両親は妹だけを可愛がる。

基本二度寝

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エクシルは想い合っていたはずの婚約者に捨てられ、ぼんやりしていた。
恋人を捨ててまで選ばれることはあっても、自分が捨てられたことは初めてだった。
捨てられることになれていないエクシルは、今まで愛情を注いでくれていた両親に救いを求めた。

「お母様っ」

女神が瞳に涙を浮かべる。
今まではそれだけで男は簡単に寄って来た。
両親だって例に違わず、大げさに心配して慰めた。
エクシルの望むものを与え、惜しみない愛情を与えてきたのに、母は愛娘の悲痛な声にも反応を示さなかった。

エクシルは母の側へ行き、間近で母を見つめた。

「お母さ」
「い、やぁあああっ!旦那様っ助けてっっ旦那様っ」

父はその叫びに反応して、すぐに母をエクシルから引き剥がし震える身体を抱きしめた。

「…大丈夫だ、ここにいる。私はここに」
「あぁ、旦那様っ旦那様」

「お、母様…?」

子供のように震える母は父にしがみついて泣いている。
父は落ち着かせようと、母の背を撫でた。

「…今、思い出しました。なぜ、今まで忘れていたのか。
エリエルを産んで一年ほど経った頃、妻はこのように取り乱すことが度々ありました」

普段母は夫のことを「あなた」と呼んでいる。
「旦那様」と呼んでいたのは、エクシルが生まれる前までだった。

「医者にも診せました。精神的なものだろうと。育児ノイローゼだと、診断されたのですが、」

「…そうだな。それはきっと誤っている」

国王陛下は目を伏せた。
母は目線を彷徨わせて、エクシルを見つけると悲鳴を上げた。

「違うっお前は私の、旦那様じゃないっ、私の、私の旦那様はっ」

父は母を胸に抱き込んで視界を塞いだ。

「私はここにいる。安心しなさい。君の夫は私だけだ」

父は慣れたように母を宥めていた。
恐らく過去に同じように慰めていたのだろう。
母の背を繰り返し撫で、優しく語りかけていた。

「伯爵よ。こう言ってはなんだが、誰か縁者にあとを任せ領地で夫人と過ごした方が良いのではないか…恐らく、私の話を切っ掛けにとそこの娘の顔が引き金に、何か思い出しかけているのかもしれん」

「…そうですね。その方が良いかもしれません」


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