続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

文字の大きさ
467 / 785
旅路〜パライソの森⒉〜

475

「ルーシュピケの皆々様に申し上げる。」

 刀を構え、ソウスケと対峙したロクは声を張り上げた。

「この地に危険を引き連れてきた我々に対し、お怒りはもっともの事。
 詫びても償いのしようが御座いません。
 パライソの森を通ると決めたのは主人ではなく俺で御座います。
 現在、我が国には“魅了”の闇が蔓延し、国家の危機に苛まれております。
 今、目の前にいる愚か者の所業も“魅了”の影響かもしれぬのです。」

 ロクの言葉にガーディアン達は騒めき出した。

「魅了?」

「無理やり言う事を聞かせるって事だよ。」

「人族どうしで奴隷ごっこしてるって事か?」

「馬鹿らしい。」

 人族嫌いのエルフや獣人にとって、人の欲望の末の犯罪ほど愚かしい事はないのだろう。
 ガーディアン達はロクの話に嫌悪感を隠そうとしなかった。

「同じ主人に仕えた縁。
 この男は私の手で始末をつけさせて頂きたい。
 手出し無用に願います!」

 最後の言葉こそ、ロクが言いたかった言葉なのだろう。
 魅了の手に落ちた仲間を自分の手で葬ろうとしているのだ。

 ロクの覚悟に一同が固唾を飲んで見守った。

「・・・お前如きに私が負けるとでも?」

 ソウスケは逃げられぬと悟ったのか、ロクを睨みつけた。

「あの御方こそが我ら“グランヌス”にとってのとなるのだ・・・。」

 刀を構えど、襲ってくる気配のないソウスケをロクは悲しんだ。

「お労しい姿っスよ。
 ソウスケ殿。
 かつての貴方なら、主の為なら負け戦にも飛び込んで行った事でしょう。
 何を怯えているっスか?
 さっさと、こいや!!」

 ビクッと肩を揺らしたソウスケの切っ先はブルブルと震えている。

「・・・もう、良い。
 ロク。」

 一連の事態を信じられぬ思いで見つめていたムネタカがロクを止めた。

「お前の言う通りだ。
 目の前にいるのはソウスケではない。
 ソウスケならば、私と意見の相違があれば1対1で立ち会いを申してきた事だろう。
 ・・・ソウスケ、お前も“魅了”に負けたのだな。
 最後は私の手で送り出す。
 それが、幼き頃より勤め上げてくれた友への慰めだ。」

 ムネタカは刀を取り出すと、友人と対峙した。

「来い。
 最後の立ち会いだ。」

 その目は国に裏切られ、友に裏切られ打ちのめされていた、先程までの若者ではなかった。
 全てを受け入れようと、友を前に覚悟を決めた男の目だ。

「・・・ムネ・・タカ。
 ・・・ムネタカ。
 いざ!」

 視線を彷徨わせていたソウスケがグッと歯を食いしばり、ムネタカ向かって走り込んできた。

「さらばだ。友よ。」

 ムネタカは涙を堪え、友に目掛けて刀を振り上げた。

バンっ!!

 そんな中だった。
 大きな破裂音が、その場を掌握した。

 一同が耳を押さえて蹲った。
 驚くムネタカの目にコメカミから煙を上げて白目を剥いて倒れているソウスケが映った。

「何、殺そうとしてるんですか。
 折角の証人ですよ?」

 声のした方を見れば、無遠慮に立ち会いを止めた男・イオリが不満気に立っていたのであった。

あなたにおすすめの小説

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った

歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。 だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」 追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。 舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。 一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。 「もう、残業はしません」

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る

りーさん
ファンタジー
 アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。  その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。  そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。  その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい

歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、 裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会 ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った 全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。 辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/387029553/episode/10775138 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646