【完結】地下牢同棲は、溺愛のはじまりでした〜ざまぁ後の優雅な幽閉ライフのつもりが、裏切り者が押しかけてきた〜

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中

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 一体、何がちょうどいいのか。さっぱり分からない。
 頭がクエスチョンマークで占拠されている間に、ナザトが呪文をつぶやけば、砂と化した壁が風によってどこかへ連れて行かれてしまった。

 魔法が使えることにツッコむべきか……とも思ったが、それよりも──。
 
「地下牢で同棲なんて、どう考えてもおかしいでしょ」

 こっちが重要だろう。
 そう思ったのだが、心底おかしいと言わんばかりに笑われた。

「俺、今のベル、好きだわ」
「…………そりゃどうも」
「そんだけ?」
「嘘くさいんで」
「へぇ。いいね」

 何がいいんだ……か…………。
 愉しげに細められた真っ黒な瞳を見た瞬間、背筋を冷たいものが駆け抜けた。

「いやー、わざと誘拐失敗しておいて良かったわ」
「はい?」
「成功してたら、今頃ベルの首と胴はバラバラだったもんな」

 確かに、予定通りヒロインちゃんの誘拐が成功していたら、私の命はなかったかもしれない。
 けれど、あれは別の形で失敗する予定だったのだ。

「ベルを死なせちゃうのは、惜しかったからさぁ」
「……ありがとうございます?」

 死なないように失敗をしてくれたのだとしたら、お礼を言うべき……だよね? ストーリーの帳尻合わせ、めちゃくちゃ大変だったけど。
 あのあとすぐにナザトが裏切ってきたのも、もしかしたら私が死刑にならないようにするためだったのかな……。 

「俺が助けたんだから、ベルの命は俺のものだよな?」
「…………はぁ!?」

 前言撤回、きっと別の理由だろう。
 ナザトが何を考えているのかさっぱり分からないから、理由は思いつかないけど。
 というか、こんなぶっ飛んだ男の考えてることなんか、理解したくもないし、考えるだけ無駄だ。
 敬語も、もういいや。敬意を払う必要もないだろう。
 
俺の・・だよな?」

 そう言ってくる、ナザトからの圧がすごい。
 息が苦しくって、空気が重たい。
 でも、頷きたくない。頷いたら、この悠々自適な幽閉ライフが終わる気がする。

「へぇ。頑張るねぇ。震えちゃって、かーわいい」

 また、真っ暗な闇が私を見ている。
 ハイライト、どこに置いてきたんだよ。目に光りを入れてくれ、頼むから。

「その頑張りに免じて、俺の・・じゃなくて、同棲で手を打ってあげよう。俺ってば、優しいなぁ」

 そう言うと、ナザトは小さな声で呪文を呟いた。
 次の瞬間──。

「うへぇ!!??」
「間抜けな声だな」
「いや、だって、何これ!?」

 くつくつと笑われるが、それどころじゃない。

 床にラグが引かれ、家具の配置は移動しているし、さっきまでなかったキッチンがある。
 その他にも、大きな本棚には本がぎっしりあるし、暖炉までできている。

「あそこの部屋、何?」
「寝室だな」

 そう言われて、ドアを開ければ、ダブルベットがドーンと鎮座していた。

「何で、ダブルベットなの?」
「一緒に寝るだろ? 恋人なんだから」
「いつ恋人になったの!? というか、地下牢ここって魔法は使えないはずだよね!?」
「俺の方が、この魔法封じより力が上だから問題ない」

 そう言って、しゃらりとブレスレットを揺らした。
 どう見ても、私の腕についているのと同じ、魔法を封じるためのブレスレットだ。
 これは、何人もの優秀な者が集まって、魔法をかけて作成したもの。
 一個人がどうこうできるものではない……はずなんだけど……。

「…………最強じゃん」
「彼氏が最強だと、嬉しいだろ?」
「いや、ここで生活するだけなら、魔法がなくても困らないし……」

 というか、彼氏でもないし。

「そう言うなって。一緒に生活してたら、俺の有用性が分かるはずだから」

 そう言われましても……。
 そもそも、一緒に生活したくない。

「ナザトだけでも、脱獄すればいいじゃん」
「好きな女を置いて、自分だけ逃げるわけないだろ」

 言ってることは、かっこいい。
 かっこいいけど、別に私のこと好きじゃないじゃん。口だけだって、面白がってるだけだって、知ってるんだから。

「私に拒否権は?」
「ない」

 ですよね。そんな気がしてましたよ。

「まぁまぁ、俺たちの仲じゃん」
「どんな仲よ」
「内緒。思い出して欲しいしな」

 思い出すも何も、ヒロインちゃんを陥れるために依頼しただけの関係でしょ。裏切られたけど。
 そもそも、こんなに印象的な人を忘れるとも思えないし。

「ほら、お茶でも淹れてやるから、のんびりしようぜ」
「いや、そもそも同居は……」
「同棲な。部屋を戻す気ないし、ベルは自力でここから出られないんだから、諦めな」

 確かに、ナザトがどうにかしてくれなければ、無理だ。
 それなら、せめて──。

「寝室は、別々にして」
「却下」
「何でよ!?」
「別にする意味が分からん」
「エロいこと、されたくない」
「何で?」
「好きじゃないから」

 あ、黙っちゃった。
 言い方、きつかったかな……。

「分かった。無理矢理は萎えるからな。ベルが俺を好きになるまで、エロいことはしない。それでいいだろ?」
「えー」

 エロいことしなくても、別室がいいんだけど。

「これ以上は、譲らないからな」

 ここが折れどころかな。
 すごい嫌だけど、仕方がない。
 グッバイ、私のぐ~たら一人暮らしよ……。

「絶対にエロいことしないでよ」
「ベルが俺のことを好きになるまではな」

 そう言うと、ナザトは契約の魔法をかけた。
 まさか、ここまでしてくれるとは思わず、凝視してしまう。

「これで、安心して眠れるだろ」

 頭を撫でられ、不快に思いそうなのに、なぜか懐かしい気分になった。
 すごく自分勝手なこの男が、ほんの少しだけ初恋の人に似て見えたのは、彼と名前が同じなのと、過剰なストレスを与えられたからだろう。

 
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