番なんて要らない

桜 晴樹

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気になるあいつ

気になるあいつ。でも嫌い30

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その日、拓人は休んだ。それはとても珍しい事だった。
αは、健康過ぎる程で風邪を引いても、直ぐに治ってしまう。それくらい、強い治癒力の持ち主だ。だからか、殆ど休む事なんて無い。現に今までも、俺と出会ってから、彼が休んだり、弱った姿を見た事はなかった。

休むなんて、余程の事が無い限りは‥。


日々、拓人が居ない日が増えていく。

あの日、拓人が暴走した日から、もう一月は経つ。あの後、なんとなく気不味くて、お互い何事もなかったかの様に、他愛無い会話をしながら帰った。だが、拓人からの、連絡が来なくなったのも、次の日からだった。休み出したのも、連絡が来なくなった日からだ。
そうして、拓人と会えなくなってから、俺はあの日の事は、何も無かったかのように思えてきてしまう。
いや、もしかしたら、その事が原因で、拓人が来なくなったのかも知れない。と、思ってしまう。

そう、悶々とした日々を過ごしていた俺に、修二さんが話しかけてきた。

修二さんの話だと、拓人の家は金持ちらしく、後継者問題があり、学校に通えなくなっているらしい。
因みに、ミキちゃんもその事で休みらしい。何故なんだ‥。
通えなくなる問題ってなんだ。
漫画みたいに、死闘でも繰り広げているのかと考えてしまう。

「えー拓人、大変なんですねー。」

棒読みになってしまうのも許してほしい。住む世界が違いすぎるんだ。

「君にも、関係ある事なんだけどね?」

なんで、俺が関係してくるのかが分からない。

「拓人君の家は、家柄とα至上主義なんだよ。」

「へー。」

じゃあ、なんで平民のΩの尻追いかけているの。運命の相手だから、本能に忠実になってたの?

アルファ・・・も大変なんですね。」

そんなの俺と関係ないじゃん。

「でもね。アイツは、どんなに家族に反対されても、君しか要らないって言うんだ。」

凄い愛されているね。

そう言った修二さんは満面の笑みを浮かべていた。

昼時に、そんな風に修二さんと、雑談した俺は、午後の授業を早退した。修二さんに、予め聞いておいた住所に向かった。

いや、なんで授業優先しなかったよ。俺が行っても迷惑だよな?帰るか!と、俺は、来た事を後悔した。
俺の想像以上に、大きな邸宅を前に、帰る事もチャイムを鳴らす事も出来ずに、只立ち尽くし怯んでいた。
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