3 / 20
10月14日(朝)
しおりを挟む
今日も幼馴染はどさくさに紛れて朝から触ってくる。
いつも通り平日の朝。空は秋晴れでちょっとは涼しくなってきた空気が気持ち良い。
あたしと亜紀はいつも駅前で待ち合わせをしてから一緒に電車に乗って登校している。お互いの家の真ん中にある駅で待ち合わせした方が効率が良いからなんだけど、亜紀は高校の登校初日にあたしの家に迎えにきた。これから毎日となるとさすがに大変だからと言ってそのあとは断っていた。
明らかに寂しそうにしていたけど、亜紀にわざわざ駅を越えてあたしの家にまで迎えに来てもらうのは気が引けた。
駅前のオブジェクトの前に眼鏡をかけた制服姿の女の子が本を読みながら立っていた。肩口で切り揃えられた黒髪が風で靡いてどこかの絵画のような風景だ。毎日のように見ていても綺麗だなと思う。
「おはよう亜紀」
「おはよう、ちさき」
挨拶を返してくれた亜紀は嬉しそうに笑って、読んでいた文庫本を閉じて鞄にしまう。
駅前のよくわからないオブジェクトの前が待ち合わせ場所で、亜紀はいつもあたしより早くきて本を読みながら待っていてくれる。来る途中でコンビニ寄ってきているあたしが遅いわけじゃない。待ち合わせの時間には間に合っているし……
2人並んで改札の入り口の方へ向かうと、いつもより人が多いような気がする。
「電車が遅延しててさっき再開したばかりみたい」
亜紀が携帯の画面を見せて教えてくれた。
「そっか~どうりで人が多いわけだ。電車乗れるといいけど…」
ホームに着くとさらに人が増えて人を縫うようにして歩く、いつもより歩きにくいホームは迷路のようで目的の場所まで辿り着くには遠回りしなきゃいけないような状況だった。なんとか進もうと歩いていると……
ギュッ
後ろから手を握られる。振り返ると亜紀があたしの手を掴んでこっちを見ていた。
「ちさきは小さいんだから見失っちゃう」
そう言って更に強くギュッと手を握り直してあたしの先を歩き出す。引っ張られるようにして進んでいくが…
「いや、あたし小さくないし!160あるんだからね!?高2女子の平均身長よりあるからね!?!?」
「私は165あるから」
「5センチしか違わないじゃん!単2電池の高さしか違わないよ!」
「単2電池の高さとかわかんないし」
「じゃぁ、500万円の厚み!!」
「500万円持ったことあるの?」
「ないけどね!!」
「もう5センチとか誤差の範囲じゃないかな!?」と抗議すると流石に誤差ではないでしょ。とクスクス笑われて気づいたらいつもの乗車場所まで着いていた。長い列の最後尾に並ぶ。
握られた手はお互いの熱のせいか、熱くなってきていた。手汗が心配になってきて繋がっている手を見る。
小さい頃のあたしたちはよくこうして手を繋いでいた。あたしより身長が低く大人しかった亜紀をあたしが引っ張り回して色んなところに遊びに行っていた。
それが今では身長も他の所も抜かされて…学力とかね!胸とか別に悔しくないし!いや、学力は昔っから亜紀の方が良かった……うん
「昔はよくこうして手を繋いでたよね」
亜紀がこっちを向いて話しかけてきた。その瞳は昔を懐かしく思っているのかすごく優しい瞳をしていた。
「そ、そうだね。ただあたしが亜紀を連れ回して遊んでただけだよ。大人しくて引っ張り回しても文句言わないで着いてきてくれるからさ」
「引っ張り回されたのは確かにそうかもしれないけど、ちさきがすごく頼もしかったし私もすごく楽しかったから、望んで引っ張り回されてたんだよ」
駅のホームに入ってくる電車を見つめているようで、亜紀はきっと昔の事を思い出しているんだろう横顔はちょっと寂しそうに微笑んでいた。
そのしんみりとした雰囲気を消し飛ばそうと入ってくる電車のガタンガタンという音に負けないように声を張って言う。
「それが今では亜紀に引っ張り回されてるわけだね!あたしは!」
きょとんと亜紀がこっちを見て、徐々に口の端が上がった。ちょっと意地悪そうな表情になったぞ…
「そうだね。これからは私がちさきを引っ張り回していくよ」
そう言って電車の中に流れ込む人混みと一緒に手を引かれて入っていく。
なんとかギリギリ乗り込んだあたしは亜紀に守られるように扉前の場所を確保して、今日は学校の最寄り駅までこの状態かと辟易してくる。
ムギュっと亜紀の胸があたしの胸に押し付けられた。
胸!!
こんなに押し付けられるとブレザー越しでも…やわ…やわっ!!
「今日はホントに混んでるね」
あたしがブレザー越しの胸の感触にやわやわしていると亜紀がそんな事を口にした。
ん?今日「は」って言ったか?今日「は」!?いや、確かに今日はいつもより混んでるけど、この間「も」混んでたんじゃないの!?
亜紀の言葉が気になってお胸ばかり見ていた視線を上に上げる。
「ぅぉっ!?!?」
ゴン!!
「えっ!大丈夫!?!?」
すぐ近くに亜紀の顔があってビックリして距離を取ろうと頭を下げたら後頭部が扉にぶつかって鈍い音がした。大丈夫大丈夫と言ってまた視線を下げたら、ムギュッとなった胸が視界に入ってどこを見てたらいいんだ!と視線が定まらず更に下に視線を下げるといまだに亜紀に握られた手があった。
一旦気持ちを落ち着けようと深いため息を吐く…
「大丈夫?苦しくない?」と亜紀が心配そうに尋ねてきた。
大丈夫だよと口の端を上げて多分笑顔で答えられたと思うんだけど、内心は手汗をいっぱいかいてる手をずっと繋いだままいて、亜紀の胸がむぎゅむぎゅと押し付けられてこんな状態が学校の最寄り駅まで続いてしまったらあたしは単2電池くらいの厚さまで潰れてしまってるかもしれない…気持ちはもう潰れているけどね…
ギュウギュウの電車は学校の最寄り駅まで続いて、あたしは亜紀に手を引かれて教室までなんとか辿り着いた。その光景を見た凪沙が口を手で覆ってニヤニヤとしていたけど、あたしはメンタルが潰れてしまっていたので軽く挨拶を交わして机に突っ伏した。
凪沙が扉に頭をぶつけたあたしの後頭部をヨシヨシしてくれたので、ちょっとメンタルが回復した。
いつも通り平日の朝。空は秋晴れでちょっとは涼しくなってきた空気が気持ち良い。
あたしと亜紀はいつも駅前で待ち合わせをしてから一緒に電車に乗って登校している。お互いの家の真ん中にある駅で待ち合わせした方が効率が良いからなんだけど、亜紀は高校の登校初日にあたしの家に迎えにきた。これから毎日となるとさすがに大変だからと言ってそのあとは断っていた。
明らかに寂しそうにしていたけど、亜紀にわざわざ駅を越えてあたしの家にまで迎えに来てもらうのは気が引けた。
駅前のオブジェクトの前に眼鏡をかけた制服姿の女の子が本を読みながら立っていた。肩口で切り揃えられた黒髪が風で靡いてどこかの絵画のような風景だ。毎日のように見ていても綺麗だなと思う。
「おはよう亜紀」
「おはよう、ちさき」
挨拶を返してくれた亜紀は嬉しそうに笑って、読んでいた文庫本を閉じて鞄にしまう。
駅前のよくわからないオブジェクトの前が待ち合わせ場所で、亜紀はいつもあたしより早くきて本を読みながら待っていてくれる。来る途中でコンビニ寄ってきているあたしが遅いわけじゃない。待ち合わせの時間には間に合っているし……
2人並んで改札の入り口の方へ向かうと、いつもより人が多いような気がする。
「電車が遅延しててさっき再開したばかりみたい」
亜紀が携帯の画面を見せて教えてくれた。
「そっか~どうりで人が多いわけだ。電車乗れるといいけど…」
ホームに着くとさらに人が増えて人を縫うようにして歩く、いつもより歩きにくいホームは迷路のようで目的の場所まで辿り着くには遠回りしなきゃいけないような状況だった。なんとか進もうと歩いていると……
ギュッ
後ろから手を握られる。振り返ると亜紀があたしの手を掴んでこっちを見ていた。
「ちさきは小さいんだから見失っちゃう」
そう言って更に強くギュッと手を握り直してあたしの先を歩き出す。引っ張られるようにして進んでいくが…
「いや、あたし小さくないし!160あるんだからね!?高2女子の平均身長よりあるからね!?!?」
「私は165あるから」
「5センチしか違わないじゃん!単2電池の高さしか違わないよ!」
「単2電池の高さとかわかんないし」
「じゃぁ、500万円の厚み!!」
「500万円持ったことあるの?」
「ないけどね!!」
「もう5センチとか誤差の範囲じゃないかな!?」と抗議すると流石に誤差ではないでしょ。とクスクス笑われて気づいたらいつもの乗車場所まで着いていた。長い列の最後尾に並ぶ。
握られた手はお互いの熱のせいか、熱くなってきていた。手汗が心配になってきて繋がっている手を見る。
小さい頃のあたしたちはよくこうして手を繋いでいた。あたしより身長が低く大人しかった亜紀をあたしが引っ張り回して色んなところに遊びに行っていた。
それが今では身長も他の所も抜かされて…学力とかね!胸とか別に悔しくないし!いや、学力は昔っから亜紀の方が良かった……うん
「昔はよくこうして手を繋いでたよね」
亜紀がこっちを向いて話しかけてきた。その瞳は昔を懐かしく思っているのかすごく優しい瞳をしていた。
「そ、そうだね。ただあたしが亜紀を連れ回して遊んでただけだよ。大人しくて引っ張り回しても文句言わないで着いてきてくれるからさ」
「引っ張り回されたのは確かにそうかもしれないけど、ちさきがすごく頼もしかったし私もすごく楽しかったから、望んで引っ張り回されてたんだよ」
駅のホームに入ってくる電車を見つめているようで、亜紀はきっと昔の事を思い出しているんだろう横顔はちょっと寂しそうに微笑んでいた。
そのしんみりとした雰囲気を消し飛ばそうと入ってくる電車のガタンガタンという音に負けないように声を張って言う。
「それが今では亜紀に引っ張り回されてるわけだね!あたしは!」
きょとんと亜紀がこっちを見て、徐々に口の端が上がった。ちょっと意地悪そうな表情になったぞ…
「そうだね。これからは私がちさきを引っ張り回していくよ」
そう言って電車の中に流れ込む人混みと一緒に手を引かれて入っていく。
なんとかギリギリ乗り込んだあたしは亜紀に守られるように扉前の場所を確保して、今日は学校の最寄り駅までこの状態かと辟易してくる。
ムギュっと亜紀の胸があたしの胸に押し付けられた。
胸!!
