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十一
「それでは、殿下」
「…あぁ」
第一王子の最後の側近が頭を下げる。
一貴族に下がる王子に側近は不要。
理解はしているが、信頼していた臣下たちがあっさり去られると王子も堪えた。
「最後に一つ聞きたい」
「なんでしょう」
「カブエラのことを知っていたか?」
「…はい。隣国の英雄の伴侶になったのですよね」
側近を含め、他の貴族もこの話が隣国から流れてきた時、第一王子の前では控えた。
カブエラの事になれば癇癪を起こす彼の耳に入れば、八つ当たりを食うと皆、知っていた。
だから、側近の誰もが知ってて口を噤んでいた。
そんなことをおくびにも出さず、側近はしれっと答えた。
報告が上がっていないと、怒り上げることを想定し、先手を打つ。
「英雄の結婚式は盛大で、我が国の日刊紙にも一面で出ておりました。国民の誰もが知っている事実なので、当然ご存知だと考えておりましたが、…なにか?」
プライドの高い第一王子が「知らなかった」とは言い返せず、「そうだな」としか答えなかった。
二年前のその時期は、国王と第二王子夫妻が隣国に渡っていたので留守を預かっていた。
第一王子はその結婚式には呼ばれなかった、いや、王が参加させなかったのかもしれない。
第二王子の妃とカブエラは昔から仲が良く、カブエラが隣国に渡った後もずっと交流していたらしい。
行方不明の娘を探していた公爵も、いつの間にか爵位を返上して、隣国の英雄が賜った領地で経営手腕を振るっているらしいと聞いた。
全部、最近知った。
自分はもっと視野が広い人間だったはずなのに。
少なくともカブエラが婚約者だった時はこんな事にはならなかった。
覚えの悪かったカブエラに何度も指示を出し、反論があれば詳細確認した後に、指示内容の変更を行っていた。
何度も繰り返すカブエラの反論に辟易していたが、その指摘は想定外のことばかりで…即答できないことも多々あった。
まさかな。
認めたくはない。
母上に覚えの良くない女だと散々愚痴を聞かされた。
妃教育を終えるのに十年掛かった女だ。
彼女が自分よりも優秀であるはずなどない。
気づきたくなどない。
王子は本当に覚えの悪い女を知った。
今日覚えたことは明日にはわすれるような女だ。
三年経っても貴族の教育も進んでいない女だ。
自分の隣に立って欲しいと望んだ女だった。
あの時。
カブエラが不貞の証拠を突きつけてきたあの時、リリーシュアを疑い、カブエラに味方すればこんな結果にはならなかったのだろうか。
いや、違う。
魔導令を発動してカブエラを王都から追放する烙印を押した時点で、この未来は決定づけていた。
誰のせいでもない。
自分で選んだ道なのだ。
いつの間にか最後の側近も消えていて、第一王子は一人になった。
「…あぁ」
第一王子の最後の側近が頭を下げる。
一貴族に下がる王子に側近は不要。
理解はしているが、信頼していた臣下たちがあっさり去られると王子も堪えた。
「最後に一つ聞きたい」
「なんでしょう」
「カブエラのことを知っていたか?」
「…はい。隣国の英雄の伴侶になったのですよね」
側近を含め、他の貴族もこの話が隣国から流れてきた時、第一王子の前では控えた。
カブエラの事になれば癇癪を起こす彼の耳に入れば、八つ当たりを食うと皆、知っていた。
だから、側近の誰もが知ってて口を噤んでいた。
そんなことをおくびにも出さず、側近はしれっと答えた。
報告が上がっていないと、怒り上げることを想定し、先手を打つ。
「英雄の結婚式は盛大で、我が国の日刊紙にも一面で出ておりました。国民の誰もが知っている事実なので、当然ご存知だと考えておりましたが、…なにか?」
プライドの高い第一王子が「知らなかった」とは言い返せず、「そうだな」としか答えなかった。
二年前のその時期は、国王と第二王子夫妻が隣国に渡っていたので留守を預かっていた。
第一王子はその結婚式には呼ばれなかった、いや、王が参加させなかったのかもしれない。
第二王子の妃とカブエラは昔から仲が良く、カブエラが隣国に渡った後もずっと交流していたらしい。
行方不明の娘を探していた公爵も、いつの間にか爵位を返上して、隣国の英雄が賜った領地で経営手腕を振るっているらしいと聞いた。
全部、最近知った。
自分はもっと視野が広い人間だったはずなのに。
少なくともカブエラが婚約者だった時はこんな事にはならなかった。
覚えの悪かったカブエラに何度も指示を出し、反論があれば詳細確認した後に、指示内容の変更を行っていた。
何度も繰り返すカブエラの反論に辟易していたが、その指摘は想定外のことばかりで…即答できないことも多々あった。
まさかな。
認めたくはない。
母上に覚えの良くない女だと散々愚痴を聞かされた。
妃教育を終えるのに十年掛かった女だ。
彼女が自分よりも優秀であるはずなどない。
気づきたくなどない。
王子は本当に覚えの悪い女を知った。
今日覚えたことは明日にはわすれるような女だ。
三年経っても貴族の教育も進んでいない女だ。
自分の隣に立って欲しいと望んだ女だった。
あの時。
カブエラが不貞の証拠を突きつけてきたあの時、リリーシュアを疑い、カブエラに味方すればこんな結果にはならなかったのだろうか。
いや、違う。
魔導令を発動してカブエラを王都から追放する烙印を押した時点で、この未来は決定づけていた。
誰のせいでもない。
自分で選んだ道なのだ。
いつの間にか最後の側近も消えていて、第一王子は一人になった。
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