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十三 エクシル
エクシルは自分を甘やかす父も母も婚約者も愛していた。
父と母によく似ていた姉の事は正直憎々しかった。
エリエルは二人の特徴を受け継ぎ且つ、色まで持っていた。
エクシルはかろうじて髪色だけ母と同じ色だった。
姉は二人のものをいっぱい持っているのだから、両親の愛情位は独り占めしても良かったのではないかと今でも思う。
私は悪くない、と。
馬車に揺られ辿り着いたフィロリネート領にある侯爵家の屋敷はそれなりのものだった。
種馬の為に方々への謝罪や慰謝料の支払いで王都の屋敷を手放したようだが、それでも侯爵家の財に傾きはなかったのは、現当主の手腕の賜物だと聞いた。
「ようこそ。…っ!素晴らしい。君がエクシル嬢、だね。君の父から聞いているよ。ああ、養父の方ね」
わざわざ出迎えてくれたフィロリネート候爵当主は、種馬と呼ばれた男の兄だった。
初対面でエクシルの容姿を褒め称え、気分は少し上向いた。
父より年上の優しそうな渋みあるおじ様だった。
若い頃はさぞもてたに違いない。
しかし、あの一件で現当主の婚姻は流れた。
元凶もその兄も、令嬢たちに避けられるようになり、二人して未だ未婚のままのようだ。
「…本当に、似ている」
誰に、など聞かずにもわかる。
陛下にも言われた。
曖昧に笑うエクシルに気づいた侯爵は立ち話を謝罪してすぐ屋敷の中に招いてくれた。
応接室に促されると、もう一人の男性がいた。
「ん?…君は?」
男が此方に振り向くと、自分と同じ顔がそこにあった。
髪色こそ違うがそれ以外はまるで鏡を見ているようだった。
多少歳を重ねている感はあるが、それでもよく似ていた。
…あぁ。コイツが。
ここに来るまでは、私は伯爵家の娘だと根拠なく信じていた。
皆、勘違いをしているのだと。
けれど、実物を目の当たりにして確信した。
私の生物上の父はこの男であると。
「へぇ、悪くないじゃないか。俺の遺伝子をちゃんと受け継いでいる」
「ああ。今までで一番だ」
「兄貴!俺良い仕事しただろ?」
「褒めてやる」
エクシルを挟んで見えない話をしている。
この人たちはなんの話をしているのだろうか。
なんとなく、あまり良い気分はしなかった。
「あの…」
「なんだい?」
先程の会話の雰囲気を壊すように侯爵当主が優しく微笑む。
「…私の婚約者を探してもらえると聞いて来たのですが」
「ああ、それね。もちろん。先程初めて君と出会って決めたよ」
当主は、エクシルの頬を撫でる。
あまりに自然な動作でエクシルは反応できなかった。
「私の妻になってもらうよ」
父と母によく似ていた姉の事は正直憎々しかった。
エリエルは二人の特徴を受け継ぎ且つ、色まで持っていた。
エクシルはかろうじて髪色だけ母と同じ色だった。
姉は二人のものをいっぱい持っているのだから、両親の愛情位は独り占めしても良かったのではないかと今でも思う。
私は悪くない、と。
馬車に揺られ辿り着いたフィロリネート領にある侯爵家の屋敷はそれなりのものだった。
種馬の為に方々への謝罪や慰謝料の支払いで王都の屋敷を手放したようだが、それでも侯爵家の財に傾きはなかったのは、現当主の手腕の賜物だと聞いた。
「ようこそ。…っ!素晴らしい。君がエクシル嬢、だね。君の父から聞いているよ。ああ、養父の方ね」
わざわざ出迎えてくれたフィロリネート候爵当主は、種馬と呼ばれた男の兄だった。
初対面でエクシルの容姿を褒め称え、気分は少し上向いた。
父より年上の優しそうな渋みあるおじ様だった。
若い頃はさぞもてたに違いない。
しかし、あの一件で現当主の婚姻は流れた。
元凶もその兄も、令嬢たちに避けられるようになり、二人して未だ未婚のままのようだ。
「…本当に、似ている」
誰に、など聞かずにもわかる。
陛下にも言われた。
曖昧に笑うエクシルに気づいた侯爵は立ち話を謝罪してすぐ屋敷の中に招いてくれた。
応接室に促されると、もう一人の男性がいた。
「ん?…君は?」
男が此方に振り向くと、自分と同じ顔がそこにあった。
髪色こそ違うがそれ以外はまるで鏡を見ているようだった。
多少歳を重ねている感はあるが、それでもよく似ていた。
…あぁ。コイツが。
ここに来るまでは、私は伯爵家の娘だと根拠なく信じていた。
皆、勘違いをしているのだと。
けれど、実物を目の当たりにして確信した。
私の生物上の父はこの男であると。
「へぇ、悪くないじゃないか。俺の遺伝子をちゃんと受け継いでいる」
「ああ。今までで一番だ」
「兄貴!俺良い仕事しただろ?」
「褒めてやる」
エクシルを挟んで見えない話をしている。
この人たちはなんの話をしているのだろうか。
なんとなく、あまり良い気分はしなかった。
「あの…」
「なんだい?」
先程の会話の雰囲気を壊すように侯爵当主が優しく微笑む。
「…私の婚約者を探してもらえると聞いて来たのですが」
「ああ、それね。もちろん。先程初めて君と出会って決めたよ」
当主は、エクシルの頬を撫でる。
あまりに自然な動作でエクシルは反応できなかった。
「私の妻になってもらうよ」
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