続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

文字の大きさ
545 / 785
旅路 〜グランヌス〜

553

 トージは町屋の間をスルスルと澱みなく進んで行く。
 イオリや子供達は難なくついて行くが、ここに来ても文句を言う輩が・・・。

「・・・狭い。」
「暗いしな。」
「狭いって言うか・・・。」
「ネズミにでもなったようだ。」

 顔を顰める、丸々とした体型のドワーフ達に子供達が笑いを堪えるように体を震わせた。

「やめて、今、笑わせないで。」
「スコル・・・笑わないでよ。
 こっちが・・・プププ。
 可笑しくなってくる。」
思い出しちゃった。」
「ネズミって。クスクス。」

 関所を抜ける前に既に一騒ぎしていたドワーフ達は照れるように黙り込んだ。

「怖いー。高いー。
 泣くー。助けてぇ。」

 トージと出会ってから、大門近くまで通ってきた裏道でのドワーフ達の喚きをロクが感情なく真似をした。
 堪えきれない子供達の笑い声が人に聞かれやしないかと、イオリは内心ヒヤヒヤした。

 川岸で合流したトージが選んだ道は《隠密が使う秘密の道》と言うだけあって、岩で蓋された目立たない洞穴だった。
 覗いてみれば長く、細い暗い道が奥へ奥へと続いていた。
 
 湿気と温度の高い細長い空洞を進んでいくと、折に触れて1人分しかない隙間が出てきたり、屈まなければ通れない穴や、足を滑らせればボコボコと沸騰した池に真っ逆さまに落ちる細道とスリル満点の道だったのだ。

 当然の如く、ギャーギャーと喚いていたのはドワーフ達だった。

 暑い、息苦しいから始り、窮屈だと嘆いた後に、高さや恐怖と闘いながら泣き声を上げて前進して来たのだ。

「やめいっ!」
「そこまで恥ずかしい姿じゃなかったはずだぁ。」
「もう、あの道は使わない。絶対に。」
「まだ着かないのか?ここだって、相当暗いぞ。」

 ドワーフ達の文句に答える代わりに先頭を歩いていたトージが、音も立てずに建物の裏戸を開いた。
 すると中からは明るい女性の声がした。

「あれ、トージさん?
 どうしなさった?」

「悪いな女将さん。
 通してもらうよ。」

「おやおや、難儀な事だねぇ。
 上の座敷でお役人が食事をしているから静かにね。」

「いつも悪いな。」

「言いっこなしだよ。
 さぁ、早く。」

 トージが無言で頷くとロクが仲間達を手招きして、店の厨房に促した。
 女将と呼ばれた女性にイオリが会釈をすると微笑みを返してくれた。

 そこからは同じだった。
 飲み屋、薬屋、旅籠屋、籠屋と店から店へとバックヤードを渡り歩いて行くトージを店主達は暖かい笑顔で迎え入れていた。

「日頃から馴染みの店達には世話になっているんです。
 今のグランヌスに、このルート以上に安全な道はありません。」

 トージが最後の扉を開けると、中にいた者達が待ち受けていたように一斉に頭を下げた。

「「「「おかえりさない。」」」」

「お客人を連れ帰った。
 頭目に伝えてくれ。
 次代様のお戻りだ。」

 ここが噂の“イケダ屋”と知ったのは暫く後の事だった。





あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい

歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、 裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会 ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った 全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。 辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。

「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った

歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。 だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」 追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。 舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。 一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。 「もう、残業はしません」

家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る

りーさん
ファンタジー
 アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。  その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。  そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。  その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)

星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。 団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。 副団長「彼女のご飯は軍事物資です」 私「えっ重い」 胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!? ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。 (月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)

もふもふ村へようこそ〜パーティを追放されたペットショップ店長、最強のもふもふ村を作る。獣も傷ついた冒険者も暖かいご飯を食べて安心できる居場所

積野 読
ファンタジー
勇者パーティを「足手まとい」として追放された、前世ペットショップ店長のショウ。  彼の持つスキル【ペット飼育】は、Eランク以下の小動物しかテイムできない外れスキルだった。  しかし、危険な「嘆きの森」で保護した犬のポチ、猫のタマ、スライムのプルン、ヒヨコのヒナたちは、鑑定不能なステータスや不思議な力を持つ規格外の存在だった。  ショウは前世の知識を活かした手作りご飯を振る舞い、ペットたちと穏やかな生活を築いていく。  やがてその温かな居場所には、モフモフ中毒のエルフの森番、教会から逃げてきた元聖女見習い、食いしん坊な魔族の少女、剣が握れなくなった元Sランク冒険者など、ワケありな人々が次々と集まってくる。  これは、ただ動物を愛するだけの男が、美味しいご飯とモフモフの力で傷ついた人々を癒やし、時には森の脅威すらも退けてしまう、優しくて賑やかなスローライフの物語。