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王都 〜再会〜
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「これ、一体何だと思う?」
グラトニー商会王都本店の会頭ロスが見せてきた物体は持ち手が丸い小ぶりのドアノブの様に見えた。
握るであろう部分には丸カンが取り付けられていて、チェーンでぶら下げる事も出来る様だ。
反対側は何か複雑な細工が施されていている。
「ドアノブでしょうか?
この細工の部分を嵌めての扉を開ける事が出来るのかな?」
手に取りジックリと観察するイオリにロスも神妙な顔で頷いた。
「そうだよな・・・。
私もそう思う。
勿論、騎士団も同じ見解で、このドアノブが取り付けられる部屋は何処にあるのか?と捕らえていた者達の尋問を繰り返していたそうだ。
その最中に口封じの事件が起こったんだ。
吐かせる前に黒幕の手によって真相は闇に屠られてしまった。
残念でならないよ。」
ロスは顔色を変える事なかったが、声色に悔しさが滲んでいる事にイオリは気付いた。
「あの、会頭はコレを何処から?」
ヒューゴが問えば、ロスは口元を微かに緩めた。
「騎士団からだ。
今回、回収されたのは9つだと聞いた。
そのうちの1つは冒険者ギルドに、もう1つは商人ギルドに、そして1つはグラトニーが預かっている。
調査に役立たせる為なのだが、なんの進展もなくて申し訳ない気分だ。」
1つの商会が騎士団から証拠品の1つを預かっている時点で異常事態である。
しかし、そうも言ってられない事情が今回の事件の複雑さを物語っていた。
「これさ。
細工した職人から調べる事って出来ないの?
こんな変なの作る人って限られてるでしょう?」
賢さを見せたスコルにロスはニッコリした。
「スコルと同じ考えに至った商人ギルドが、関わった可能性のある数人の職人に目ぼしをつけて調査する事にした。
すると、その内の1人の職人が姿を眩ましたそうだ。
商人ギルドが騎士団に通報し、職人の工房を調べれば、慌てて出て行った形跡があり、例のドアノブに使われていた素材と失敗したであろうドアノブの残骸が残っていたらしい。
おかしいのが、調査に入る前日には、件の職人は商人ギルドから得ていた正規の依頼の品をしっかりと納品していた事だ。
これは、どうした事かな?」
最後には目を窄めて口元で手を組んだロスは一同を見渡した。
考えが至ったイオリは大きな溜息を吐いた。
そのイオリの変わりに推論を口にしたのはナギだった。
「1つの可能性は、犯人に仕立て上げられた職人が黒幕に連れ去られたかもしれないって事。
でも、これならロスさんが態々問題にしないよね。
それなら、もう1つの可能性・・・。
商人ギルドの中に黒幕に通じる卑怯な奴がいるんだ。」
珍しく口汚い言葉を口にしたナギに、隣にいたニナが不安そうな顔をした。
イオリは、小さく息を吐き落ち着こうとしているナギの頭を優しく撫でた。
「魔の森から離れた安全な場所で悪い事を考えていた人達には、自分達がした事で魔の森が悲しんだり、それによってポーレットの街が危険に晒されていた事なんて想像も付かないんだよ。」
イオリの呟きにロスはハッとした。
事件の場は王都ではなくポーレットで、彼等の生活圏である。
王都の情勢に気を取られがちな自分よりも遥かに今回の事に憤りを感じているのだ。
黒幕は世界屈指の狩人に狙われている事に気がついているのだろうか。
ロスは思わず、何に祈ったら良いのか分からずに目を瞑った。
グラトニー商会王都本店の会頭ロスが見せてきた物体は持ち手が丸い小ぶりのドアノブの様に見えた。
握るであろう部分には丸カンが取り付けられていて、チェーンでぶら下げる事も出来る様だ。
反対側は何か複雑な細工が施されていている。
「ドアノブでしょうか?
この細工の部分を嵌めての扉を開ける事が出来るのかな?」
手に取りジックリと観察するイオリにロスも神妙な顔で頷いた。
「そうだよな・・・。
私もそう思う。
勿論、騎士団も同じ見解で、このドアノブが取り付けられる部屋は何処にあるのか?と捕らえていた者達の尋問を繰り返していたそうだ。
その最中に口封じの事件が起こったんだ。
吐かせる前に黒幕の手によって真相は闇に屠られてしまった。
残念でならないよ。」
ロスは顔色を変える事なかったが、声色に悔しさが滲んでいる事にイオリは気付いた。
「あの、会頭はコレを何処から?」
ヒューゴが問えば、ロスは口元を微かに緩めた。
「騎士団からだ。
今回、回収されたのは9つだと聞いた。
そのうちの1つは冒険者ギルドに、もう1つは商人ギルドに、そして1つはグラトニーが預かっている。
調査に役立たせる為なのだが、なんの進展もなくて申し訳ない気分だ。」
1つの商会が騎士団から証拠品の1つを預かっている時点で異常事態である。
しかし、そうも言ってられない事情が今回の事件の複雑さを物語っていた。
「これさ。
細工した職人から調べる事って出来ないの?
こんな変なの作る人って限られてるでしょう?」
賢さを見せたスコルにロスはニッコリした。
「スコルと同じ考えに至った商人ギルドが、関わった可能性のある数人の職人に目ぼしをつけて調査する事にした。
すると、その内の1人の職人が姿を眩ましたそうだ。
商人ギルドが騎士団に通報し、職人の工房を調べれば、慌てて出て行った形跡があり、例のドアノブに使われていた素材と失敗したであろうドアノブの残骸が残っていたらしい。
おかしいのが、調査に入る前日には、件の職人は商人ギルドから得ていた正規の依頼の品をしっかりと納品していた事だ。
これは、どうした事かな?」
最後には目を窄めて口元で手を組んだロスは一同を見渡した。
考えが至ったイオリは大きな溜息を吐いた。
そのイオリの変わりに推論を口にしたのはナギだった。
「1つの可能性は、犯人に仕立て上げられた職人が黒幕に連れ去られたかもしれないって事。
でも、これならロスさんが態々問題にしないよね。
それなら、もう1つの可能性・・・。
商人ギルドの中に黒幕に通じる卑怯な奴がいるんだ。」
珍しく口汚い言葉を口にしたナギに、隣にいたニナが不安そうな顔をした。
イオリは、小さく息を吐き落ち着こうとしているナギの頭を優しく撫でた。
「魔の森から離れた安全な場所で悪い事を考えていた人達には、自分達がした事で魔の森が悲しんだり、それによってポーレットの街が危険に晒されていた事なんて想像も付かないんだよ。」
イオリの呟きにロスはハッとした。
事件の場は王都ではなくポーレットで、彼等の生活圏である。
王都の情勢に気を取られがちな自分よりも遥かに今回の事に憤りを感じているのだ。
黒幕は世界屈指の狩人に狙われている事に気がついているのだろうか。
ロスは思わず、何に祈ったら良いのか分からずに目を瞑った。
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