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ニ
「で、そこ迄して私を夜会に出席させたくないのね」
「言いがかりです。ベスフィエラ様、王妃様が用意したドレスは此方にあるではないですか。…見えませんか?」
ベスフィエラについている侍女が、何もかけていないハンガーを指差して、笑みを見せる。
祖国から輿入れの際付いてきた侍女も護衛も勝手に返され、代わりにこの国の従者をつけられた。
その結果、嫌がらせを毎日受けていたのだけれど、今日ほど頭にきたこともない。
ドレスを用意していないということは、夜会に出席させるつもりがないのだ。
各国の要人が出席する夜会に王太子の婚約者を出さないなど失礼にも程があった。
どうせ、あの王妃か王太子は「わがままな婚約者」とベスフィエラの事を悪評を広めるつもりなのだろう。
この国にベスフィエラの味方は居ない。
だからこそ、他国の人間が居るこの日こそチャンスなのだ。
「ええ。私には見えないわ。自前の物を着るから用意して」
ベスフィエラの言葉に侍女は首を振った。
「いいえ。ベスフィエラさまのドレスはいずれもご出身国のデザインです。わが国の王太子の婚約者なのですから、こちらのドレスでなければ夜会への出席は認められません」
まともな事を言いながら、理不尽な要求をする。
ドレスは一人では着脱できない。
たとえ自前のドレスがあっても、侍女の協力なしでは着付けができない。
ベスフィエラは、顎に手をやり考えた。
夜会には出席する。何がなんでも。
しかし、ドレスがない。
ふと、目の前の姿見が目に入る。
着替えるために、下着姿になっている己。
この国の下着は、胸の部分に長布を巻きつけ、真ん中でリボン結びをしている。
下履きは一部丈のスカッツのようなものだった。
どちらもサテン生地に刺繍とレースをあしらい、比較的デザイン性のあるものだった。
そんな自分の姿を写した鏡を見て、あぁと思い立つ。
「そう。わかったわ。ならばそのドレスを着せなさい」
「…は?」
侍女は間抜けな声を上げた。
「なぁに?私には見えないけれど、貴方には見えるのでしょう?ならば早く着せてみなさい。…それとも出来ないのかしら?侍女の癖に」
今まで控えめで優しく大人しかった王女の反抗的な反応に、目を点にさせた侍女は、真っ赤になって、ハンガーからドレスを取るふりをした。
無いドレスを、着付けると言う滑稽な動作をニヤついて眺めている。
「あら?袖は通してないけれど、このドレスは袖なしなの?」
「っ…そうです!」
自分でも間抜けなことをしている自覚はあるのだろう。
まさか、ドレスを気付けろなんて言われると思っていなかったようで、屈辱的に顔を真っ赤にして、拙いパントマイムをしている。
「このドレスはこの国のものなのでしょう?生地は?染色は?デザイナーは?」
ベスフィエラは矢継ぎ早に質問を投げた。
自分の身に付ける衣装の知識は必要なもの。
夜会での話題にもなるのでよくある質問だった。
けれど、侍女は言葉に詰まる。
咄嗟に何も出てこないのだろう。
「何も知らないのね。王太子妃の侍女になるにはまだまだ未熟ね。
…それとも、この国の王族の従者のレベルってこの程度なのかしら…?」
「っ!」
ベスフィエラの煽りに、侍女は眉を釣り上げ、怒りで目を真っ赤にした。
何か、返したくて仕方がないのだろう。
侍女は、思いついたように「髪型をセットします」と言って、ベスフィエラを椅子に誘導した。
「言いがかりです。ベスフィエラ様、王妃様が用意したドレスは此方にあるではないですか。…見えませんか?」
ベスフィエラについている侍女が、何もかけていないハンガーを指差して、笑みを見せる。
祖国から輿入れの際付いてきた侍女も護衛も勝手に返され、代わりにこの国の従者をつけられた。
その結果、嫌がらせを毎日受けていたのだけれど、今日ほど頭にきたこともない。
ドレスを用意していないということは、夜会に出席させるつもりがないのだ。
各国の要人が出席する夜会に王太子の婚約者を出さないなど失礼にも程があった。
どうせ、あの王妃か王太子は「わがままな婚約者」とベスフィエラの事を悪評を広めるつもりなのだろう。
この国にベスフィエラの味方は居ない。
だからこそ、他国の人間が居るこの日こそチャンスなのだ。
「ええ。私には見えないわ。自前の物を着るから用意して」
ベスフィエラの言葉に侍女は首を振った。
「いいえ。ベスフィエラさまのドレスはいずれもご出身国のデザインです。わが国の王太子の婚約者なのですから、こちらのドレスでなければ夜会への出席は認められません」
まともな事を言いながら、理不尽な要求をする。
ドレスは一人では着脱できない。
たとえ自前のドレスがあっても、侍女の協力なしでは着付けができない。
ベスフィエラは、顎に手をやり考えた。
夜会には出席する。何がなんでも。
しかし、ドレスがない。
ふと、目の前の姿見が目に入る。
着替えるために、下着姿になっている己。
この国の下着は、胸の部分に長布を巻きつけ、真ん中でリボン結びをしている。
下履きは一部丈のスカッツのようなものだった。
どちらもサテン生地に刺繍とレースをあしらい、比較的デザイン性のあるものだった。
そんな自分の姿を写した鏡を見て、あぁと思い立つ。
「そう。わかったわ。ならばそのドレスを着せなさい」
「…は?」
侍女は間抜けな声を上げた。
「なぁに?私には見えないけれど、貴方には見えるのでしょう?ならば早く着せてみなさい。…それとも出来ないのかしら?侍女の癖に」
今まで控えめで優しく大人しかった王女の反抗的な反応に、目を点にさせた侍女は、真っ赤になって、ハンガーからドレスを取るふりをした。
無いドレスを、着付けると言う滑稽な動作をニヤついて眺めている。
「あら?袖は通してないけれど、このドレスは袖なしなの?」
「っ…そうです!」
自分でも間抜けなことをしている自覚はあるのだろう。
まさか、ドレスを気付けろなんて言われると思っていなかったようで、屈辱的に顔を真っ赤にして、拙いパントマイムをしている。
「このドレスはこの国のものなのでしょう?生地は?染色は?デザイナーは?」
ベスフィエラは矢継ぎ早に質問を投げた。
自分の身に付ける衣装の知識は必要なもの。
夜会での話題にもなるのでよくある質問だった。
けれど、侍女は言葉に詰まる。
咄嗟に何も出てこないのだろう。
「何も知らないのね。王太子妃の侍女になるにはまだまだ未熟ね。
…それとも、この国の王族の従者のレベルってこの程度なのかしら…?」
「っ!」
ベスフィエラの煽りに、侍女は眉を釣り上げ、怒りで目を真っ赤にした。
何か、返したくて仕方がないのだろう。
侍女は、思いついたように「髪型をセットします」と言って、ベスフィエラを椅子に誘導した。
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