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二
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主の王太子はおかしな顔をしていた。
「どうかなさいましたか」
「イグナーツ…本気か?」
王太子殿下の手にあるのは、イグナーツとエレアーナの結婚式の招待状だ。
イグナーツはエレアーナからの求婚の翌日には、婚約を成立させ、前日にエレアーナから聞いた内容を考慮し、今後の予定を計画立て公爵相手に提案した。
最短期間。
半年で婚姻を果たす。
互いを知る時期は不要。
これ迄に王太子を挟んで関わりはあった。
互いの感情など政略結婚には必要ないと言い切って、イグナーツはこの婚約の利点を説明した。
公爵も、悪くはないと、この婚約を認めてくれた。
エレアーナの父親の公爵は、王太子に婚約破棄された傷物令嬢を好んで引き受ける奇特な子息はいないだろうと考えていた節があった。
「ええ。本気ですよ」
「あの女だぞ?私の最愛のリリィに嫌がらせをした」
「ええ。貴方の最愛の男爵令嬢には近づけませんので、ご安心を」
「そうではなくてな、!」
王太子は言葉を続けようとして止めた。
あまりに感情的になりすぎていると自覚して、息を吐いた。
「実際の所、彼女を得るのは悪くないかと」
「…なんだと?」
王太子はギロリとイグナーツ睨む。
「殿下の最愛に対する態度はこの際棚上げして、夫人としての能力と、公爵家という後ろ盾は魅力的ですから」
「……」
それを言われてしまえば、王太子も反論はできない。
教育係からのエレアーナの評価は高かった。
どうして手放したのかと、影で囁かれている事は知っている。
「それに、婚約破棄を理由に殿下から弟王子へ派閥を変えられた場合、貴族の勢力図がかわりますので」
「…っ!」
公爵家が動けば、それに追従する貴族も多い。
そんな事まで気が回らなかったのは、実に王太子らしい。
「…私の為か。すまない。面倒をお前に押し付けた形になってしまって」
「いいえ、お気になさらず。それよりも」
イグナーツは彼女がまだ王太子を愛していること、それを懸念していた。
「婚約期間の間は、義務として彼女を連れて夜会に参加することもありますが、婚姻を成したあとは好きにはさせませんので、今しばらく、いや、あと半年の間は辛抱してください」
「…悪いな。イグナーツ」
イグナーツは首を横に振る。
王太子が申し訳なくなる必要はない。
エレアーナを妻にするのに、イグナーツには都合が良かったからそうしただけなのだ。
「上手くやりやがったな」
王太子の執務室から退室した所で、騎士団長の子息で共に殿下の側近を務めているライヘンルートに吐き捨てられた。
「殿下に捨てられたあの女に恩を着せて嫁にもらってやるつもりだったのによ」
令嬢を只の性欲の処理対象としかみていないこの男が、妻を持つなどと考えるとは思っていなくて、僅かに目を開いた。
「一年、いや半年は外聞を気にして新たな婚約者は決めないと思っていたのにな。お前がそんなに手が早いとは思わなかった」
彼のそんな思惑など知りもしなかったのだから、当たられるのはお門違いなのだが。
「派閥がどうのなんて言い訳して、お前もあの女の身体が目的なんだろう?良い乳してたからな」
言われっぱなしもどうかと思い、反論し掛けてやめた。
あまりにも低俗な相手の物言いに反論は意味がない。
ただ、
もしかしたら…。
イグナーツがエレアーナの求婚を受けなければ、ライヘンルートがその相手に選ばれていたかもしれない。
エレアーナの目的は、王太子殿下を近く見つめられる立場なのだから。
イグナーツよりも、少し背が高く立派な体躯を持つライヘンルート。
彼の隣に立つエレアーナを勝手に想像して…嫌な気分になった。
「どうかなさいましたか」
「イグナーツ…本気か?」
王太子殿下の手にあるのは、イグナーツとエレアーナの結婚式の招待状だ。
イグナーツはエレアーナからの求婚の翌日には、婚約を成立させ、前日にエレアーナから聞いた内容を考慮し、今後の予定を計画立て公爵相手に提案した。
最短期間。
半年で婚姻を果たす。
互いを知る時期は不要。
これ迄に王太子を挟んで関わりはあった。
互いの感情など政略結婚には必要ないと言い切って、イグナーツはこの婚約の利点を説明した。
公爵も、悪くはないと、この婚約を認めてくれた。
エレアーナの父親の公爵は、王太子に婚約破棄された傷物令嬢を好んで引き受ける奇特な子息はいないだろうと考えていた節があった。
「ええ。本気ですよ」
「あの女だぞ?私の最愛のリリィに嫌がらせをした」
「ええ。貴方の最愛の男爵令嬢には近づけませんので、ご安心を」
「そうではなくてな、!」
王太子は言葉を続けようとして止めた。
あまりに感情的になりすぎていると自覚して、息を吐いた。
「実際の所、彼女を得るのは悪くないかと」
「…なんだと?」
王太子はギロリとイグナーツ睨む。
「殿下の最愛に対する態度はこの際棚上げして、夫人としての能力と、公爵家という後ろ盾は魅力的ですから」
「……」
それを言われてしまえば、王太子も反論はできない。
教育係からのエレアーナの評価は高かった。
どうして手放したのかと、影で囁かれている事は知っている。
「それに、婚約破棄を理由に殿下から弟王子へ派閥を変えられた場合、貴族の勢力図がかわりますので」
「…っ!」
公爵家が動けば、それに追従する貴族も多い。
そんな事まで気が回らなかったのは、実に王太子らしい。
「…私の為か。すまない。面倒をお前に押し付けた形になってしまって」
「いいえ、お気になさらず。それよりも」
イグナーツは彼女がまだ王太子を愛していること、それを懸念していた。
「婚約期間の間は、義務として彼女を連れて夜会に参加することもありますが、婚姻を成したあとは好きにはさせませんので、今しばらく、いや、あと半年の間は辛抱してください」
「…悪いな。イグナーツ」
イグナーツは首を横に振る。
王太子が申し訳なくなる必要はない。
エレアーナを妻にするのに、イグナーツには都合が良かったからそうしただけなのだ。
「上手くやりやがったな」
王太子の執務室から退室した所で、騎士団長の子息で共に殿下の側近を務めているライヘンルートに吐き捨てられた。
「殿下に捨てられたあの女に恩を着せて嫁にもらってやるつもりだったのによ」
令嬢を只の性欲の処理対象としかみていないこの男が、妻を持つなどと考えるとは思っていなくて、僅かに目を開いた。
「一年、いや半年は外聞を気にして新たな婚約者は決めないと思っていたのにな。お前がそんなに手が早いとは思わなかった」
彼のそんな思惑など知りもしなかったのだから、当たられるのはお門違いなのだが。
「派閥がどうのなんて言い訳して、お前もあの女の身体が目的なんだろう?良い乳してたからな」
言われっぱなしもどうかと思い、反論し掛けてやめた。
あまりにも低俗な相手の物言いに反論は意味がない。
ただ、
もしかしたら…。
イグナーツがエレアーナの求婚を受けなければ、ライヘンルートがその相手に選ばれていたかもしれない。
エレアーナの目的は、王太子殿下を近く見つめられる立場なのだから。
イグナーツよりも、少し背が高く立派な体躯を持つライヘンルート。
彼の隣に立つエレアーナを勝手に想像して…嫌な気分になった。
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