続々・拾ったものは大切に大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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ダグスク 〜出発までの〜

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 夜もとっぷりと暮れ、満月が海を照らしている。

 イオリはダグスク侯爵家の別邸の寝室から、その美しい景色を見つめていた。

 ベッドでは小さなゼンがコロンと丸くなり、スピスピと寝息を立てている。

「テオさん。ダグスクの月夜は綺麗ですよ。」

 『・・・そうか。ポーレットの街も満月が見えている。』

 時間をおいて返事が来るとイオリは口元を緩めた。

「この間話したのも夜でしたね。」

 先日話したのはダグスクに着いた日の事。
 国王アルフレッドが齎した王族専用の客船によるダグスクの混乱を報告した時だ。

 王弟であるテオルドは呆れ、兄王に苦言を呈してくれた。
 その時には既に、ダグスク侯爵であるオーウェンからの抗議の手紙を読んだ宰相グレン・ターナーにより国王アルフレッドはペショペショとなっていたそうだ。

 『ヒューゴからは元気だと報告を受けている。
 戻った身体強化のスキルは問題ないか?』

「はい。
 快適です。」

 『そうか。何よりだ。
 守護者達がお前を呼びつけた理由が・・・旅の理由が見えてきたな。』

「ふふふ。
 そうですね。」

 イオリの旅にはいつも目的があった。
 闇雲に進む先に子供達を巻き込む事は出来ない。
 いや、イオリが行くと言えば何がなんでもついてきそうではあるが、目的があった方がずっと楽しい。
 イオリはそう思っていた。

 『それで、今日はどうした?
 普段、不精なイオリから、こんなに頻繁に連絡してくるとは何かあったか?』

 テオルドの言葉にイオリは苦笑したが、コクンと頷いた。

「はい。
 ダグスクの街で革命軍という言葉を聞きました。」

 『・・・そうか。
 やはり、ダグスクは他国からの情報も早いからな。』

 イオリはダグスクの街で会った犬の獣人のトッツの話をテオルドに聞かせた。

 トッツの家族が人族の犠牲になった事。
 幼い頃から奴隷として生きていた事。
 突如、奴隷から解放されダグスクに来た事。
 今は、エナ一家の工場で働き、恋人も出来て幸せそうだった事。
 そして、そんなトッツに革命軍と名乗る者が接触してきている事。

 全てを聞き終えた指輪の通信機の向こう側から、テオルドの溜息が聞こえてきた。

 『この手の話を聞くたびに無力感に襲われる。』

「同感です。」

 イオリはポーレット公爵家の執務室で眉間に皺を寄せているであろうテオルドを想像が出来た。

 『そのトッツという者を解放したのは、確かにリルラやラック達だろう。
 特別、その件に関して報告を受けていないが間違いない。
 それに、リルラ達は違法に奴隷となった同胞達の解放を目的としている。
 だから、同じ目的の革命軍とやらと鉢合わせる事もあるそうだ。』

 リルラ達を想い、テオルドの情報にイオリは顔を顰めるのだっった。

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