続々・拾ったものは大切に大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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王都へ 〜ポーレット領〜

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「おぉぉい。」

 一団の先頭にいるはずの騎士団長アイザックが馬で駆け寄ってくる。

 地面にめり込むバッソ3匹を前に驚いた顔をするアイザックにイオリはニッコリと微笑んだ。

 豪華な馬車からは様子を確認する為にヴァルトとニコライが従者を連れて出てきた。

「もう、大丈夫なのか?」

 問い掛けるニコライにイオリは頷いた。

「はい。
 気絶しちゃったんで問題ないです。
 どうします?
 捕獲しますか?」

 イオリの言葉にアイザックは否と首を横に振った。

「命を落としていたらそのままには出来ないが、気絶してるだけなのだろう?
 時間が経てば勝手に魔の森に帰ってくれるのではないか?

「その通りだと思いますよ。
 街道のいつもと違う様子に神経が過敏になっていたのでしょう。
 俺達が姿を消せば興味も失せます。」

「ならば、我らはこのまま早々に進む事にする。
 ・・・で、お前は何をしたんだ?」

 純粋に疑問を口にするアイザックに倣ってニコライとヴァルトも頷いている。

「鳥って、キラキラ光る物に意識がいくんです。
 だから、鏡で太陽の光を反射させてキラキラを見せたんですよね。
 それにバッソは基本的に集団行動を取る臆病な魔獣です。
 1羽が動くと自然と他の2羽まで釣られて同じ行動をするんですよ。
 バッソの敵意を俺に向けて攻撃を仕掛けてきた時にコレです。」

 イオリは斜め掛け鞄から小袋を取り出した。

「ミント系のハーブを中心に鳥が苦手な匂いを集めた小袋です。
 通常の鳥の中には匂いに鈍感な種類もいるそうですが、バッソは嗅覚が熊の嗅覚の2倍と言われています。
 だから、少しの匂いで体のバランスをコントロールしている中枢器官が狂っちゃうんですよ。
 で、地面に激突して気絶で終わりです。」

 イオリの澱みない説明に3人は関心したようだった。

「即時、出発する!」

 アイザックの指示に再び騎士団が動き出した。

「お疲れ。」

 イオリの仕事に信頼をおくヒューゴや子供達は少し前の騒ぎなどお構いなしでのんびりと待っていた。

「イオリ、このチーズケーキ美味しいの!」

 興奮気味のニナの様子を見れば、気に入ったのが分かる。

「気に入ってくれて良かった。
 また作るね。」

 一行は王都へ向けて前進する。

 馬車の中で2人の息子から報告を聞いたポーレット公爵テオルドは静かに窓の外を見つめた。

「知識と、その知識を利用する能力が武力を凌駕するか・・・。」

 テオルドの視線の先には笑う子供達を優しく見守るイオリの姿があった。

「今までもイオリの知識には驚かされる場面が多くありましたが、絶対神の加護を失い冒険者としての戦い方が一段と変化をしせている様です。
 今まで能力に頼ってた部分を知識と知恵で補い、一味違った冒険者へと成長しているのでしょう。」

 ニコライの考察にテオルドも頷いた。

「願わくば、イオリの明るい未来を絶対神に御導き頂きたいものだ。」

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