花嫁は忘れたい

基本二度寝

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「想い人を忘れたい…?」

レイアはしっかりと頷いた。
ふむっと術師は考え込んだ。

レイアと術師の二人は暗幕の中で膝を突き合わせている。

「理由を聞いても…?」
「私、もうすぐ結婚するんです。だから」

「なるほどね。でも好いた奴を忘れるまでする必要あるかね?思い出として心に留めておけば良いのじゃないかい?」
「いえ…気持ちが溢れて…止まらくなりそうな予感があるのです」

「…よほど相手を愛してしまったのかい。難儀な事だ」
「…」

術師はフードを深く被り顔が見えない。
けれど、何故か少し笑っていたように感じた。

「人一人の記憶を消すのは難解なんだ。
そいつに関わった人々の情報もある。記憶の齟齬が発生するんだよ。まぁそんなことできるのは人並外れた術者か魔物か…」

レイアは落胆した。
希望を込めてここに来た。
家の問題もあり、結婚をとりやめることができない。

彼を忘れることができないなら、彼との想い出の場所で身を投げようかと暗い思考へ引きずられていると、術師に遮られた。

「勝手に落ち込まないでくれよ。人一人の記憶を消すのは難しいが、アンタの恋心を消すのは楽なんだよ。それじゃだめかい?」

「恋心…。彼を愛した気持ちを消すということですか?」

術師は頷いた。

この気持ちがなくなれば。

例え、結婚式の場に彼が現れ、レイアを連れ去ろうとしても拒絶できれば両家に迷惑をかけることはない。

今の気持ちのままでは、レイアは確実に想い人の手を取ってしまう。

「消してください。想いを。彼を愛した気持ちを全部」

術師は「いいよ」と笑った。

相変わらず顔が見えてないのに、笑っていたことはわかった。
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