それはそれで、どうかと言うところだがアレックスも失態を恥じるようにクロス伯爵を睨みつけた。
「ワハハハ。
ダグスクの男は酒に強くなくてどうする!
海の男はドワーフにも負けんぞ。
最後の夜だ。
今夜も酒盛りだな!」
クロス伯爵は楽しそうにアレックスの肩を組んでブンブンと揺さぶった。
逃げたそうなアレックスをホールドする力はパワー自慢のヒューゴも瞠目して見つめている。
そんな彼らを横目に、ディビットは安心したように微笑んだ。
「初めての船旅もイオリ達と一緒なら楽しかったです。
3日ほど嵐に巻き込まれた時はどうしようかと思いました。」
「ディビットも酔う前にテントに逃げて来たもんね。」
パティがケロッとして言うと他の子供達がクスクスと笑った。
「あれは助かりました。
さすが、イオリのテントです。」
イオリは同意するように頷いた。
賑やかな一団に騎士が近づいてきた。
「失礼致します!
“デザリア”より迎えの準備はできていると返信がありました。」
騎士がメモをディビットに渡すのを不思議がる子供達にクロス伯爵が説明した。
「相手国に近づいたら、通信を送るのが礼儀だ。
悪意が無い事を示さねばらなん。
無遠慮に近づけば相手も身構えるだろう?
特に今回は使節団としてディビット殿下がいらっしゃるのだ。
友好を示す為にも必要な事だ。」
「なるほど。」と感心するのは子供達だけじゃない。
イオリも国同士の礼儀というのを知った気がした。
イオリ達の反応が良かったのか、ご機嫌なクロス伯爵だったが、メモに目を落としたディビットが顔を顰めているのを見て表情を硬らせた。
「何かございましたか?」
「・・・“デザリア”で問題が起こっているらしい。
その為に話を聞きたいと。
到着次第、速やかに王宮に来られたしとある。」
「問題?
他に情報は?」
「何もない。
しかし、こちらに敵意を向けているわけではなさそうだ。
閣下。
出来るだけ早く着く事が出来るだろうか?」
ディビットの願いを叶えるべく、クロス伯爵は即座に行動に移した。
「船の事を考え、迂回して向かおうと思っておりましたが、直進いたしましょう。
今夜にでも到着します。
その代わり、波の揺れは覚悟してもらわねばなりません。」
気遣うような視線を送ってくるクロス伯爵にイオリは肩をすくめた。
「・・・部屋に篭ります。」
がっかりしたようなイオリに苦笑するとディビットは少し考えると咳払いをした。
「私も一緒に良いだろうか?」
船にクロス伯爵の声が響き渡る。
「予定を変更する!
“デザリア”に向けて全速全身!!
最短で向かえ!!」
イオリの船の旅は終わりを迎えようとしていた。
明日の昼には“デザリア”に着くだろう。」
クロス伯爵の指差す方角に目をやりイオリは微笑んだ。
「なんだ?陸が見えて安心してるのか?
吐かなくていいもんな。」
揶揄うアレックスに周りは笑い、イオリは頬を膨らます。
「なんですかー!
アレックスさんも一昨日に吐いてたでしょう?」
「それは、閣下に無理やり酒を飲まされて悪酔いしたんだよ。
お前と一緒じゃないの。」
それはそれで、どうかと言うところだがアレックスも失態を恥じるようにクロス伯爵を睨みつけた。
「ワハハハ。
ダグスクの男は酒に強くなくてどうする!
海の男はドワーフにも負けんぞ。
最後の夜だ。
今夜も酒盛りだな!」
クロス伯爵は楽しそうにアレックスの肩を組んでブンブンと揺さぶった。
逃げたそうなアレックスをホールドする力はパワー自慢のヒューゴも瞠目して見つめている。
そんな彼らを横目に、ディビットは安心したように微笑んだ。
「初めての船旅もイオリ達と一緒なら楽しかったです。
3日ほど嵐に巻き込まれた時はどうしようかと思いました。」
「ディビットも酔う前にテントに逃げて来たもんね。」
パティがケロッとして言うと他の子供達がクスクスと笑った。
「あれは助かりました。
さすが、イオリのテントです。」
イオリは同意するように頷いた。
賑やかな一団に騎士が近づいてきた。
「失礼致します!
“デザリア”より迎えの準備はできていると返信がありました。」
騎士がメモをディビットに渡すのを不思議がる子供達にクロス伯爵が説明した。
「相手国に近づいたら、通信を送るのが礼儀だ。
悪意が無い事を示さねばらなん。
無遠慮に近づけば相手も身構えるだろう?
特に今回は使節団としてディビット殿下がいらっしゃるのだ。
友好を示す為にも必要な事だ。」
「なるほど。」と感心するのは子供達だけじゃない。
イオリも国同士の礼儀というのを知った気がした。
イオリ達の反応が良かったのか、ご機嫌なクロス伯爵だったが、メモに目を落としたディビットが顔を顰めているのを見て表情を硬らせた。
「何かございましたか?」
「・・・“デザリア”で問題が起こっているらしい。
その為に話を聞きたいと。
到着次第、速やかに王宮に来られたしとある。」
「問題?
他に情報は?」
「何もない。
しかし、こちらに敵意を向けているわけではなさそうだ。
閣下。
出来るだけ早く着く事が出来るだろうか?」
ディビットの願いを叶えるべく、クロス伯爵は即座に行動に移した。
「船の事を考え、迂回して向かおうと思っておりましたが、直進いたしましょう。
今夜にでも到着します。
その代わり、波の揺れは覚悟してもらわねばなりません。」
気遣うような視線を送ってくるクロス伯爵にイオリは肩をすくめた。
「・・・部屋に篭ります。」
がっかりしたようなイオリに苦笑するとディビットは少し考えると咳払いをした。
「私も一緒に良いだろうか?」
船にクロス伯爵の声が響き渡る。
「予定を変更する!
“デザリア”に向けて全速全身!!
最短で向かえ!!」
イオリの船の旅は終わりを迎えようとしていた。
1,451
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
転生幼子は生きのびたい
えぞぎんぎつね
ファンタジー
大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。
だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。
神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。
たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。
一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。
※ネオページ、カクヨムにも掲載しています
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
精霊に愛された錬金術師、チートすぎてもはや無敵!?
あーもんど
ファンタジー
精霊の愛し子で、帝国唯一の錬金術師である公爵令嬢プリシラ。
彼女は今日もマイペースに、精霊達と楽しくモノ作りに励む。
ときどき、悪人を断罪したり人々を救ったりしながら。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆三人称視点で本格的に書くのは初めてなので、温かい目で見守っていただけますと幸いです◆
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる