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第三章 未定
第五話 孤児院(4)
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「これをどうぞ……」
去っていくドラ子の背中を見ていると、雛葉ちゃんに古びた布で包まれた何かを手渡される。
「これは……?」
「あなたのふくです。ここにいるまほうしょうじょにつくってもらいました」
中を覗くと、確かにズボンとシャツが何着か入っていた。俺が元いた世界のものではなく、この世界の住人が着るような質素なものだ。
なるほど。さっき居なくなったのは優子さんと喧嘩したからじゃなくて、これを作りにいってたからだったのか。
「なんか少し大きくないですか……?」
服を取り出した俺は素朴な疑問を口にする。
「あなたがまほうしょうじょになってないときようのふくです。おとこのこなのでしょう?」
「あ……」
そう言えばそうだった。魔法少女状態を解除したら、俺の身長はある程度延びる。それを見越して、雛葉ちゃんはこの服を作ってくれていたのだ。
「でも、どうしてこんなに? 俺は風呂にはいる時以外は魔法少女の状態ですし、こんなには要らないと……」
「りゆうは、あしたになればわかります。たぶんあなたはあしたからまほうしょうじょになることはできなくなる」
「はい?」
雛葉ちゃんの言葉が理解できなかった。魔法少女になれない? どうして?
「ひとまず、いまもってるあいてむをすべてだしたらまほうしょうじょのへんしんをかいじょしてください」
「は、はい……」
有無を言わせぬ雰囲気で雛葉ちゃんが言うので、俺は言われるままに端末からアイテムーー魔法剣と魔法のフライパンを取り出して魔法少女の変身を解除すると、服をジャージから異世界の服に着替える。
「あ、パンツも変えた方がーー」
「そ、それはそのままでいいです。あとでわたしがみてないところでかえてください」
無表情のまま、頬を少しピンクに染める雛葉ちゃんに制される。
「いちおう、ふれんどとうろくをしておきましょう。まほうしょうじょにならなくても、たんまつはそうさできるので」
「はい」
そう言って、遠慮がちに稲妻の形をした端末を近づけてきた雛葉ちゃんと自分の端末を引っ付ける。
ピロリン♪ という音と共にフレンドが追加されましたの文字。
――――――――――
魔法少女名:ヒナバ
紫雷の魔法少女
LV:38
所持アイテム:遠雷の杖
フレンド登録数:4
所在地 フェリス孤児院
――――――――――
レベルは今まで見てきた中で一番高かった。メグリンの姉弟子だったというのも頷ける。
「あと、わたしにもどらこみたいにけいごをつかうのをやめてください」
「わ、わかりま……わかった」
雛葉ちゃんの言葉に頷いた。すると彼女は俺の目を食い入るようにじっと見つめてくる。
「な、なにか……?」
「メグリンのこと、わすれるなとはいいません。でも、ふくしゅうにとらわれるのだけはやめてください」
戸惑いの表情を浮かべた俺に雛葉ちゃんは続ける。
「メグリンはきっと、それはのぞんでいないです。あなたにふくしゅうにとらわれたまほうしょうじょへなってほしいとはかのじょはぜったいにおもってないでしょう」
「…………別に俺は復讐に囚われてなんかないっ!」
なぜか、思わず声が大きくなる。優子さんといい、雛葉ちゃんといい、なんでこの人たちは俺の心の中を知ったような口をきくんだよ。
「……そうですか。ならいいのですが……」
「ごはんできたわよー」と遠くの方で優子さんの声が聞こえる。
「とりあえずいきましょうか。きっとみんなびっくりしますよ、ろんろんのしょうたいがおとこのこだってしったら」
「う、うん……その時は、できるだけフォローお願いね……」
気まずくなった雰囲気を取り成すように言った雛葉ちゃんに俺は苦笑する。
確かに俺はメグリンを殺して、俺にその罪を着せてきたアレイスターを許すことはできない。
でも、それに囚われていてはメグリンみたいな魔法少女になることはできないことは理解できてるつもりだ。
自分の心の内をしっかりと整理したつもりになった俺は、先を行く雛葉ちゃんの小さな背中を追った。
去っていくドラ子の背中を見ていると、雛葉ちゃんに古びた布で包まれた何かを手渡される。
「これは……?」
「あなたのふくです。ここにいるまほうしょうじょにつくってもらいました」
中を覗くと、確かにズボンとシャツが何着か入っていた。俺が元いた世界のものではなく、この世界の住人が着るような質素なものだ。
なるほど。さっき居なくなったのは優子さんと喧嘩したからじゃなくて、これを作りにいってたからだったのか。
「なんか少し大きくないですか……?」
服を取り出した俺は素朴な疑問を口にする。
「あなたがまほうしょうじょになってないときようのふくです。おとこのこなのでしょう?」
「あ……」
そう言えばそうだった。魔法少女状態を解除したら、俺の身長はある程度延びる。それを見越して、雛葉ちゃんはこの服を作ってくれていたのだ。
「でも、どうしてこんなに? 俺は風呂にはいる時以外は魔法少女の状態ですし、こんなには要らないと……」
「りゆうは、あしたになればわかります。たぶんあなたはあしたからまほうしょうじょになることはできなくなる」
「はい?」
雛葉ちゃんの言葉が理解できなかった。魔法少女になれない? どうして?
「ひとまず、いまもってるあいてむをすべてだしたらまほうしょうじょのへんしんをかいじょしてください」
「は、はい……」
有無を言わせぬ雰囲気で雛葉ちゃんが言うので、俺は言われるままに端末からアイテムーー魔法剣と魔法のフライパンを取り出して魔法少女の変身を解除すると、服をジャージから異世界の服に着替える。
「あ、パンツも変えた方がーー」
「そ、それはそのままでいいです。あとでわたしがみてないところでかえてください」
無表情のまま、頬を少しピンクに染める雛葉ちゃんに制される。
「いちおう、ふれんどとうろくをしておきましょう。まほうしょうじょにならなくても、たんまつはそうさできるので」
「はい」
そう言って、遠慮がちに稲妻の形をした端末を近づけてきた雛葉ちゃんと自分の端末を引っ付ける。
ピロリン♪ という音と共にフレンドが追加されましたの文字。
――――――――――
魔法少女名:ヒナバ
紫雷の魔法少女
LV:38
所持アイテム:遠雷の杖
フレンド登録数:4
所在地 フェリス孤児院
――――――――――
レベルは今まで見てきた中で一番高かった。メグリンの姉弟子だったというのも頷ける。
「あと、わたしにもどらこみたいにけいごをつかうのをやめてください」
「わ、わかりま……わかった」
雛葉ちゃんの言葉に頷いた。すると彼女は俺の目を食い入るようにじっと見つめてくる。
「な、なにか……?」
「メグリンのこと、わすれるなとはいいません。でも、ふくしゅうにとらわれるのだけはやめてください」
戸惑いの表情を浮かべた俺に雛葉ちゃんは続ける。
「メグリンはきっと、それはのぞんでいないです。あなたにふくしゅうにとらわれたまほうしょうじょへなってほしいとはかのじょはぜったいにおもってないでしょう」
「…………別に俺は復讐に囚われてなんかないっ!」
なぜか、思わず声が大きくなる。優子さんといい、雛葉ちゃんといい、なんでこの人たちは俺の心の中を知ったような口をきくんだよ。
「……そうですか。ならいいのですが……」
「ごはんできたわよー」と遠くの方で優子さんの声が聞こえる。
「とりあえずいきましょうか。きっとみんなびっくりしますよ、ろんろんのしょうたいがおとこのこだってしったら」
「う、うん……その時は、できるだけフォローお願いね……」
気まずくなった雰囲気を取り成すように言った雛葉ちゃんに俺は苦笑する。
確かに俺はメグリンを殺して、俺にその罪を着せてきたアレイスターを許すことはできない。
でも、それに囚われていてはメグリンみたいな魔法少女になることはできないことは理解できてるつもりだ。
自分の心の内をしっかりと整理したつもりになった俺は、先を行く雛葉ちゃんの小さな背中を追った。
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