アナグラムの勇者 ~異世界を書き換えるリライトスキル~

ぎゃもーい

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第一章 「魔物使いとアナグラム遊び」

#5 とりあえず街に行こう

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 いや、穴gとか意味が分からない。きっとちゃんとした意味があるはず。

 アナグラム。
 カタカナ5文字のこの単語。
 
 見覚えはある。聞いたこともある。
 思い出せ、俺の脳よ思い出せ。

 しばらくウンウンと俺は唸り続けたが、脳は一向に思い出してくれない。

「……駄目だ」

 穴gという謎の単語が強すぎて、それ以外の何かを想像することはできない。
 脳内は穴gに埋め尽くされ、混沌状態で収拾がつかない。
 
 果たして穴は何gなのか。そもそも穴に重量はあるのか。
 くぼみとかへこみなんだから重量以前の問題なのではないか。
 
 ……少し落ち着こう。俺は大きく息を吐いた。


【特殊スキル】 アナグラム……【アナグラムで遊べる】


 しばしぼんやりとステータスを眺めていたが、俺は始め見た時にも思った違和感を口にした。

「というかそもそも書き方がおかしいよな」

 そう、このステータス書き方がおかしいのだ。
 美弥のスキル説明文ならそこそこの意味は分かったが、この説明文は省略しすぎで意味が分からない。
 
 アナグラムを知ってて当然という体で書いているが、知らない人だっているんだ。もう少し丁寧に書いてくれてもいいじゃないか。それになんだ遊べるって。アナグラムって遊びなのか。

 また思考がごちゃごちゃになり、俺は頭を抱えた。
 一人では、一向に正解が出ない。そう思った俺は最後の手段に出た。

「美弥、一つ聞いていいか」

 トラッキーとじゃれていた美弥がその声でこちらを向いた。

「なんや~?」
「アナグラムって言葉の意味、知っているか?」
「アナグラム?」

 美弥は俺のステータス画面を見ながら、目をぱちくりさせた。

「穴のグラム数やないか? 何gかは分からへんけど」

 同じ思考回路だった。
 俺は自分自身が嫌になった。

「スマホがあればなぁ」

 ぽつりと呟いたその言葉。
 スマホがあれば検索で一発だ。アナグラムという言葉を検索すれば、一瞬で意味が分かる。

 ああスマホが恋しい。ああ文明社会が恋しい。
 そんな世界のことを懐かしむと、再びあのことが思い出された。

「みんな、どこにいるんやろな」

 美弥もまた同じことを思ったらしく、腕組みをしていた。
 他の奴らも今、こんな状況にいるのだろうか。

「人が沢山集まるところに行けば、何か分かるかもな」
「街とか村とかやね。近くにあるんかなぁ?」

 先ほど見回した通り、この辺りは木々に覆われて周りの状況が分からない。
 とりあえず適当に進んでみるかと俺が思った瞬間、美弥の声が聞こえた。

「トラッキー知ってるか~?」

 虎が知るはずないだろという俺の思考は、トラッキーが首を縦に振った瞬間消え失せた。

「案内してくれるって。彰いくで」
「……まじかよ」

 そういうと美弥はトラッキーの背中へと乗った。
 まるで白馬に乗るジョッキーみたいに。

 ……俺も乗りたい。

「俺も乗せてくれないか」
「聞いてみるわ」

 ポンポンとトラッキーを叩いて、いくつかの言葉を投げかける美弥だったが、やがて小さく首を振った。

「うーん、駄目みたいやね。ごめんな彰、ゆっくり歩くよう言うから後ろについてきてや」

 俺は渋々、トラッキーのケツを見ながら歩いた。
 道中、アナグラムのことを考えていたがやっぱり分からなかった。


 * * *


 しばらくすると、森を抜けることができた。
 森の中で弱そうなモンスターと出会ったが、トラッキーが威嚇しただけで逃げていった。
 
 やっぱりモンスターから見てもこいつは怖いのだろうか?
 そんなことを思いながら、景色を眺めていると、遠目に立派なお城が見えた。

「まるで中世ヨーロッパの景色だな」
「そうやね。とりあえずあそこに行こか」

 その城に広がっている建物群。城下町らしきそこへ俺たちは足を進めた。 

 1時間そこそこで、目的地である街へと着くことができた。
 街は活気に溢れていた。

 目に入る建物、建築物の材質は石か木。
 お決まりの中世ヨーロッパ風である。

「はへー凄いなぁ」

 で、これまたお約束なのが生物。
 見たところ元いた世界と変わらないような人型の生物がほとんどだ。
 
 しかし、耳や目が猫っぽい生物――いわゆる亜人と呼ばれる生物もそこそこに見かける。
 猫耳の美少女とかいう男のあこがれもついさっき見かけ、少しテンションが上がった。

「変なのいっぱいおるなぁ」

 もちろん、現実世界から来た俺たちにとって、それは凄くおかしな光景だった。
 まるでゲームのようなその光景に俺は圧倒されていたのだが……。

 ――彼らにとっては、俺らの方が"おかしい存在"らしかった。
 いや、正確には美弥とトラッキーがだが。

「すげぇなんだよあれ」「あんなモンスター初めて見た」「あんなモンスターを仕えさせるあの少女何もんだよ」「神だ……神の使いじゃ!」

 口々に美弥とトラッキーを称賛する声が聞こえる。
 その声が大きくなるにつれ、ますます視線も集まり、何だか凄く居心地が悪かった。

「彰~喉乾いたし、腹減ったわ~。どっかで飯にしようや~」

 そんな言葉や視線を浴びても、美弥はいつも通りだ。
 ある意味大物かもしれない。それかただの馬鹿なのか。俺は後者を押す。

「飯か」

 確かに腹は減った。考えてみれば、俺たちは異世界に来たから何も食べていない。
 腹ごしらえにはいい時間だなと思ったのもつかの間、俺はある大変なことに気付いてしまう。

 俺たちに、お金がないことに。
 
 ……どうしよう。
 そんな考えが浮かんだ瞬間――それは聞こえる。

「そこの獣をつれた女、止まれ!」

 凛とした鈴のような声が、街中の喧噪を切り裂いた。
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