続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路 〜グランヌス〜

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 赤提灯がぶら下がり、見た事もない様相の建物が立ち並ぶ姿を初めて目にしたヒューゴは唖然とした。

「おぉ・・・これこそ懐かしき、我が故郷。」
「夢見た街並み。」
「変わってないなぁ・・・。」
「工房は無事かな?」

 いつも騒々しいドワーフ達も静かに嬉し涙を流していた。

 “イケダ屋”に到着した一同は通された3階の部屋から外を眺めていた。

《ヘンテコな町だね。》
 
 ゼンの楽しそうな声が聞こえるとイオリは苦笑した。

「俺にとっては物語の中に入ったみたいだよ。」

 イオリが物珍しそうにしているとゴヴァンが指をさした。

「グランヌスの建国時での街づくりでは火龍の恩恵にあやかって赤い色を好んで使われたそうです。
 灯篭しかり、欄干などが赤いのは、その時の名残でしょう。」
 
 時代劇に出てくる夜の街・・・いわゆる遊郭と言われる絵や写真で見た事のある風景に似たグランヌスの街並みに、実はイオリは若干であるが引いていたのである。
 理由が火龍にあるのなら、ある意味納得したイオリは提灯が並ぶ夜景を感慨深気に見つめた。

「忘れないで下さいよ?
 一応、皆さんはっスからね?
 下手したら“お尋ね者”なんですからね。」

 窓を大きく開いて覗き込むイオリ達にロクは苦笑した。

 ロクもロクとて地元に戻ってきて嬉しくないはずがなかった。
 それでも、敵陣の中に潜り込んだ主人を思うと素直に喜べないのだ。

スーッ

 襖が開く音がした。
 
けぇったか。」

 背の低い老人が入ってくると、ふざけていたロクが身を整えムネタカの後ろに座った。
 イオリは子供達を手招きして傍に座らせると、祖父と孫の再会を見守った。

「ジジ様。
 ムネタカ、只今戻りました。」

「よく戻った。
 話は聞いてる。
 ソウスケとキクは難儀な事だったな。」

「私も2人に甘え、変化に気づきませんでした。
 申し訳ありません。」

 謝るムネタカに老人は鼻で笑った。

「王すら陥落した今のご時世なら下の者達の事なんて分りゃしねーよ。
 お前も気負ってやるな。
 ソウスケもキクも覚悟してお前から離れたのだろう?
 何であれ、アイツらはグランヌスの子よ。
 離れようとも、国の為に尽力するだろうさ。」

 老人は持っていた煙管をポンっと叩くと灰を器に落とした。

「で?
 お前さんがイオリかい?」

 老人の眼光鋭い瞳に見つめられたイオリは頷いた。

「初めまして、アースガイルから来ました、冒険者のイオリと申します。
 こちらから従魔のゼン、アウラ、ソルです。
 双子のスコルとパティにエルフのナギ、ヒューゴさんとニナです。
 ムネタカさんとは“パライソの森”で出会い、ご縁あってグランヌスまで共に参りました。
 入国の際にはトージさんにお世話になりました。」

「丁寧な挨拶痛みいる。
 孫達が貴殿に救出された聞く、こちらこそ世話になった。」

 老人はイオリから全く視線を動かさない。

「ワシの名はシノノメ・カンスケ。
 グランヌスの王家に仕える隠密の頭目だ。」

 ではなく本名を簡単に明かした祖父に驚きながらも、警戒心が強い祖父を認めさせたイオリに感心するムネタカだった。

 

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