続々・拾ったものは大切に大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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ダグスク 〜入り江の端〜

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「そうかい。坊ちゃんはオンリールの街の子かい。」

 エナはイオリ達に混ざって一緒に来たクロワ・オンリールに微笑む。

「・・・っ。婆ちゃん!
 オンリールの子じゃなくて、領主様だよ!」

 その辺を走り回っている子供と同列に扱うエナに孫のディズは慌てた。

「バカ言うんじゃないよ。
 子供は子供。
 大人が守ってやらなきゃいけない大切な存在なんだ。
 私くらい年取るとね、偉かろうと皆んな一緒なんだよ。」

 エナはペチンとディスのオデコを叩くとクロワを見やった。

「だから、ここでは遠慮はいらないよ。
 好きにしなさい。」

 エナの言葉を噛み砕いて理解しようとするクロワがイオリを見上げた。

 「いいの?」まるでそう言っているようで、イオリはクスクスと笑った。

「はい。好きにして良いんですよ。」

 イオリは子供に対するようにクロワの頭を撫でた。

「そのうち、嫌と言うほど歳を取るんだ。
 子供ってのを出来るのは今の間だけだよ。
 人生は自分達が思っている以上に長いもんさ。」

 歳を重ねてきたエナの言葉は力強い。
 クロワはハニカムように頬を染めて頷いた。

「はい。」

「良い子じゃないか。
 ほれ、イカの干物を炙ったのをお食べ。
 よく噛むんだよ。」

「熱っ!ふっふっふ。」

 クロワは息を吹きかけて手に乗せられたイカの干物を口に入れた。

 歯応えがあり、すぐに飲み込む事は出来ないがモグモグしていると味わい深さが口の中で広がってくる。

「おいひぃ!」

 どうやら気に入ったのか、顔を輝かせている。

「おっ。いける口だな。
 これは大人になったら酒飲みになるぞ。」

「違いない。」

 ディスがニコニコすると、ヒューゴが楽しそうに笑う。

「クロワ様。
 イカにはマヨネーズだよ。
 イオリ持ってる?
 ないならオレ作る!!
 エナ婆ちゃん。台所貸して!」

「あー。マヨネーズ欲しい。
 パティも手伝う。
 クロワ様もマヨネーズ一緒に作ろうよ。」

 双子が立ち上がると、マヨネーズとやらが何だが分からないがクロワは釣られたように頷いた。

「うん。」

 それを見ていたナギとニナがニコニコと腕まくりして立ち上がる。

「イカの干物を気に入ったなら、次はカツオ節じゃない?」

「最高!
 お米も炊いちゃう?」

 2人までもエナの家に入って行くのを見ていたディスが慌てて追いかける。
 
「ぉい。まよねーずってなんだよ。
 そのマヨネーズっての俺にも教えてくれ。」

 その様子にエナは可笑しそうに体を上下に揺すった。

「本当におかしな子達だよ。
 時々顔を見せてはイオリの作ったお菓子だか料理を持ってきてくれるんだ。
 ナギが瞬間移動っていうのを使って来るって聞いてたまげたものさ。」

「そんな事していたなんて、俺は最近知りました。
 あの子達なりに気を遣ってくれていたんだと思います。」

「そうだね。 
 そのおかげでイオリが元気だって知る事が出来た。
 有難い事さ。
 本当にもう体は良いんだね?」

 エナは労るように右目の眼帯を優しく触れた。

※※※※※ ※※※※※

書籍化第4巻宜しくお願いします!
コミカライズも是非ご覧下さい。




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