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旅路 〜ダグスクへ〜
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小さく賽の目切りされたリンゴがクツクツと音を立てて甘い匂いをさせている。
『甘い匂い。お花でも蜂蜜でもないのに変なの。』
小さな男の子が鍋の中をジッと見つめて呟いている。
「汁が跳ねると熱いから、もう少し離れようね。
甘いのは砂糖を使っているからだよ。
でも、砂糖だって植物から出来ているんだよ。」
イオリは斜め掛け鞄から白い野菜を取り出し男の子に差し出した。
男の子は手に取ると匂いを嗅いだり触ったりと忙しくすると目を輝かせた。
『これ知ってる!
これから甘いの出来るの?』
「不思議だよね?
そう。そのビートっていう野菜から砂糖が出来るんだ。
で、リンゴにレモンっていう酸っぱい果実の汁と砂糖を加えるとジャムになるんだ。」
イオリが指差す鍋を男の子は再び押し黙ったまま凝視しだした。
その様子にイオリは微笑むと放置していたリンゴの皮をザルに並べて上から布を掛けた。
『それは何してるの?』
さっきまでお鍋に夢中だったはずの男の子が今度はザルのリンゴの皮が気になったのか駆け寄ってきた。
「これはリンゴの皮だよ。
このまま食べても良いんだけど、アップルティーに使おうと思って使う時まで干すんだ。」
『あっぷるてぃー?』
どうやら好奇心旺盛な男の子のようだ。
「紅茶っていう飲み物があるんだ。
それだけで十分美味しいんだけど、果物を入れたりハーブを入れたりすると一味違った香りが楽しめるんだよ。
それはリンゴの皮でも同じなんだよ。
干して乾かしておけば日持ちもするしね。」
『捨てないの?』
「えー。
もったいないじゃないか。
せっかく自然の恵から頂いたのだもの。
俺としては最後まで大切に美味しく頂きたいね。」
鍋の様子を見に行く自分の背を男の子がニッコリとした顔で見つめていたなどイオリは気づかなかった。
「リンゴのジャムも良い感じだね。
後は冷やしておこう。
今のうちにダッチオーブンを予熱で温めてドライフルーツとナッツのクッキーを作ろう。
一緒に作る?」
そう振り返ったイオリであったが、そこに男の子の姿はなかった。
「あれ?」
キョロキョロと辺りを見回しても、その姿がは何処にもいない。
キャキャキャ
子供の笑い声が聞こえたと思えば、目の前の川がパシャッと水飛沫を上げた。
ご機嫌にパシャパシャと音を立てる川にイオリは驚きながらも口元を緩めた。
「ちょっと意地悪な水の精霊ね・・・。
随分と好奇心旺盛な子だったな。」
楠の木の精霊が言っていた水の精霊だと確信したイオリはクスクスと笑った。
水の精霊は単なる意地悪という訳じゃないのだろう。
人間が森の植物や生き物を傷つける存在であるのかどうか、警戒しているのだ。
どうして力を使ってまで姿を見せたのか分からないが、どうやらイオリは水の精霊に認められたようだ。
「さてと。」
客人が帰るとイオリは月夜の下クッキー作りの作業を続けるのだった。
※※※※※ ※※※※※
書籍化第4巻宜しくお願いします!
コミカライズも第2巻が書籍化されました!是非、ご覧下さい。
『甘い匂い。お花でも蜂蜜でもないのに変なの。』
小さな男の子が鍋の中をジッと見つめて呟いている。
「汁が跳ねると熱いから、もう少し離れようね。
甘いのは砂糖を使っているからだよ。
でも、砂糖だって植物から出来ているんだよ。」
イオリは斜め掛け鞄から白い野菜を取り出し男の子に差し出した。
男の子は手に取ると匂いを嗅いだり触ったりと忙しくすると目を輝かせた。
『これ知ってる!
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そう。そのビートっていう野菜から砂糖が出来るんだ。
で、リンゴにレモンっていう酸っぱい果実の汁と砂糖を加えるとジャムになるんだ。」
イオリが指差す鍋を男の子は再び押し黙ったまま凝視しだした。
その様子にイオリは微笑むと放置していたリンゴの皮をザルに並べて上から布を掛けた。
『それは何してるの?』
さっきまでお鍋に夢中だったはずの男の子が今度はザルのリンゴの皮が気になったのか駆け寄ってきた。
「これはリンゴの皮だよ。
このまま食べても良いんだけど、アップルティーに使おうと思って使う時まで干すんだ。」
『あっぷるてぃー?』
どうやら好奇心旺盛な男の子のようだ。
「紅茶っていう飲み物があるんだ。
それだけで十分美味しいんだけど、果物を入れたりハーブを入れたりすると一味違った香りが楽しめるんだよ。
それはリンゴの皮でも同じなんだよ。
干して乾かしておけば日持ちもするしね。」
『捨てないの?』
「えー。
もったいないじゃないか。
せっかく自然の恵から頂いたのだもの。
俺としては最後まで大切に美味しく頂きたいね。」
鍋の様子を見に行く自分の背を男の子がニッコリとした顔で見つめていたなどイオリは気づかなかった。
「リンゴのジャムも良い感じだね。
後は冷やしておこう。
今のうちにダッチオーブンを予熱で温めてドライフルーツとナッツのクッキーを作ろう。
一緒に作る?」
そう振り返ったイオリであったが、そこに男の子の姿はなかった。
「あれ?」
キョロキョロと辺りを見回しても、その姿がは何処にもいない。
キャキャキャ
子供の笑い声が聞こえたと思えば、目の前の川がパシャッと水飛沫を上げた。
ご機嫌にパシャパシャと音を立てる川にイオリは驚きながらも口元を緩めた。
「ちょっと意地悪な水の精霊ね・・・。
随分と好奇心旺盛な子だったな。」
楠の木の精霊が言っていた水の精霊だと確信したイオリはクスクスと笑った。
水の精霊は単なる意地悪という訳じゃないのだろう。
人間が森の植物や生き物を傷つける存在であるのかどうか、警戒しているのだ。
どうして力を使ってまで姿を見せたのか分からないが、どうやらイオリは水の精霊に認められたようだ。
「さてと。」
客人が帰るとイオリは月夜の下クッキー作りの作業を続けるのだった。
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