続々・拾ったものは大切に大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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深淵のダンジョン 〜オリオンの元へ〜

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「へぇ。
 じゃあ、“深淵のダンジョン”って最後まで洞窟って事ですか?」

「おうよ。
 確かに他のダンジョンの中には川だったり草原だったり不思議な光景も見られるが、イルツクの“深淵”は最後まで変わりない洞窟が続いているのさ。」

 イオリは宿屋“蓮の傘”の食堂で数人の冒険者と話し込んでいた。

「だがよ。
 “深淵”も他と負けて劣らず罠の仕掛けや魔獣は出るからな。
 気をつけて行けよ。」

「はい。
 有難うございます。」

 朝一番の朝食にありつこうと冒険者達がやって来ると、それよりも前に真っ黒な出立の若者がカウンターに座っていた。

 昨夜“蓮の宿”の主人であるアランから、この若者が“黒狼”だと聞いた冒険者達は一瞬にして緊張した顔をした。

「おはようございます。」

 自分達と裏腹に人懐っこい笑顔を向けてくる若者に冒険者達は会釈をしてぎこちなく各々テーブルに座った。

「オヤジさん。
 あれ食べさせて下さい。前に来た時に出してくれた料理。
 小麦粉を薄く伸ばして焼いた。」

「ソッティーレな。
 今日は良い肉も仕入れてあるから乗せてやるよ。」

「やった。
 子供達も後々起きてくると思います。」

 ソッティーレとは小麦粉で作った生地を薄く伸ばし具材を巻くクレープの様な食べ物だ。

 ニコニコした顔で料理を待つイオリを見て冒険者達は英雄と賞賛されるSランク冒険者が想像よりも普通の若者である事に驚きの視線を向けた。

「今日からダンジョンに向かうのか?
 準備は整ったって事だな。」

 緊張している冒険者とは関係なく宿屋の店主であるアランは慣れたようにイオリと会話をする。

「はい。準備は整ってます。
 冒険者ギルドに顔を出してダンジョンに入る許可をもらってから向かう予定です。
 ほら、前に来た時は緊急だったから移動の魔道具とか使っちゃったじゃないですか。
 俺、“深淵のダンジョン”の事なにも知らないですよ。
 情報集めないと・・・。」

 そう話すイオリにアランが指差した。

「だったら、その辺の奴らに情報貰えよ。
 銀貨とか払えば話てくれるんじゃないか?」

 話の矛先が自分達に向けられた冒険者達はビクッとしている。

「え?良いんですか?」

「そいつらは、イルツクに長期滞在して“深淵のダンジョン”に潜ってるからな。
 それなりに情報もってるぞ。」

「わぁ~。
 お願いします。
 今日の朝食は俺が奢ります。
 “深淵のダンジョン”の事教えて下さい。」

 真っ黒な目をキラキラさせた若者・・・イオリに冒険者は顔を引き攣らせコクコクと頷いた。

 基本的に素朴で人懐っこいイオリに冒険者達が緊張を解いたのも直ぐなもので。

 食堂に子供達がやって来た頃には笑い声が響いていた。

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