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旅路 〜ダグスクへ〜
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森の中の大きな楠の木の根本に見慣れないテントが登場し、着火したての焚火からは煙がモクモクと空に登っていた。
側に流れる川は柔らかいせせらぎの音を奏で旅の疲れを癒してくれている。
「本当に大きい木だねぇ。」
根本から首を直角に曲げて見上げるニナに兄であるヒューゴは微笑む。
「古からこの森を見守ってきたんだろな。」
「・・・うん。」
ヒューゴは自分には見えない何かを凝視する妹を見守った。
「精霊か?」
「うん。
急なお客さんで驚いたって。
でも、休憩に使って良いって。」
ニナが指差す枝を見ても、やはりヒューゴの目には何も写らない。
少し寂しく思っていると、イオリや双子やナギがやって来た。
「突然お邪魔して申し訳ありません。
一晩お世話になります。」
イオリが頭を下げると子供達も習う様に頭を下げた。
「イオリ見える?」
問いかけるニナにイオリはクスッと笑って肩を竦めた。
「残念だけど姿は見えないな。
でも、なんとなくいる気配はするかな。
なんとなくね。」
見えないと言いながら、確実に精霊のいる方向に視線を向けて微笑むイオリにニナは目を見開いた。
精霊もイオリに興味があるのか、鼻歌混じりに近づいては顔を覗き込んで微笑んでいる。
「精霊さんは何て?」
イオリに問い掛けられたニナはニッコリとした。
「今夜は見守っていてあげるから、安心して眠りに付きなさいって。」
「有難いです。
宜しくお願いします。」
クルッと振り返り料理に戻るイオリにヒューゴは苦笑した。
普通、精霊が目の前にいると聞けば慌てたり、興奮したり、逆に穿った考えを持つものだが、実際に精霊の姿が見えるニナと同じくらいイオリは精霊との付き合い方が上手い。
精霊がしたい事を尊重し、怒れる精霊がいれば宥め、悲しむ精霊がいれば寄り添い、楽しむ精霊がいれば一緒に笑う。
それは神の愛し子としてというよりかは、イオリの本質によるものが大きいのだろう。
ただいるだけで、人を和ますイオリは精霊にすら好かれるのかもしれない。
「今日は何作るの?」
料理の準備を始めたイオリにスコルが近づいていく。
「ガッツリとお肉を焼くよ。
冒険者ギルドで解体してもらったから良質なお肉が沢山あるんだ。
それに、イルツクの街で野菜も手に入れたからね。
今日は旅の再開に豪勢にいくよ。」
お肉や豪勢という言葉を聞いた子供達は大喜びだ。
「「「「わーい!!」」」」
焚き火に焚べていた炭の様子を覗くイオリに真っ白な毛糸玉のゼンがトコトコと着いていって一緒になって見つめ始めた。
肉と聞いたスコルは米を炊くと意気込んでいるし、パティはナギとニナを連れて寝る時の為のテントの中の準備に向かった。
それぞれの働きをニコニコと見つめていたヒューゴの腰をグィっと押す者がいた。
「おっ。アウラ戻ったのか?」
馬車を引っ張ってきたアウラが楽しい自由時間を過ごして戻ってきたようだ。
そんなアウラに「ほら、お前も働け。」
そう言われたようで、ヒューゴは苦笑しながら腕まくりを始めた。
「さて、精霊が見守ってくれているはいえ俺は俺でシールドを張るとしますかね。」
コクコクと頷くアウラを見てヒューゴは吹き出すのだった。
※※※※※ ※※※※※
書籍化第4巻宜しくお願いします!
コミカライズも第2巻が書籍化されました!是非、ご覧下さい。
側に流れる川は柔らかいせせらぎの音を奏で旅の疲れを癒してくれている。
「本当に大きい木だねぇ。」
根本から首を直角に曲げて見上げるニナに兄であるヒューゴは微笑む。
「古からこの森を見守ってきたんだろな。」
「・・・うん。」
ヒューゴは自分には見えない何かを凝視する妹を見守った。
「精霊か?」
「うん。
急なお客さんで驚いたって。
でも、休憩に使って良いって。」
ニナが指差す枝を見ても、やはりヒューゴの目には何も写らない。
少し寂しく思っていると、イオリや双子やナギがやって来た。
「突然お邪魔して申し訳ありません。
一晩お世話になります。」
イオリが頭を下げると子供達も習う様に頭を下げた。
「イオリ見える?」
問いかけるニナにイオリはクスッと笑って肩を竦めた。
「残念だけど姿は見えないな。
でも、なんとなくいる気配はするかな。
なんとなくね。」
見えないと言いながら、確実に精霊のいる方向に視線を向けて微笑むイオリにニナは目を見開いた。
精霊もイオリに興味があるのか、鼻歌混じりに近づいては顔を覗き込んで微笑んでいる。
「精霊さんは何て?」
イオリに問い掛けられたニナはニッコリとした。
「今夜は見守っていてあげるから、安心して眠りに付きなさいって。」
「有難いです。
宜しくお願いします。」
クルッと振り返り料理に戻るイオリにヒューゴは苦笑した。
普通、精霊が目の前にいると聞けば慌てたり、興奮したり、逆に穿った考えを持つものだが、実際に精霊の姿が見えるニナと同じくらいイオリは精霊との付き合い方が上手い。
精霊がしたい事を尊重し、怒れる精霊がいれば宥め、悲しむ精霊がいれば寄り添い、楽しむ精霊がいれば一緒に笑う。
それは神の愛し子としてというよりかは、イオリの本質によるものが大きいのだろう。
ただいるだけで、人を和ますイオリは精霊にすら好かれるのかもしれない。
「今日は何作るの?」
料理の準備を始めたイオリにスコルが近づいていく。
「ガッツリとお肉を焼くよ。
冒険者ギルドで解体してもらったから良質なお肉が沢山あるんだ。
それに、イルツクの街で野菜も手に入れたからね。
今日は旅の再開に豪勢にいくよ。」
お肉や豪勢という言葉を聞いた子供達は大喜びだ。
「「「「わーい!!」」」」
焚き火に焚べていた炭の様子を覗くイオリに真っ白な毛糸玉のゼンがトコトコと着いていって一緒になって見つめ始めた。
肉と聞いたスコルは米を炊くと意気込んでいるし、パティはナギとニナを連れて寝る時の為のテントの中の準備に向かった。
それぞれの働きをニコニコと見つめていたヒューゴの腰をグィっと押す者がいた。
「おっ。アウラ戻ったのか?」
馬車を引っ張ってきたアウラが楽しい自由時間を過ごして戻ってきたようだ。
そんなアウラに「ほら、お前も働け。」
そう言われたようで、ヒューゴは苦笑しながら腕まくりを始めた。
「さて、精霊が見守ってくれているはいえ俺は俺でシールドを張るとしますかね。」
コクコクと頷くアウラを見てヒューゴは吹き出すのだった。
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