番なんて要らない

桜 晴樹

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気になるあいつ

気になるあいつ。でも嫌い5

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不遜な態度で、ベッドに腰掛けている拓人に、今にも逃げ出したくなる俺。
青褪める俺を見詰める相貌が怖い。耐えられなくなった俺は、そうしてプライドを捨てた。
そう困った時の技を出したのだ。
それは秘技・土下座だ。
俺は、スライディングをするかの如く、床に頭を擦り付けて土下座をした。

「殴ってすいませんでしたー!!!」

顔を見て瞬間土下座した俺に、拓人は驚いた顔をしていた。誰でも会った瞬間に土下座されたら驚くよな。

「ふはっ。何で土下座なの。」

可笑しそうに、唇を押さえて笑う拓人は、年相応にあどけなく、ちょっと見惚れた。「くそっ、これだからイケメンはっ!!」握り拳を作り、思わず吼えそうになるのをグッと堪える。

「心の声、出てるよ。」

呆れた声で注意された。

「えっ、嘘!?」

何でもかんでも声に出ない様に、これからは気を付けよう。

「ふっ‥。あおい。謝るのは俺の方だ。」

拓人が、ベッドから降りて、俺に跪いてた。

「ごめん、ごめんなさい。あおい、俺はどんな処罰も受けるよ。だけど、君の側にいさせて欲しい。」

切実な訴えに俺は、困ってしまう。だって、俺は俺達は運命の番なんだ。なのに俺が番になるのを嫌がっているだけだ。本当ならば、拓人を受け入れれば問題は無い。
でも、どうしても、子を孕む種であるΩとしての自分が、別の生き物の様で気持ち悪い。
番を受け入れるとは、そういう己の性を受け入れるという事だ。
拓人を受け入れてしまえば、何時の日にかは子を孕む事になる。
俺だって、本能では拓人を受け入れたい。でも、怖いんだ。
だから、キスだって本当に怖かった。自分の心を裏切って、身体が歓喜に震えてしまったのを、浅ましい自分を知られたくない。
拓人には、悪いがもう少しこのまま逃げさせてもらう。

「‥本当に俺、怖かったんだぞ‥。もうあんな事しないって、約束してくれるなら‥許すよ‥。」

ちらっと、拓人の顔を盗み見てみる。困った顔をしていた。

「あぁ。あおいの嫌がる事はしない。誓うよ。」

拓人の瞳が俺を射抜く。
照れ臭くなった俺は、そっぽを向こうとしたけれど、真摯的な態度の拓人に顔を背ける事は出来なかった。
そうして、次には優しく慈しむ様に見詰めて、誓ってくれた。

「うん‥。俺も、拓人の事、あまり逃げない様にするからな!」

そんな拓人にこそばゆい気持ちにされて、俺も何かを言わなくちゃって思ってしまい、俺は思わず宣言していた。

「っあ、‥!」

失言だった。気付いた時には、拓人が口を押さえて笑っている。
それが凄く恥ずかしくて、俺は今度こそそっぽを向いた。

「くっ‥ふふっ、あぁ。出来るだけ逃げないでくれよ。」

何時迄も可笑しそうに笑う拓人を見て、先程の気恥ずかしい空気も無くなり、俺の口元も自然と綻びる。


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2021年4月18日更新
2022年1月20日編集作業完了
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感想 1

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