番なんて要らない

桜 晴樹

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プロローグ

警戒2

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嫌い。αは嫌い。運命の相手なんて嫌だ。
でも、あいつの匂いは凄く安心する優しくて甘い匂いがしたんだ。
抱きしめられる時の安心感。
それがΩのαに対する信頼と愛情だと思う。
もしかしたら錯覚かもしれない。俺達は、まだ未成熟で未発達な心と身体をしているから。だからこそ思う。それは心を置いてけぼりにする身体と魂からの信頼だって。本能的なモノだ。それは俺にとってすごく怖い。自分がΩである事を見せつける様な、そんな感情が身体と心を支配する。
きっと拓人もそうなんだろう。
だからこそ、俺を求めるんだ。求めて求めて。そうして己のモノにしないと治らない症状。アイツの本心では無い。本心から求めてるわけでは無い。
強制的に、運命が俺達を結ばせようとしているんだ。
そんなの‥そんなのなら要らない。
運命なんて関係なければ良いのに。
こんなので捻じ曲げられるなら出会いたくなかった。
俺はαは嫌いだ。運命なんて要らない。あいつが悪いわけでは無いけれど‥。警戒しなければいけない相手なんだ。
だから、突き放す。

「俺は死んでもアンタを好きにならない。帰ってくれ。」







そうして、その日を境に卒業するまで、拓人は俺には会わなくなった。



それから数ヶ月‥
中学を無事に卒業し‥。
俺達は、高校生になった。
俺のα嫌いは相変わらずのものだ。
社会に出れば、否応無しに更にαに会う事もあるだろう。そうなれば更に引き篭もりに拍車がかかる。との事で、リハビリの為にαやΩが比較的に多い所の高校に入らされた。
何故なんだ。
何故、また奴が居るんだ。

「‥久しぶり。」

顔が見れない。

「ん。久しぶり‥。」

そう返すのがやっとだった。
拓人は会った頃より、もっと身長が伸びた。10cmくらい?対する俺は、3cmしか伸びてない。
身体もがっしりしてきて運動系の部活でもやっていたのだろうか?
運命の相手らしいのに何も知らない。
だって俺は、この数ヶ月の間、拓人を知ろうとしなかった。
俺達の空白の数ヶ月間は、本当に顔を一度も見ていなかったわけではない。インターネット上では、偶に拓人からではあったが、話をしたりはしていたし、オンライントゲームでパートナーになったりもした。
ゲームならば、俺の方が強いみたいで、色々な事を教えた。
誰にも言えないけれど、αに教えるのは優越感がある。
気さくで飾らなく、その時間は確かに、友情を感じたし楽しめた。
番にならないのだったら、友達としてならば、会っても良いと思ったんだ。だがしかしそれはネット上だけの話である。
だから直に会うと緊張してしまう。
しかも久しぶりに会うのが、入学式の日だなんて、思いもしなかった。
なんで、俺の玄関前に拓人が待っているのでしょうか?

「おはよう!あおい。一緒に行こう。」

ニコリと笑顔を浮かべる拓人。

「なんで、いるの‥。」

「あれ?聞いてない?俺達、同じ学校だよ。」

聞いてない。いや、そういえば昨日、母さんがなんか言ってた様な気がしたけど聞いてなかった。

そうして青褪めてる俺に拓人が手を引いて、仲良く朝から手を繋いで登校することになった。
その間も、拓人は終始ご機嫌な笑顔を浮かべていた。

「俺達、そこそこ仲良くなったと思うんだ。もっと、親睦を深めよう。」

途中、そんな事を拓人が言っていた気がする。

やっぱり、油断しては行けない相手だった。

「親睦ならネット上で良いよ。俺はもう帰りたい‥。」

春、寒かった冬が終わり、新しい新生活に胸を躍らせる、皆が心を踊らせる太陽が眩しく晴れた暖かい日だった。

そんな高校生活初日目にして、もう俺の心は、引き篭もりたい気分に陥った。

そんな俺とは対照的に、とても嬉しそうな拓人。まるでこのまま歌でも歌い出しそうな勢いだ。

俺達は側から見ればどんな風に映っているのだろうか。

まあ、聞くまでも無いだろう。手をしっかり繋いでの登校だから仲良く見えているのだろうな‥。

そんな俺達に、春の微風が優しく吹き抜けた。


___

2021年4月7日更新
2022年1月19日文章編集完了

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