57 / 473
ロンサンティエ帝国の明暗
56
しおりを挟む
《マズイ。これはマズイ。》
感情的な皇帝よりも、先に龍の言葉を理解した宰相は事の成り行きに発狂する思いだった。
白銀の龍が口にしたのはディミトリオ・ハクヤが皇帝陛下に取って変わるという単純な話ではない。
宰相ムク・フランの危機感は1人の男の発言によって証明されてしまう。
「白銀の龍殿。
少し、宜しいか?」
それはロンサンティエ帝国の北の地を与えられた弟の1人であるカーライル・ザッツ・ノルデンであった。
『なんだ、ロンサンティエの血筋の1人よ。』
カーライル・ザッツをロンサンティエの血筋と呼んだルーチェに宰相は顔面蒼白になり、逆にカーライル・ザッツは嬉しそうに前に出てきた。
「私はロンサンティに隣接する北の地・ノルデン小国を収めるカーライル・ザッツ。
白銀の龍様は私をロンサンティエの血筋の1人とお認め下された。
ならば、私にも龍の使者として選ばれる可能性があると言う事ですか?」
カーライル・ザッツをジッと見つめていたルーチェは首を横に振った。
『正確にはあっただ。
龍王と龍の姫巫女は今代の龍の使者にディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエを選んだ。
そして我々、龍達は彼を受け入れた。
そこに人の事情など関係ない。』
ルーチェの言葉に少々がっかりしたカーライル・ザッツであったが希望を込めた目で再び問うた。
「ならば、私の息子や娘には龍の使者になる資格があると言う事ですか?」
『確かにある。』
ルーチェの肯定に両手を上げて喜んだのはカーライル・ザッツを始めとした小国の君主と近隣諸国の要人達だった。
だが、ルーチェは釘を刺すのを忘れない。
『ディミトリオ・ハクヤを危険に晒そうと思うな。
我ら龍は、使者への敬意を忘れない。
次世代の者達も忘れるな。
荒ぶる海を超え、龍を始めとした魔獣や野獣達の中で生き残るは厳しい試練となる。
挑み、命絶たれようと龍達には関係のない事。
国を想い、憂し者達のみ龍の恩恵を得られるであろう。』
長年、龍の使者としての地位にふんぞり返っていたロンサンティエ帝国の絶対平和が崩れた瞬間だった。
龍の恩恵の前にロンサンティエ帝国に頭を垂れる事に苦渋の想いをしていた国々が嬉々に溢れる。
そんな中、1人怒りに震える者がいた。
「この醜い獣めが・・・。」
ロンサンティエ帝国皇帝ハイゴール・ウィリこそが、白銀の龍・ルーチェの言葉に納得が出来ない1人だった。
止める宰相や周囲の貴族を押し除けてルーチェ目掛けて走って来た。
「ロンサンティエは龍の力など要らぬっ!
我が皇帝であり、絶対なのだっ!!
獣風情が人の世に口を挟むな。」
言ってはいけない事を言った。
誰もが皇帝の失言に失望した瞬間だった。
静まり変える大広間にコロコロと鈴の音の笑い声が響いた。
「あぁ。可笑しい。
茶番とは、こんなに愚かしいものだったのか。」
醜く揉める大人達を前に、静かに佇んでいたはずの龍の姫巫女がベールを脱ぎ捨てた。
感情的な皇帝よりも、先に龍の言葉を理解した宰相は事の成り行きに発狂する思いだった。
白銀の龍が口にしたのはディミトリオ・ハクヤが皇帝陛下に取って変わるという単純な話ではない。
宰相ムク・フランの危機感は1人の男の発言によって証明されてしまう。
「白銀の龍殿。
少し、宜しいか?」
それはロンサンティエ帝国の北の地を与えられた弟の1人であるカーライル・ザッツ・ノルデンであった。
『なんだ、ロンサンティエの血筋の1人よ。』
カーライル・ザッツをロンサンティエの血筋と呼んだルーチェに宰相は顔面蒼白になり、逆にカーライル・ザッツは嬉しそうに前に出てきた。
「私はロンサンティに隣接する北の地・ノルデン小国を収めるカーライル・ザッツ。
白銀の龍様は私をロンサンティエの血筋の1人とお認め下された。
ならば、私にも龍の使者として選ばれる可能性があると言う事ですか?」
カーライル・ザッツをジッと見つめていたルーチェは首を横に振った。
『正確にはあっただ。
龍王と龍の姫巫女は今代の龍の使者にディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエを選んだ。
そして我々、龍達は彼を受け入れた。
そこに人の事情など関係ない。』
ルーチェの言葉に少々がっかりしたカーライル・ザッツであったが希望を込めた目で再び問うた。
「ならば、私の息子や娘には龍の使者になる資格があると言う事ですか?」
『確かにある。』
ルーチェの肯定に両手を上げて喜んだのはカーライル・ザッツを始めとした小国の君主と近隣諸国の要人達だった。
だが、ルーチェは釘を刺すのを忘れない。
『ディミトリオ・ハクヤを危険に晒そうと思うな。
我ら龍は、使者への敬意を忘れない。
次世代の者達も忘れるな。
荒ぶる海を超え、龍を始めとした魔獣や野獣達の中で生き残るは厳しい試練となる。
挑み、命絶たれようと龍達には関係のない事。
国を想い、憂し者達のみ龍の恩恵を得られるであろう。』
長年、龍の使者としての地位にふんぞり返っていたロンサンティエ帝国の絶対平和が崩れた瞬間だった。
龍の恩恵の前にロンサンティエ帝国に頭を垂れる事に苦渋の想いをしていた国々が嬉々に溢れる。
そんな中、1人怒りに震える者がいた。
「この醜い獣めが・・・。」
ロンサンティエ帝国皇帝ハイゴール・ウィリこそが、白銀の龍・ルーチェの言葉に納得が出来ない1人だった。
止める宰相や周囲の貴族を押し除けてルーチェ目掛けて走って来た。
「ロンサンティエは龍の力など要らぬっ!
我が皇帝であり、絶対なのだっ!!
獣風情が人の世に口を挟むな。」
言ってはいけない事を言った。
誰もが皇帝の失言に失望した瞬間だった。
静まり変える大広間にコロコロと鈴の音の笑い声が響いた。
「あぁ。可笑しい。
茶番とは、こんなに愚かしいものだったのか。」
醜く揉める大人達を前に、静かに佇んでいたはずの龍の姫巫女がベールを脱ぎ捨てた。
122
あなたにおすすめの小説
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる