召喚士リン〜異世界転生した俺は好きなものを守るためにこの類まれなる召喚能力を使います〜

ゴリラ伯爵

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一章

転生者リン

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 俺の名前はリン。苗字なんかない。ただのリン。16歳。ガルド大陸の中にある、ニルっていう山に住んでいる。

 いわゆる転生者ってやつ。元々は34歳のしがないオッサン。気付いたらこの世界に転生していたんだよね。

 俺からしたら大した刺激もない山なんだけど、霊峰なんて呼ばれてるらしく、大陸中の人が有り難がってこの山に参拝に来ている。

と言っても、参拝に来れるのは中腹にあるお社までで、そこから先には入ることは許されていない。

なんでも神の住まう聖域だそうで、、

みんな恐れをなして、そこからはやってこないってわけ。

 実際、中腹以上になると空気も薄いし、寒いし、凶暴な魔獣も出るしで、険しいことに変わりはないんだけどね。
神様云々というより、自然の脅威がおっかないってわけ。

 笑っちゃうのはさ、その聖域なんて呼ばれる場所に住んでるのが、俺なんだよね。
こんなガキんちょだよ??なんか笑っちゃうし、申し訳なくなっちゃうよね。

 一人で暮らしているのかって??

いやいや、俺は母ちゃんと姉ちゃんと一緒に暮らしてるよ。

ちなみに、母ちゃんも姉ちゃんも、神なんかじゃないよ?
あんなガサツな生き物が神だなんて……

 「リーーーン!!!!」

 突如脳内に響きわたる声に、俺は心臓を爆ぜさせる。
これはあれだ、うん。先述したガサツな俺の母ちゃ……いや、素敵なお母様の念話ってやつ。

 でも何??いきなり念話で怒鳴りつけるなんて……

 バリバリと音を立て雷鳴が轟き、雷を纏った拳骨が、容赦無く俺の頭に落ちてくる。

 え??ええ??雷神の鉄槌って!嘘でしょ!

 ガッチーン!!
俺の頭に上級召喚魔法直撃!!

 「痛っっ…ぁぁあ」

 俺は泣き喚きたくなる気持ちを、辛うじて、辛うじて抑え込む。

 「んだよ母ちゃん!いきなり何すんだよ!!」
 「あんた今、失礼なこと考えたでしょ??」

 えぇ~…

もう怖すぎ…

 「考えてないよ!もう!」

 ここは何としてでも、ゴリ押して回避せねば。

 「俺何も言ってないしー、母ちゃんが勝手に勘違いしただけだろ?」
 「危機察知能力ってやつよ」

 は??
危機察知能力??使い方間違ってるんじゃ……

 「あんたが私に失礼なこと考えたら、全部察知出来るのよ。」

 もう…何言ってんのこの人…

 「あんたの無礼に気付けなかったら、私の沽券に関わるでしょ??」

 もう、何も言えないし、何も言わないっす……

 「分かった??分かったら帰ってらっしゃい。ご飯作ったから。」

 ガキじゃあるまいし…

いや、さっき自分のことガキんちょって言ったよ。
でもさ!夕飯に釣られるほど、そこまでガキじゃ…

 「今日はホロホロ鳥とアモ茸のホワイト煮込みよ。」
 「分かった!すぐ帰る!」

 あ…違う…違うんだ…

 このホワイト煮込みは絶品でさ、
じっくり柔らかく煮込んだホロホロ鳥の柔らかさと、アモ茸のサクサクした食感が、もうたまらなくってさ。

霊峰ニルにしかいないニル牛の乳をベースにしたホワイトクリームに、これでもかっていうくらい、鳥とキノコの旨味が溢れ出ててさぁ!

そこに、そこにね!
母ちゃんお手製の黒胡椒バターを乗せたらさぁ、もう絶品なんだよ!もう何杯だって食べれちゃうよね!

 はっ…
俺は何をこんな夢中に……

 「リン!」
 「は、はい!」

再び母ちゃんが念話で話しかけてくる。

 「早く帰っといで!」
 「わ、分かってるよ!」

今のホワイト煮込みへの熱き想いも、危機察知されたんじゃ……

くぅ~。
何か恥ずかしい。

 「あ、あとね、リン。」

 ん??

 「ユーリがウォーミングアップしてるから。」
 「う、うそ??」

 終わった。
母ちゃんのその一言に俺は絶望を感じるを得ない。

あ、ユーリってのは俺の姉ちゃんね。
ちなみに母ちゃんはミナ。

母ちゃんは、さっきも見てたら分かると思うけど、すげえ魔法の使い手。

特に召喚魔法の達人でさ、膨大な魔力を使用する召喚魔法を、俺が痛がる程度の強さに抑えて、緻密に頭の上だけに落としてきたりね。

もう魔法センスの塊でしかない。

 んで、ユーリ姉ちゃんは対象的に脳筋。
体力バカ。パワーゴリ押しのゴリラ番長。

身体能力半端じゃないし、色々な流派の武道が使えたりと、こっちはもう体力チート。

あの姉ちゃんの旦那になる人は、まあいつか出てくるんだろうけどさ、

 ぷぷ、猛獣使いよね!

 ヒュンヒュンヒュン

ん??何か風切り音が近付いてきて、、

 カッコーン!

 「っっ痛っったぁぁぁ!!!!」

 なに??何が起きたの??

周りを見渡すと、火起こし用に拵えてある、我が家の薪が地面に転がっている。

 うそだ~……うそだよ~
じゃあ何かい??

山頂近くにある我が家から、俺がいる中腹付近まで、この薪は飛んできたってわけ??

ありえね~…ありえね~よ……

 お~、痛え…
本日二発目の大打撃を受けた頭をさすりながら俺は考える。

 やっぱおっかねえ~…

 「……リン……」
 「はい!!」

俺はもう一目散にその声に答える。

 「バカなことしてないで、お家帰っといで。」

 バカなこと…
俺、何かしたでしょうか??

いや、確かに失礼なこと考えたよ??
考えた…考えたけどさあ……


 あれ??
そういや、何でだ??

 百歩譲って、母ちゃんの危機察知とやらは分かったとしよう。

理不尽な能力だけど……

 でも、何でユーリ姉ちゃんは??

失礼ついでに言わせて貰えば、あの脳筋ゴリラ番長に、そんなデリケートな能力が備わって……

 はっっ!!

ヒュンヒュン音を立てて俺の頭を仕留めにくる、新たな薪に気付き、俺は辛うじてのところでスウェーバックし、回避する。

 こ、怖え~。
なに??マジで姉ちゃんも、厄介な能力を??

 「リン……」
母ちゃんが俺に話しかけてくる。

 「な、何??」

 「……勘だって……」

 勘…勘かぁ……
ふふ……そうだよね……

だって姉ちゃんだもん、仕方ないよね。

 何だこれ…
不意に目頭が熱くなる。

何で俺は泣きそうになってるんだ??

圧倒的な天才、いや天災的な才能を見せつけられ、己の小ささを見せ付けられたから??

それともこの後の、ユーリ姉ちゃんとの、
“訓練”を想像して??

分からん。
答えは風の中。

そう言うことにしておこう。

 まあまあ、俺のことはさて置いて。

……いいでしょ??
もうこれ以上メンタル曝け出したくないもん……

 でもさ、な??
すげえ母ちゃんと姉ちゃんだろ??

魔神みたいにおっかねえ母ちゃんと姉ちゃんだけど、俺はすっげえ大好きなんだ。

 大好きだしさ……

一生かかっても返せないくらいの恩義を感じているんだ。
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