アナグラムの勇者 ~異世界を書き換えるリライトスキル~

ぎゃもーい

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第二章 「神に愛されなかった者」

#19 3人のCランク冒険者

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 ナルバッツ平原の入り口。
 その地図に描かれた集合場所に着くと、低く強い声が届く。

「リンリンゴの依頼を受けてくれた冒険者か」

 声の主である、左目に黒い眼帯をしたその銀髪の男は、どこかの傭兵のような風貌だ。
 ギラギラとした片目でこちらを見据えながら、顎髭をさすっていた。
 
 俺は先の言葉を受け、頷いた。

「依頼を受けさせていただいた、アキラといいます」
「そうか、依頼を受けてくれてありがとう。俺はクラードだ。よろしくな」

 この人がミリアさんが言っていた依頼主のクラードか。
 クラードがこちらへと伸ばした手に、俺も手を伸ばし、握手で返す。

 ごつごつとしたその感触は、まさに歴戦の男の手だなという印象を受けた。
 握手を終えると、クラードは威厳を感じさせながらも、容姿に似合わない人のよさそうな笑顔を浮かべた。

「今日は初めての奴も多いから、詳しい説明は全員が集まってからにする。それまでは適当にその辺りにいてくれ」
「はい」

 俺はクラードのその言葉を受け、ぶらぶらと歩きながら、辺りを見回した。
 ミリアさんの話だと十数人との話だったが、20人以上はいるようだった。
 
 ここの世界のクラスのことはあまり詳しくないが、剣士、魔法使い、僧侶、狩人といった、
 またはそれに準じた風貌の冒険者がちらほらと見受けられる。

 ただ、人数がいることにはいるが、どこか殺伐とした雰囲気が漂うこの場所。
 とてもじゃないが和気あいあいとした感じではない。
 
 一応、同じ依頼を受けた同士ではあるが、
 報酬のことを考えるとやはりライバルという立場だからだろうか。
 
 ……と、
 そんなことを思っていた俺の耳へ、お構いなしにその声は届いた。

「お~、初めて見る顔だね!」

 健康そうな小麦色の肌が特徴的なその女性は俺に近づきながら、
 ニカッとした気持ちの良い笑顔を浮かべた。

「私はフィリー。よろしくね」

 防御を捨てて、俊敏性に特化したかのようなその服装は、
 どうやら盗賊やシーフといった感じだろうか。
 
 で、肌の露出が多いその服は、彼女のスタイルも良さを引き立たせ、たわわに育った小麦色の果実の谷間も見えるもんだから、こちらとしては衛生上良くない。
 とても良くない。

「ア、アキラです。よろしくお願いします」

 そんな邪な動揺を俺は必死に抑えながら、なんとか答える。

「固い固い。そこまで年も変わらないだろうしタメで。それにフィリーでいいよ」
「分かった……フィリー」

 少しばかりぎこちなかった声色だったが、フィリーはセミロングの明るい茶髪を揺らしながら、満足したように頷いた。
 
 こんな発育していて同じ年くらいなのかという驚きと共に、
 ミヤが凄くアレな気がした俺は、心の中で『ミヤ、ファイト』とエールを送った。

 そんなミヤを超越しているフィリーは小麦色の肌とは対照的な白い歯をのぞかせながら、
 こちらへと手の平を向けた。

「君も報酬目当てかな?」
「……まあそんな感じ」
「そりゃそうだよねぇ」

 ふふんと盗賊の風貌に似合ったその笑みを浮かべるフェリー。

「ただ依頼を受ける時にも聞かれたと思うけど、結構な実力者がいるからね。競争率は高いし、注意するに越したことはないよ」

 ミリアさんもそれは言っていた。
 報酬が報酬だから、やはり実力者も多いのだろう。

「最高でCランク冒険者がいるんだろ?」
「そう、今回は3人もいるね」

 そういうと、フィリーは視線を右へと向けた。

「まずはクラード。ここの依頼主だけど、報酬の内容的にも黄金リンゴを彼が手に入れても何の問題もないから一番のライバルは彼だね。傭兵上がりで多くの戦いを経験しているし、彼の熟練の剣技は強力だから、単純な戦闘能力ならここの誰よりも強いと思うよ」

 俺はその言葉を聞き、やっぱり傭兵だったんだと妙に合点がいった。

「で、あそこの苦虫をかみつぶしたような顔をしているオルソンってやつもCランク。私は大っ嫌いだけど、回復魔法や光魔法においてはこの現場で右に出る者はいないだろうね。私は大っ嫌いだけど」

 オルソンといわれたそいつはムン〇の叫びに出てくるような風貌の男で、
 今も何か「~教万歳、~様万歳」ぶつぶつ言っているし、怖い。
 
 フィリーが嫌いと言うのも分かる気がする。

「で、最後の一人は――」

 すぅと息を飲み込み、一瞬の間を空けながら、フィリーはその言葉を高らかに宣言した。

「天才シーフこと、この私! フィリーでーす!」

 人差し指を唇に当てながら、片目でウィンクする。
 身のこなしや周りの視線からうすうす気付いていたが、やはりその事実に少しばかり驚く。

「……凄いな。やっぱり強いのか?」
「ま、この中で一番強いのも多分、私だろうね」

 にやりと浮かべるその似つかわしくない笑みに、どこか強者の余裕といわれるものを感じる。
 そのやり取りに俺が呆気にとられたと思ったのか、フィリーはぶんぶんと手を上下に振った。

「まあまあ~そんな顔しないでさ。仲良くやろうよ」

 フィリーは今度は小さく顔の前で人差し指を振る。

「今回の依頼は宝物探しといった感じだからね。いくら強くても見つかれないかもしれないし、弱くても見つかるかもしれない。ま、ただ弱い人よりも強い人が見つけやすいのは間違いないけどね」

 私が一番の本命だからね、と付け加えフィリーは言葉を続ける。

「そういえば聞いてなかったけど、君は何ランク?」
「F」

 間髪入れずに答えたそれに、首を傾げるフィリー。
 彼女は反芻するようにその言葉をもう一度疑問形で投げかけた。

「F?」
「うん」

 何故か納得のいかない表情を浮かべるフィリーはこちらをまじまじと覗き込む。
 
 その視線と俺の視線が交差した瞬間、
 チカッ、と。
 彼女の目が一瞬光った気がした。

「「……え?」」

 その言葉は俺とフィリーが同時に発した感嘆詞。
 お互いが顔を見合わせる。

「今、目が光ったように見えたんだけど」

 その事象を言葉にして俺が投げかけるが、

「え、あ、そう? き、気のせいじゃないかな~」 

 フィリーは、それを否定した。
 
 見間違え? でも確かに光ったような?
 しかし、その後の考え込むかのような姿勢をするフィリーに、俺は追及の言葉を投げかけるタイミングが掴めない。
 
 するとしばらくして、今度は逆にフィリーがこちらへと言葉を投げかけた。

「――君、本当にFランク?」

 その疑問の言葉が投げかけられた瞬間、
 パンパンと、手の叩く音が辺りに響いた。

「みんな集まってくれ!! 今日の依頼内容の詳細を説明する!!」

 クラードが発したその言葉で、俺とフィリーの会話は中断された。
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