続々・拾ったものは大切に大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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王都 〜再会・王城〜

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「酷いなぁ。
 君達は私がそんな意地の悪い人間に見えるのかい?」

 楽しそうに笑う王太子ギルバートにイオリ達は胡乱な目を向けていた。

 王妃シシリアとの茶会を終え、離宮シグマにやってきたイオリ達は執事ハミルトンとの再会に喜んだのも束の間、王子達の訪問を受けていた。

「寧ろ、そうにしか見えないんじゃないですか?」

 弟であるディービットが可笑しそうに笑うと、ギルバートも再び軽やかに笑った。

「私は決して自ら人を貶める人間ではないよ。
 でも、世間には道理を説いても聞こうとしない迷惑な輩というのがいるんだ。
 流石に私だって、わざわざ火に飛び込む虫の気持ちなんて分からないよ。
 そんな人間に慈悲を与える必要ってあるのかい?」

 まぁ、そういう事なのだ。

 確かにギルバートは嫌いな人間だから、都合の悪い人間だからという理由で人を排除したりしない。

 寧ろ、自分に苦言を呈する老獪達との議論は大好きな方だ。
 自分にはない経験値を持つ彼等との会話は有益で、時には言い負かす事も手を抜かない。
 
 そんなギルバートが本気で敵と見定めれば、相手の末路など可哀想なものだ。

「皆が怖がっているのは、目的の為に仲間すら利用するお前の底知れない図々しさだと思うぞ。」

 学生以来の気の置けない友であり、王家領の代官を務めるトラスト・ブレインの言葉にギルバートは肩を竦めた。

「その方が賢い選択なら、私は迷いなく友に助力を願うだろうね。」

 それだよ。それが怖いんだよ。

 誰もが口にしたく、そして実際には口をつぐみ、天井を仰いだ。

「まぁ、ギルはそれでいいよ。
 で?現状、シェイムレス伯爵の娘の事は調べてあるんだろう?」

 ニコライがワインを片手に問い掛ければ、ギルバートは澄ました顔でワイングラスを傾けた。

「これは調べてあるな。」

 ヴァルトが恐々と頷き、イオリに意味深な顔をして見せた。
 イオリはクスッと笑うと、ポテトフライをパクリと食べた。

「基本的に兄上と同世代、その前後の御令嬢はアースガイルに限らず、他国に至るまで幼少期から調べられているんです。
 私は幼くしてココと婚約しましたが、それでも同世代の令嬢の情報は定期的に報告を受けていました。」

「妃候補や側室候補の為だな。
 その辺りは私達も同じだから理解するよ。」

 第二王子ディービットの説明にニコライだけじゃなくヴァルトも頷いた。

「我が父を含め、ここ数代の国王は側室を持っていません。
 結婚して早々に複数の男児に恵まれた事も確かですが、幸いな事に歴代の国王夫婦の仲が良かったんです。
 それでも、過去には側室を迎え入れた王はいたし、今も側室制度自体が廃止された訳ではない。
 だから必ずと言って、今回のように側室に関する面倒事が起こるそうですよ。」

 ディービットは兄に憐れみの目を向けた。

「側で見ていれば、兄上とオーブリーの仲の良さを理解出来るのでしょうが、滅多に王都へ出て来ない貴族の中には勘違いをする者が現れるのでしょう。
 最近では兄の周辺にオーブリーに似た女性がチラホラと姿を現すそうです。」

「ぅわ・・・。」

 思わず悲鳴を上げたイオリに当のギルバートもウンザリしたように頷いた。

 
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