溜息だって吐きたくなるわっ!〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

ぽん

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ロンサンティエ帝国の明暗

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 《マズイ。これはマズイ。》

 感情的な皇帝よりも、先に龍の言葉を理解した宰相は事の成り行きに発狂する思いだった。

 白銀の龍が口にしたのはディミトリオ・ハクヤが皇帝陛下に取って変わるという単純な話ではない。
 宰相ムク・フランの危機感は1人の男の発言によって証明されてしまう。

「白銀の龍殿。
 少し、宜しいか?」

 それはロンサンティエ帝国の北の地を与えられた弟の1人であるカーライル・ザッツ・ノルデンであった。

『なんだ、ロンサンティエの血筋の1人よ。』

 カーライル・ザッツをロンサンティエの血筋と呼んだルーチェに宰相は顔面蒼白になり、逆にカーライル・ザッツは嬉しそうに前に出てきた。

「私はロンサンティに隣接する北の地・ノルデン小国を収めるカーライル・ザッツ。
 白銀の龍様は私をロンサンティエの血筋の1人とお認め下された。
 ならば、私にも龍の使者として選ばれる可能性があると言う事ですか?」

 カーライル・ザッツをジッと見つめていたルーチェは首を横に振った。

『正確にはだ。
 龍王と龍の姫巫女は今代の龍の使者にディミトリオ・ハクヤ・ロンサンティエを選んだ。
 そして我々、龍達は彼を受け入れた。
 そこに人の事情など関係ない。』

 ルーチェの言葉に少々がっかりしたカーライル・ザッツであったが希望を込めた目で再び問うた。

「ならば、私の息子や娘には龍の使者になる資格があると言う事ですか?」

『確かにある。』

 ルーチェの肯定に両手を上げて喜んだのはカーライル・ザッツを始めとした小国の君主と近隣諸国の要人達だった。
 だが、ルーチェは釘を刺すのを忘れない。

『ディミトリオ・ハクヤを危険に晒そうと思うな。
 我ら龍は、使者への敬意を忘れない。
 次世代の者達も忘れるな。
 荒ぶる海を超え、龍を始めとした魔獣や野獣達の中で生き残るは厳しい試練となる。
 挑み、命絶たれようと龍達には関係のない事。
 国を想い、憂し者達のみ龍の恩恵を得られるであろう。』

 長年、龍の使者としての地位にふんぞり返っていたロンサンティエ帝国の絶対平和が崩れた瞬間だった。
 龍の恩恵の前にロンサンティエ帝国に頭を垂れる事に苦渋の想いをしていた国々が嬉々に溢れる。

 そんな中、1人怒りに震える者がいた。

「この醜い獣めが・・・。」

 ロンサンティエ帝国皇帝ハイゴール・ウィリこそが、白銀の龍・ルーチェの言葉に納得が出来ない1人だった。

 止める宰相や周囲の貴族を押し除けてルーチェ目掛けて走って来た。

「ロンサンティエは龍の力など要らぬっ!
 我が皇帝であり、絶対なのだっ!!
 獣風情が人の世に口を挟むな。」

 言ってはいけない事を言った。
 
 誰もが皇帝の失言に失望した瞬間だった。
 静まり変える大広間にコロコロと鈴の音の笑い声が響いた。

「あぁ。可笑しい。
 茶番とは、こんなに愚かしいものだったのか。」

 醜く揉める大人達を前に、静かに佇んでいたはずの龍の姫巫女がベールを脱ぎ捨てた。

 

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