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王都 〜再会・王城〜
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イオリ達が紅茶に心を癒されている時、王城から離れる馬車の中で1人の男が唇を噛み締めていた。
「あれがポーレットの英雄・黒狼だと・・・。
まだまだ、若造ではないかっ!」
先程の王城の庭園での出来事を思い出しシェイムレス伯爵は顔を顰めた。
黒狼と言えば、先の大災害の折に凄まじい活躍をしたと聞いている。
その細かい話は公表されていないが、確実に国の危機を救ったとされる英雄に国王アルフレッドも信頼を置いていると有名な話だ。
巷では“黒の英雄譚”なる本が話題になっており、黒狼の人気は絶大だと使用人達が話していた。
シェイムレス伯爵にとっては唯の冒険者の1人に過ぎないが、国王や王弟であるポーレット公爵の庇護がある者を敵に回すのは都合が悪い事くらいは理解していた。
「それにしても、あの女・・・。」
シェイムレス伯爵は、国王やポーレット公爵にぶつけられない怒りを1人の女性に向けていた。
アナスタシア・ギロック女伯爵
同じ北部に領地を持つギロック伯爵は女性でありながら、領地運営に定評があり貴族社会の中でも顔が広い。
田舎と囁かれる北部において堅実に所領を守り、巨大なダンジョンを所有する事から冒険者達も集まる。
旅路でも一緒に行動してきたが、堅物といった印象を受けた。
娘を側妃にと望むシェイムレス伯爵を悉く否定し、しまいには途中から王都への同行を拒否してきた。
「ポーレット公爵や黒狼と知り合いであるにも関わらず、私には何1つ教えずに恥をかかすとは、何て底意地の悪い女だ。」
王城での態度で恥をかいたのは自分の所為にも関わらず、今のシェイムレス伯爵には、その考えまで至る事がないようだ。
「何よりも、私を差し置いて国王と謁見しただと?
王都へ来るまでの間に何度も謁見の要請をしていた私は今だに御目通りが叶わないというのに・・・。
これも、あの女の仕業なのか?
私を田舎者と侮っての?
・・・いや、落ち着け。
あの女も所詮は北部の女だ。
国王はお優しい方だ。
謁見が叶わないのは何か事情があるからに違いない。」
結婚間際の王太子に娘を勧めようとしてくる相手を国王が避けているなど常識的考えに至らないシェイムレス伯爵は、自分の心の平穏を保つ為に都合良い思考で終わらせた。
王都のタウンハウス前に停まった馬車から出ると、シェイムレス伯爵は開かれた扉から楽しそうな笑い声が聞こえてくる事に気が付いた。
「今、戻った。
何かあったのか?」
迎え出た執事に声を掛ければ、声のする方に歩いて行く。
「奥様とお嬢様が商会をお呼びになり、ドレスを新調されています。」
「ん?
ドレスなら領地で用意してきただろう?
それに、今からでは夜会や茶会に間に合わないのではないか?」
「王都の流行り物に御興味がおありのようです。」
「そうか。
1着や2着なら良いか。
好きにさせなさい。
これからドレスも必要になるだろう。」
実際には奥方や娘は各々で10着20着の注文をしているのだが、執事は主人に伝える事ができずに俯いた。
当のシェイムレス伯爵はというと、自分の美しいの笑顔を満足そうに見つめるのだった。
「あれがポーレットの英雄・黒狼だと・・・。
まだまだ、若造ではないかっ!」
先程の王城の庭園での出来事を思い出しシェイムレス伯爵は顔を顰めた。
黒狼と言えば、先の大災害の折に凄まじい活躍をしたと聞いている。
その細かい話は公表されていないが、確実に国の危機を救ったとされる英雄に国王アルフレッドも信頼を置いていると有名な話だ。
巷では“黒の英雄譚”なる本が話題になっており、黒狼の人気は絶大だと使用人達が話していた。
シェイムレス伯爵にとっては唯の冒険者の1人に過ぎないが、国王や王弟であるポーレット公爵の庇護がある者を敵に回すのは都合が悪い事くらいは理解していた。
「それにしても、あの女・・・。」
シェイムレス伯爵は、国王やポーレット公爵にぶつけられない怒りを1人の女性に向けていた。
アナスタシア・ギロック女伯爵
同じ北部に領地を持つギロック伯爵は女性でありながら、領地運営に定評があり貴族社会の中でも顔が広い。
田舎と囁かれる北部において堅実に所領を守り、巨大なダンジョンを所有する事から冒険者達も集まる。
旅路でも一緒に行動してきたが、堅物といった印象を受けた。
娘を側妃にと望むシェイムレス伯爵を悉く否定し、しまいには途中から王都への同行を拒否してきた。
「ポーレット公爵や黒狼と知り合いであるにも関わらず、私には何1つ教えずに恥をかかすとは、何て底意地の悪い女だ。」
王城での態度で恥をかいたのは自分の所為にも関わらず、今のシェイムレス伯爵には、その考えまで至る事がないようだ。
「何よりも、私を差し置いて国王と謁見しただと?
王都へ来るまでの間に何度も謁見の要請をしていた私は今だに御目通りが叶わないというのに・・・。
これも、あの女の仕業なのか?
私を田舎者と侮っての?
・・・いや、落ち着け。
あの女も所詮は北部の女だ。
国王はお優しい方だ。
謁見が叶わないのは何か事情があるからに違いない。」
結婚間際の王太子に娘を勧めようとしてくる相手を国王が避けているなど常識的考えに至らないシェイムレス伯爵は、自分の心の平穏を保つ為に都合良い思考で終わらせた。
王都のタウンハウス前に停まった馬車から出ると、シェイムレス伯爵は開かれた扉から楽しそうな笑い声が聞こえてくる事に気が付いた。
「今、戻った。
何かあったのか?」
迎え出た執事に声を掛ければ、声のする方に歩いて行く。
「奥様とお嬢様が商会をお呼びになり、ドレスを新調されています。」
「ん?
ドレスなら領地で用意してきただろう?
それに、今からでは夜会や茶会に間に合わないのではないか?」
「王都の流行り物に御興味がおありのようです。」
「そうか。
1着や2着なら良いか。
好きにさせなさい。
これからドレスも必要になるだろう。」
実際には奥方や娘は各々で10着20着の注文をしているのだが、執事は主人に伝える事ができずに俯いた。
当のシェイムレス伯爵はというと、自分の美しいの笑顔を満足そうに見つめるのだった。
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