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深淵のダンジョン 〜オリオンの元へ〜
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最終ボスの部屋は土色の岩盤が洞窟広がる場所だった。
聳え立つような何本もの柱には、それぞれ幾何学模様が刻まれていて、その間からイオリ達を狙う大猪の魔獣が異彩を放っていた。
怒気孕む赤く染まった瞳は標的を見据えて、威嚇する様に前脚を掻いていた。
その足も根本にいけばいく程に筋肉質でムキムキに盛り上がっている。
口元から突き出ている牙は弓形で喰らえば一溜まりも無いだろう。
ブゴォォォ!
突如、咆哮を上げて走り込んできた大猪の魔獣にイオリ達はバラバラになって避けた。
ドォォォォン!!
大きな音を立てて柱にぶつかる大猪の魔獣はダメージもなく振り返ると、再び前脚を掻き威嚇を続けている。
「息も吸わせてくれない緊張感だな。」
そう言いながらも大きく息を吐くヒューゴにイオリはニコッとした。
「猪って、猪突猛進の直進ばかりで急には止まれないし曲がれないなんて勘違いされていますが、実際には急停止するし曲がるのも得意なんです。
バックもするし、機敏に動く事なんて当たり前なんですよ。」
イオリは斜め掛け鞄から出したパチンコで木の実を大猪の魔獣へ飛ばしてみた。
すると、大猪の魔獣は苛立たしげを隠す様子もなくバックステップで木の実を避けて見せた。
「ね?想像してるより器用でしょ?
だから、凄い面倒な相手です・・・。」
揶揄われたとでも思ったのか、大猪の魔獣は口の端から炎を漏れさせていた。
「あれが、普通の生き物ではない証拠だな。
炎耐性もあるのかよ。」
ヒューゴは能力の高い大猪の魔獣にウンザリしたようだ。
「ねー。
これ、どうするの?」
さっきの突進でバラバラに避けていた子供達がナギの瞬間移動で一同に介していた。
「恐らく跳躍もあって頭もいいから落とし穴だって駄目だろうね。」
唸るイオリの足元で真っ白な子狼のゼンが地面をポンポンと叩いている。
「うん。そうだよね。
どっちにしろ岩盤を掘ること自体が面倒だったよ。」
ゼンが「まったく。」と呆れた様に溜息を吐く。
クスクスと笑うイオリは再び、大猪を観察した。
本来であれば、猪と出会った場合は刺激をしないように静かに去った方が良い。
ゆっくりと後退り静かに静かに・・・。
子供の頃に祖父に教えられた事だ。
しかし、既に刺激はしてしまっているし、標的として認識されている今、この大猪から逃げるという選択はない。
「真正面から勝負しろ。
そういう事だよね。オリオン。」
大きな亀が笑っている気がする。
イオリは一度口元を緩めると、斜め掛け鞄を弄った。
「やあ。
少し付き合ってくれるかい?」
優しく話しかけてくるイオリに大猪の魔獣の口元の炎が大きく飛び出る。
走り出したイオリと大猪の距離が縮まると、ヒューゴや子供達の息を呑む音がした。
聳え立つような何本もの柱には、それぞれ幾何学模様が刻まれていて、その間からイオリ達を狙う大猪の魔獣が異彩を放っていた。
怒気孕む赤く染まった瞳は標的を見据えて、威嚇する様に前脚を掻いていた。
その足も根本にいけばいく程に筋肉質でムキムキに盛り上がっている。
口元から突き出ている牙は弓形で喰らえば一溜まりも無いだろう。
ブゴォォォ!
突如、咆哮を上げて走り込んできた大猪の魔獣にイオリ達はバラバラになって避けた。
ドォォォォン!!
大きな音を立てて柱にぶつかる大猪の魔獣はダメージもなく振り返ると、再び前脚を掻き威嚇を続けている。
「息も吸わせてくれない緊張感だな。」
そう言いながらも大きく息を吐くヒューゴにイオリはニコッとした。
「猪って、猪突猛進の直進ばかりで急には止まれないし曲がれないなんて勘違いされていますが、実際には急停止するし曲がるのも得意なんです。
バックもするし、機敏に動く事なんて当たり前なんですよ。」
イオリは斜め掛け鞄から出したパチンコで木の実を大猪の魔獣へ飛ばしてみた。
すると、大猪の魔獣は苛立たしげを隠す様子もなくバックステップで木の実を避けて見せた。
「ね?想像してるより器用でしょ?
だから、凄い面倒な相手です・・・。」
揶揄われたとでも思ったのか、大猪の魔獣は口の端から炎を漏れさせていた。
「あれが、普通の生き物ではない証拠だな。
炎耐性もあるのかよ。」
ヒューゴは能力の高い大猪の魔獣にウンザリしたようだ。
「ねー。
これ、どうするの?」
さっきの突進でバラバラに避けていた子供達がナギの瞬間移動で一同に介していた。
「恐らく跳躍もあって頭もいいから落とし穴だって駄目だろうね。」
唸るイオリの足元で真っ白な子狼のゼンが地面をポンポンと叩いている。
「うん。そうだよね。
どっちにしろ岩盤を掘ること自体が面倒だったよ。」
ゼンが「まったく。」と呆れた様に溜息を吐く。
クスクスと笑うイオリは再び、大猪を観察した。
本来であれば、猪と出会った場合は刺激をしないように静かに去った方が良い。
ゆっくりと後退り静かに静かに・・・。
子供の頃に祖父に教えられた事だ。
しかし、既に刺激はしてしまっているし、標的として認識されている今、この大猪から逃げるという選択はない。
「真正面から勝負しろ。
そういう事だよね。オリオン。」
大きな亀が笑っている気がする。
イオリは一度口元を緩めると、斜め掛け鞄を弄った。
「やあ。
少し付き合ってくれるかい?」
優しく話しかけてくるイオリに大猪の魔獣の口元の炎が大きく飛び出る。
走り出したイオリと大猪の距離が縮まると、ヒューゴや子供達の息を呑む音がした。
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