こんなに押し付けられるとブレザー越しでも…やわ…やわっ!!
「今日はホントに混んでるね」
あたしがブレザー越しの胸の感触にやわやわしていると亜紀がそんな事を口にした。
ん?今日「は」って言ったか?今日「は」!?いや、確かに今日はいつもより混んでるけど、この間「も」混んでたんじゃないの!?
亜紀の言葉が気になってお胸ばかり見ていた視線を上に上げる。
「ぅぉっ!?!?」
ゴン!!
「えっ!大丈夫!?!?」
すぐ近くに亜紀の顔があってビックリして距離を取ろうと頭を下げたら後頭部が扉にぶつかって鈍い音がした。大丈夫大丈夫と言ってまた視線を下げたら、ムギュッとなった胸が視界に入ってどこを見てたらいいんだ!と視線が定まらず更に下に視線を下げるといまだに亜紀に握られた手があった。
一旦気持ちを落ち着けようと深いため息を吐く…
「大丈夫?苦しくない?」と亜紀が心配そうに尋ねてきた。
大丈夫だよと口の端を上げて多分笑顔で答えられたと思うんだけど、内心は手汗をいっぱいかいてる手をずっと繋いだままいて、亜紀の胸がむぎゅむぎゅと押し付けられてこんな状態が学校の最寄り駅まで続いてしまったらあたしは単2電池くらいの厚さまで潰れてしまってるかもしれない…気持ちはもう潰れているけどね…
ギュウギュウの電車は学校の最寄り駅まで続いて、あたしは亜紀に手を引かれて教室までなんとか辿り着いた。その光景を見た凪沙が口を手で覆ってニヤニヤとしていたけど、あたしはメンタルが潰れてしまっていたので軽く挨拶を交わして机に突っ伏した。
凪沙が扉に頭をぶつけたあたしの後頭部をヨシヨシしてくれたので、ちょっとメンタルが回復した。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
さくらと遥香
youmery
恋愛
国民的な人気を誇る女性アイドルグループの4期生として活動する、さくらと遥香(=かっきー)。
さくら視点で描かれる、かっきーとの百合恋愛ストーリーです。
◆あらすじ
さくらと遥香は、同じアイドルグループで活動する同期の2人。
さくらは"さくちゃん"、
遥香は名字にちなんで"かっきー"の愛称でメンバーやファンから愛されている。
同期の中で、加入当時から選抜メンバーに選ばれ続けているのはさくらと遥香だけ。
ときに"4期生のダブルエース"とも呼ばれる2人は、お互いに支え合いながら数々の試練を乗り越えてきた。
同期、仲間、戦友、コンビ。
2人の関係を表すにはどんな言葉がふさわしいか。それは2人にしか分からない。
そんな2人の関係に大きな変化が訪れたのは2022年2月、46時間の生配信番組の最中。
イラストを描くのが得意な遥香は、生配信中にメンバー全員の似顔絵を描き上げる企画に挑戦していた。
配信スタジオの一角を使って、休む間も惜しんで似顔絵を描き続ける遥香。
さくらは、眠そうな顔で頑張る遥香の姿を心配そうに見つめていた。
2日目の配信が終わった夜、さくらが遥香の様子を見に行くと誰もいないスタジオで2人きりに。
遥香の力になりたいさくらは、
「私に出来ることがあればなんでも言ってほしい」
と申し出る。
そこで、遥香から目をつむるように言われて待っていると、さくらは唇に柔らかい感触を感じて…
◆章構成と主な展開
・46時間TV編[完結]
(初キス、告白、両想い)
・付き合い始めた2人編[完結]
(交際スタート、グループ内での距離感の変化)
・かっきー1st写真集編[完結]
(少し大人なキス、肌と肌の触れ合い)
・お泊まり温泉旅行編[完結]
(お風呂、もう少し大人な関係へ)
・かっきー2回目のセンター編[完結]
(かっきーの誕生日お祝い)
・飛鳥さん卒コン編[完結]
(大好きな先輩に2人の関係を伝える)
・さくら1st写真集編[完結]
(お風呂で♡♡)
・Wセンター編[完結]
(支え合う2人)
※女の子同士のキスやハグといった百合要素があります。抵抗のない方だけお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる