番なんて要らない

桜 晴樹

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気になるあいつ

気になるあいつ。でも嫌い4

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逃げるが勝ち。
先人の諺がチラリと過ぎる。と、いう訳で、殴って逃げてきてしまいました。
看病してくれて、感謝はしているし、悪かったな。と、謝罪したい気持ちもある。
だが、身の危険を感じてしまったからには逃げる。
あんなに身体が痛かったのに、驚きと恐怖が混ざっているせいか、痛みがなくなっていた。
部屋を出て、当てもなく歩いていたら、いつの間にか食堂に着いていた。

「あ、起きたんだ!身体大丈夫?」

ミキちゃんが、心配気に聞いてきた。
その手には、お粥と小鉢の乗ったお盆がある。ご飯を見た俺の腹は鳴り出した。そしてまだ何も食べてない事を思い出す。もしかしなくても、俺の分のご飯だろうか。ミキちゃんは、運んでくれようとしたのだろう。
ただ、俺は風邪ではなくて筋肉痛なだけである。
だから本当なら、普通のご飯でも食べれるのだけれども、作ってくれて嬉しい。
その思いが凄く嬉しくて俺の顔がニヤけてしまう。

「あ、うん。もう平気。ご迷惑をお掛けしました。」

何から何まで迷惑をかけてしまった。謝罪しながら頭を下げる。

「別に謝らないで良いよ。僕も無理させちゃってごめんね。」

ミキちゃんが謝る事は無いのに、それでも謝ってくれる。そんな風にされたら、もっと好きになってしまう。

「いや、いやいや!ミキちゃん悪くないし。」

「でも山登りはキツかったよね‥。僕は慣れていたから気付かなくてごめんね‥。」

俺の運動音痴のせいで、肩を落として謝るミキちゃんに申し訳なくなる。

「じゃぁ、おあいこって事で。」

おあいこって何だよ。とか、思ったが、兎にも角にも罪悪感を持ってもらいたくは無いから提案してみた。

「ふふっ。うん、分かったよ。おあいこね!」

ミキちゃんは、クスクス笑いながら、テーブルにお盆を置いた。
「あおいは、ご飯食べられる?」
やはり俺のご飯だった。
更に俺のお腹が盛大に鳴り出した。

「うん、お腹ぺこぺこ。」

それを聞いたミキちゃんはクスクス笑いながら、お粥の乗ったお盆を差し出してくれた。

「ふふっ。いっぱい食べてね。あ、お粥にしちゃったけれど、普通のご飯の方が良かったかな?他に食べたいのあれば言ってね。」

「うん、ありがとう!」

そうして、一時の癒されタイムで、癒され満喫した俺は、お腹も膨れて幸せいっぱいに部屋に戻ってしまった。
そう、先程俺は、どうして部屋から出たのかを、すっかり忘れていたんだ。
人は、お腹いっぱいになると、忘れやすいらしい。もしかしなくても、俺だけなんて事は‥ないと思いたい。

「お帰り。」

その声を聞くまでは、本当に忘れていて、思い出した瞬間に逃げ出したくなった。

___
2021年4月16日更新
2022年1月20日編集作業完了
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