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三 ※エロほのめかし
「…なんで、こうなってるのかしら…」
結婚式を無事に終え、初夜を越えたその翌朝。
…いやもう、日は沈みかけているので夕刻、になる。
エレアーナは寝台から動かずにこの日を過ごした。
イグナーツの屋敷(彼は自力で叙爵を賜り、伯爵家当主となっている)にいる使用人の質は高い。
王城にいた使用人を引き抜いたのかと思えば、孤児などの平民や、下位貴族の子女だと聞いて驚いた。
随分教育が行き届いている。
その使用人の一人に、『イグナーツ様は殆どお屋敷に戻られないので、やりがいがなかったのですが、奥様が嫁がれてきて使用人一同張り切っております』
と熱弁された。
エレアーナの実家のよりも居心地良く、甘やかされている。
寝台で身を清められ、食事も運び込まれ、退屈はないかと書物や裁縫の道具も与えられる。
この環境では駄目な人間になり果ててしまう予感がした。
「いや、そんな事よりも…話が違うわ…」
エレアーナの足の間には違和感を残し、鈍く痛む下腹部を撫でた。
「…お戻りになったの?」
日はすっかり落ちて、エレアーナは夜着姿で書物を読んでいた。
もちろん、寝台の上で。
「ああ、たったいま今。なにか問題がありましたか?」
軽いノックの後、返事を待たずに部屋に入ってきたイグナーツは業務の連絡事項の確認のようにエレアーナに問う。
「大ありですわ。旦那様」
「なにか?」
真剣な眼差しを向けられるのだが。
「話が違うではありませんか!『子供はつくらない』のではなかったのですか!」
エレアーナが今日一日寝台から動けなかった理由がそれだった。
昨晩の最中に、体力の限界で意識を失った。
目覚めてすぐにでも、イグナーツに文句の一つでも言うつもりだったのだが、夫となった男はすでに登城した後だと聞いて行場の無い憤りを抱えて半日を過ごした。
イグナーツは首かしげ「その通りですが」と不思議そうな顔をする。
「な!ならば、なぜ昨夜は…」
夜のことを思い出して、エレアーナの語気が弱くなる。
エレアーナはこの屋敷の使用人に甘やかされているが、その主人も負けず劣らずエレアーナを甘やかした。
エレアーナの頬が染まる。
「『子供はつくらない』と確かに言いましたが、『性交渉をしない』とは言ってませんが…」
「…はい?」
イグナーツは、エレアーナの寝台に腰掛けて目線を合わせた。
「で、ですが、閨は…子ができる可能性が」
イグナーツは首を振った。
「私が避妊薬を飲んでいますので、その心配は不要です」
夫の突然の告白に、新妻は目を丸くした。
結婚式を無事に終え、初夜を越えたその翌朝。
…いやもう、日は沈みかけているので夕刻、になる。
エレアーナは寝台から動かずにこの日を過ごした。
イグナーツの屋敷(彼は自力で叙爵を賜り、伯爵家当主となっている)にいる使用人の質は高い。
王城にいた使用人を引き抜いたのかと思えば、孤児などの平民や、下位貴族の子女だと聞いて驚いた。
随分教育が行き届いている。
その使用人の一人に、『イグナーツ様は殆どお屋敷に戻られないので、やりがいがなかったのですが、奥様が嫁がれてきて使用人一同張り切っております』
と熱弁された。
エレアーナの実家のよりも居心地良く、甘やかされている。
寝台で身を清められ、食事も運び込まれ、退屈はないかと書物や裁縫の道具も与えられる。
この環境では駄目な人間になり果ててしまう予感がした。
「いや、そんな事よりも…話が違うわ…」
エレアーナの足の間には違和感を残し、鈍く痛む下腹部を撫でた。
「…お戻りになったの?」
日はすっかり落ちて、エレアーナは夜着姿で書物を読んでいた。
もちろん、寝台の上で。
「ああ、たったいま今。なにか問題がありましたか?」
軽いノックの後、返事を待たずに部屋に入ってきたイグナーツは業務の連絡事項の確認のようにエレアーナに問う。
「大ありですわ。旦那様」
「なにか?」
真剣な眼差しを向けられるのだが。
「話が違うではありませんか!『子供はつくらない』のではなかったのですか!」
エレアーナが今日一日寝台から動けなかった理由がそれだった。
昨晩の最中に、体力の限界で意識を失った。
目覚めてすぐにでも、イグナーツに文句の一つでも言うつもりだったのだが、夫となった男はすでに登城した後だと聞いて行場の無い憤りを抱えて半日を過ごした。
イグナーツは首かしげ「その通りですが」と不思議そうな顔をする。
「な!ならば、なぜ昨夜は…」
夜のことを思い出して、エレアーナの語気が弱くなる。
エレアーナはこの屋敷の使用人に甘やかされているが、その主人も負けず劣らずエレアーナを甘やかした。
エレアーナの頬が染まる。
「『子供はつくらない』と確かに言いましたが、『性交渉をしない』とは言ってませんが…」
「…はい?」
イグナーツは、エレアーナの寝台に腰掛けて目線を合わせた。
「で、ですが、閨は…子ができる可能性が」
イグナーツは首を振った。
「私が避妊薬を飲んでいますので、その心配は不要です」
夫の突然の告白に、新妻は目を丸くした。
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