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一
「…お断りします」
侯爵令嬢カサラバの答えはそれだった。
「…貴女何を言っているのかわかってるの?」
王妃は信じられないものを見るように、息子の婚約者の見る。
「…魔女様の説明を聞き理解しました。
寝たきりにはなっても、管を通して栄養を補給できるならば、問題はないかと思われます。病でもなく、感染もしない。殿下に解呪の必要はないかと判断いたしました」
「貴女はっ!リンドーグがこのままでも構わないというの!?」
「はい」
カサラバの答えに、王妃は音もなくそして、素早く彼女に近づいて頬を打った。
「未来の夫に対して、寝たきりを望むなんて、残酷な女ね」
「…殿下の未来の為にも。この選択が一番だと考えました」
「もう良い」
カサラバはホッと息をついた。
国王陛下なら理解してくれたのだと。
「王として命じる。侯爵家子女カサラバ。魔女に対価を払え」
え、と驚愕するカサラバに、口を挟んだのは魔女の方だった。
「強制されたものなど受け取れないよ。自ら差し出さないと意味がない。国王の性欲でも王妃の美欲でもいい。
その者自身が持つ一番大切なものを差し出せば良い」
国王も王妃も黙った。
魔女は王からは女を、妃からは美を差し出せという。
子供のために、次代の王のために、彼らがそれを差し出せば…。
目線を合わせた夫婦は、一目で通じ合う。
「我らがそれを失うわけにはいかない」
性欲がなければ、二子三子も望めない。
美しい妻でなければ、公務もこなせぬ妃に価値はない。
「…カサラバ。お前が対価を差し出さぬというのなら、お前の一族を一人ずつ屠る」
国王の脅し。
強くあれと教えを受けた妃教育を修了済のカサラバでも、手が震えた。
カサラバには、それでもと拒否できる程の強い意志は持てなかった。
家族の命を天秤にかけさせられ、自らの心を差し出すと決めた。
「…魔女様…私が対価をお支払します」
脅しは頂けないが、本人がそう言うのであれば魔女も受け入らざるを得ない。
気の毒だと言わんばかりの顔をする魔女に、カサラバは小さく首を振って力なく笑う。
魔女はカサラバの旨の前に手を翳し、ゆっくり彼女から対価を取り出した。
柔らかくあたたかい彼女の心を、魔女は手の中に感じたのだった。
侯爵令嬢カサラバの答えはそれだった。
「…貴女何を言っているのかわかってるの?」
王妃は信じられないものを見るように、息子の婚約者の見る。
「…魔女様の説明を聞き理解しました。
寝たきりにはなっても、管を通して栄養を補給できるならば、問題はないかと思われます。病でもなく、感染もしない。殿下に解呪の必要はないかと判断いたしました」
「貴女はっ!リンドーグがこのままでも構わないというの!?」
「はい」
カサラバの答えに、王妃は音もなくそして、素早く彼女に近づいて頬を打った。
「未来の夫に対して、寝たきりを望むなんて、残酷な女ね」
「…殿下の未来の為にも。この選択が一番だと考えました」
「もう良い」
カサラバはホッと息をついた。
国王陛下なら理解してくれたのだと。
「王として命じる。侯爵家子女カサラバ。魔女に対価を払え」
え、と驚愕するカサラバに、口を挟んだのは魔女の方だった。
「強制されたものなど受け取れないよ。自ら差し出さないと意味がない。国王の性欲でも王妃の美欲でもいい。
その者自身が持つ一番大切なものを差し出せば良い」
国王も王妃も黙った。
魔女は王からは女を、妃からは美を差し出せという。
子供のために、次代の王のために、彼らがそれを差し出せば…。
目線を合わせた夫婦は、一目で通じ合う。
「我らがそれを失うわけにはいかない」
性欲がなければ、二子三子も望めない。
美しい妻でなければ、公務もこなせぬ妃に価値はない。
「…カサラバ。お前が対価を差し出さぬというのなら、お前の一族を一人ずつ屠る」
国王の脅し。
強くあれと教えを受けた妃教育を修了済のカサラバでも、手が震えた。
カサラバには、それでもと拒否できる程の強い意志は持てなかった。
家族の命を天秤にかけさせられ、自らの心を差し出すと決めた。
「…魔女様…私が対価をお支払します」
脅しは頂けないが、本人がそう言うのであれば魔女も受け入らざるを得ない。
気の毒だと言わんばかりの顔をする魔女に、カサラバは小さく首を振って力なく笑う。
魔女はカサラバの旨の前に手を翳し、ゆっくり彼女から対価を取り出した。
柔らかくあたたかい彼女の心を、魔女は手の中に感じたのだった。
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