29 / 63
第二章 「神に愛されなかった者」
#28 ミヤと幼女エルフ
しおりを挟むフィリーなどの手助けで、俺とエルフ少女は宿へと戻ることができた。
『大変だと思うけど、頑張ってね。少しは手伝ってあげるから』
その言葉を最後にフィリーとも別れ、俺とエルフ少女と二人で宿の扉をくぐる。
相変わらずエルフ少女は一定の距離を保っているものの律儀にこちらの歩みについてきてくれた。
宿の亭主へと追加料金を払うと、俺はミヤの泊まっている部屋へと向かった。
ミヤの部屋の前。
トントンと、俺はミヤの部屋の扉をノックする。
「ミヤ、俺だ」
「――んぐ、アキラおかえひーな。あいほるで~」
扉を開けると、香ばしい肉の香り。
部屋の中には鳥の丸焼き数個、そして沢山の骨の山を築かれていた。
ミヤとトラッキーはおそらくホロホロ鳥であろうその丸焼きをむしゃむしゃと夢中で食べている。
無駄遣いしやがったな。
そう思いながら見ていると、ミヤは手羽先部分を頬張りながら言葉を続けた。
「んぐ、ごくん。ごにゃんのとおり、トラッキーも元気になったし、明日からはうちもいけ――」
俺の方向へ視線を移したミヤは、俺の後ろにいる少女を発見したらしく、一瞬硬直する。
頬張っていた肉がぽとりと落ち、瞼をぱちぱちさせた数秒後、俺に目を合わせると恐る恐るといった感じで小さく頷いた。
「……アキラ。アキラって元の世界で幼稚園児や小学生を見る目が優しかったり、色々と思い当たる節が結構うちの中ではあるからうすうす思ってたんやけど、実はロリコ――」
「違うわ!」
何故かロリコン扱いされそうになった。
そもそも色々と思い当たるって何だ。俺はどこでどう思われていたんだ。
「いや! でも! 言い逃れできん幼女が後ろにおるで! これはいかんで! 事件やで!」
ぎゃーぎゃーと騒ぎ出したミヤをなだめるのに、数分。
そして、簡単な事情を説明するのに、また数分。
無駄に疲れた説明が終わると、ミヤは渋々ながらも状況が理解したらしい。
「なるほどなぁ。ロリコンなアキラは可哀想になってその娘を助けたってことやな」
「ロリコン以外はまあ合っている」
俺たちと距離を取るためか、部屋の隅にいるそのエルフ少女を一瞥するミヤ。
エルフ少女はエルフ少女で、ミヤの揺れるツインテールとトラッキーが珍しいのか、その両方に絶えず視線を往復させていた。
「ほーん」
まだロリコン疑惑が消えないらしいミヤは流れる様にジト目を俺に向けるが、その視線はしばらくしてそのエルフ少女へとまた移った。
「……まあでも」
今度は少しばかり柔らかさを感じる視線をエルフ少女に向けたミヤは、最後にこう締めくくった。
「悪いことではないと思うで」
そのいつも通りの声色の言葉と優しいミヤの表情は、今日色々あって強張った俺の心を少しばかり弛緩させてくれた気がした。
その後しばらく興味深そうにエルフ少女を見ていたミヤだが、思い出した様に言葉を発する。
「この娘、名前はなんて言うん?」
その何気ない質問に、俺はこう答える。
「名前はないんだ」
ゆっくりとこちらに視線を向け、不思議そうな顔をするミヤ。
先の説明で詳しく説明しきれなかった【神に愛されなかった者】について、俺が知る限りの情報をミヤに伝える。
名前がないこと。言葉がないこと。不幸なこと。そして、異世界の人々に忌み嫌われていること。
全ての情報を伝えると、ミヤは小さく息を吐いた。
「見た感じうちらと変わらへんのやけどなぁ」
しゃべれないんかお前、とミヤは小さく声をかけた。
エルフの少女は自分に声かけられたのは分かったらしい。
が、これといった反応を示すわけでもなく、ただこちらをぼんやりと見るだけだった。
その様子を見て、ミヤは提案の言葉をあげる。
「うちらで名前をつけてあげるのはどうや?」
1
あなたにおすすめの小説
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!!
2巻2月9日電子版解禁です!!
紙は9日に配送開始、12日ごろに発売となります。
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる