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ダグスク 〜街歩き〜
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カイとアクセルとの再会を喜び、グラトニー商会を後にしたイオリ達は可愛らしい小さな食堂にやって来ていた。
昼食を取るには少し遅い時間、お店の客も少し減り落ち着いた頃のようだ。
「は~い。
魚介たっぷりのスープにシュリンプロールよ。」
小柄な女性がテーブルに乗せた料理はどれも美味しそうだった。
店の名前は“珊瑚の小箱”。
ダグスクに来たら絶対に外せないお店は冒険者ギルドのサブマスターであるブルックの妻であるビルデが営んでいた。
料理上手のビルデは小柄ながら1人で切り盛りするタフさを持ち、明るい性格から街の住人達からの信頼も厚い。
夫であるサブマス・ブルックはベタ惚れで、冒険者達に何かと“珊瑚の小箱”を宣伝してはギルマスのソフィアンヌと妻のビルデに怒られていた。
そんなビルデの店で珍しく手伝っている若い男がいた。
「どんな事になったらオンリールの若領主と一緒に街を周る事になんのさ。」
「オーウェンさんに紹介されて仲良くなったんですよ。ロジャーさん。」
ダグスクの街が誇るSランク冒険者の1人であるロジャーはブルックとビルデの子供だ。
つまり“珊瑚の小箱”は彼にとって実家であり冒険者としての仕事がない時は手伝う事もあるのだそうだ。
今も洗った皿を拭いているロジャーは冒険者の戦闘服姿ではなくサラッとした普段着でカウンターの向こう側にいた。
「このシュリンプロール美味しい。
パティ、大好き!」
小麦粉を薄く焼き海老や野菜を挟んだロールはビルデの店でも人気だった。
かけられている卵を使ったソースはクリーミーでイオリも真似するぐらい美味しい。
「有難う。
足りなかったら新しく作るからいっぱい食べなさい。
ほら、伯爵様も遠慮しないで。」
パティの食欲に唖然としていたクロワ・オンリールの皿にビルデがシュリンプロールを乗せやる。
幼いとはいえクロワは貴族だ。
こんなにざっくばらんな食事の席は初めてなのかもしれない。
パティに負けじとニナがシュリンンプロールを頬張り口元にソースをつけていた。
それをヒューゴが手慣れたように拭い、スープに手を付けていないパティにスプーンを渡す。
スープに入っていた殻付きの貝の身を綺麗に剥がしたナギは満足そうに微笑み、スコルは既にスープのおかわりを要求している。
「凄いや。」
クロワが騒々しい食事風景に気後れしているかと心配になっていたイオリであったが、笑顔が漏れている少年伯爵に安堵して微笑む。
「うちの母さんの料理は美味いだろう?
街でも1番の腕なんだ。
伯爵様も気兼ねなく食っていけよ。」
貴族相手に全くもって敬意を感じないロジャーであったが、母の料理を美味しそうに食べる少年には普段の何処か人を小馬鹿にしたような笑い方ではなく優しい顔を向けるのだった。
※※※※※ ※※※※※
書籍化第4巻宜しくお願いします!
コミカライズも是非ご覧下さい。
昼食を取るには少し遅い時間、お店の客も少し減り落ち着いた頃のようだ。
「は~い。
魚介たっぷりのスープにシュリンプロールよ。」
小柄な女性がテーブルに乗せた料理はどれも美味しそうだった。
店の名前は“珊瑚の小箱”。
ダグスクに来たら絶対に外せないお店は冒険者ギルドのサブマスターであるブルックの妻であるビルデが営んでいた。
料理上手のビルデは小柄ながら1人で切り盛りするタフさを持ち、明るい性格から街の住人達からの信頼も厚い。
夫であるサブマス・ブルックはベタ惚れで、冒険者達に何かと“珊瑚の小箱”を宣伝してはギルマスのソフィアンヌと妻のビルデに怒られていた。
そんなビルデの店で珍しく手伝っている若い男がいた。
「どんな事になったらオンリールの若領主と一緒に街を周る事になんのさ。」
「オーウェンさんに紹介されて仲良くなったんですよ。ロジャーさん。」
ダグスクの街が誇るSランク冒険者の1人であるロジャーはブルックとビルデの子供だ。
つまり“珊瑚の小箱”は彼にとって実家であり冒険者としての仕事がない時は手伝う事もあるのだそうだ。
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「このシュリンプロール美味しい。
パティ、大好き!」
小麦粉を薄く焼き海老や野菜を挟んだロールはビルデの店でも人気だった。
かけられている卵を使ったソースはクリーミーでイオリも真似するぐらい美味しい。
「有難う。
足りなかったら新しく作るからいっぱい食べなさい。
ほら、伯爵様も遠慮しないで。」
パティの食欲に唖然としていたクロワ・オンリールの皿にビルデがシュリンプロールを乗せやる。
幼いとはいえクロワは貴族だ。
こんなにざっくばらんな食事の席は初めてなのかもしれない。
パティに負けじとニナがシュリンンプロールを頬張り口元にソースをつけていた。
それをヒューゴが手慣れたように拭い、スープに手を付けていないパティにスプーンを渡す。
スープに入っていた殻付きの貝の身を綺麗に剥がしたナギは満足そうに微笑み、スコルは既にスープのおかわりを要求している。
「凄いや。」
クロワが騒々しい食事風景に気後れしているかと心配になっていたイオリであったが、笑顔が漏れている少年伯爵に安堵して微笑む。
「うちの母さんの料理は美味いだろう?
街でも1番の腕なんだ。
伯爵様も気兼ねなく食っていけよ。」
貴族相手に全くもって敬意を感じないロジャーであったが、母の料理を美味しそうに食べる少年には普段の何処か人を小馬鹿にしたような笑い方ではなく優しい顔を向けるのだった。
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