続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜ルーシュピケ〜

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 森に囲まれた国はあちこちで歓声が上がっていた。
 “ルーシュピケ”の住人達がイオリ達を受け入れた証拠だった。

「“ルーシュピケ”が死した日を“腐敗の日“と呼び、虹の雨が降った日を“復活の日”と呼ぶようになったのだ。」

 “腐敗の日は”は、あの日の犠牲を憂い家で静かに過ごし、“復活の日”は森が再び息づいた事を喜び、国中で祝祭が行われるようになった。

 ハニエル老は喜ぶ住人達を前に愉しげに微笑んだ。

「ねぇー!
 どうして、鹿の子のがカーバンクルなの?」

 しつこく食い下がっているニナにヒューゴやリルラ達は困っていた。
 答えられる訳がない、誰もが答えを持っていなかった。

「人の子よ。
 こちらへおいで。」

 ハニエル老に手招きをされると、ニナは恐々ながらも年老いたエルフの前にちょこんと座った。

「守護者アマメ様のお姿など、我ら“ルーシュピケ”の者達ですら知らんのだよ。」

「えっ、鹿さんじゃないんですか?」

 驚くニナにハニエル老は微笑んだ。

「鹿であり、狐であり、時には風でもある。
 我らにとって大切なのはアマメ様の実態ではなく、そこに存在する・・・という事なのだ。」

 分かったような、分かっていないような顔でニナは頷いた。

「アマメも言っていたよ。
 自分の姿は人によって見え方が違うって。」

 イオリがニナの頭を撫でると、ニナは首を傾げた。

「見え方が違うの?」

「そうらしい。
 人によって狼にも蛇にも鳥にもなるって、中には人の姿にも見えるらしいよ。
 ポーレット公爵家はカーバンクルに愛された一族だ。
 家紋もカーバンクルだしね。
 それに、テオさんの亡くなった従魔はのカーバンクルだったんだ。
 鹿の子がカーバンクルになったのではなくて、テオさんが求めたのがカーバンクルだったのかもしれないね。」

「ふーん。」

 やっと納得してくれたのか、ニナはイオリを見上げてニッコリとした。

「バンデちゃん、可愛いもん。
 ニナはカーバンクルのバンデちゃんで良い!」

 いつもテオルドの側でプスプスと鼻を鳴らして眠っている小さなカーバンクル。
 イオリはバンデだけでなく、ヴァルトの従魔クロムスやルチアそして、ニコライの従魔デニの姿を思い出していた。
 あんなに甘えん坊であったクロムスがバンデに対しては兄として振る舞っている。
 イオリが微笑んでいるのを遮るように、ハニエル老の声が届いた。

「時にイオリよ。」

「はい。」

「・・・ミズガルドの新しき王とは、イオリの目にどう写る?」

「ミズガルド王ですか?」

「そうだ。
 我れらの国に、2年前に彼の国より謝罪の使者が来たのだ。
 “パライソの森”を危険に晒した事、そして迫害の過去と現在に対しての謝罪だ。
 アースガイル王からの紹介があるとは言え、我等はミズガルド・・・いや、人を簡単に信じる心を持ち合わせておらぬのだ。」
 
 ハニエル老の問いかけるような顔にイオリは考え込むのだった。
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