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十七 結婚後五月 ? 下衆回
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「本当にいいのかい?執事さんよ」
執事は招き入れた男の変装を解かせた。
使用人の采配は総て家令に一任されている。
出入りの人間は漏れ無く調べられている。
主からの不審人物の問い合わせに答えているのが家令だから、家令が問題なしと伝えれば、それはもう不審者ではなくなるのだ。
使用人の仮採用という体で一人の男を招き入れた。
今夜一晩だけの採用だ。
使用人や護衛の誰かを使うか悩み、事が済んでからその者の奥様への挙動が不審になれば事が公になるやもしれぬと恐れ、家令は人を雇うとこにした。
「ええ。構いません。この家を守るために必要なのです」
「嫁いできた奥様が『純潔証明』を請求するなんてなぁ。離縁する気まんまんじゃねぇか」
くくく、と忍び笑う下品な男は、廃れた酒場にいたところを家令が顔を隠して声をかけた。
報酬と条件を出すと、簡単に男は飛びついてきた。
「…白い結婚など認めさせるわけには参りません」
月に二度、神父が訪れる度に奥様は『純潔証明』を発行させていた。
その行為はまるで家令を挑発し、主を貶しているように見えたのだ。
それに、家令は主からの「クエッカを家にとどめておくように」指示を受けている。
何度も主には屋敷に戻るように働きかけたが、「忙しい」とこの三ヶ月ほどは一度も戻られていない。
三年も純潔を守り『白い結婚』で離縁など、させるわけにはいかないのだ。
代々この家に仕えてきた家令の意地でもあった。
「確認するぞ。仕事は、『奥様の純潔奪う』、でよかったんだな?」
「ええ」
「俺は楽しんでもいいんだよな?」
「…お好きにどうぞ。身体に傷をつけられると旦那様に気づかれる恐れがあるので怪我等は避けてくだされば結構です」
「よっしゃ!言質とったかんな」
ご機嫌な男を家令は冷めた目で見る。
主にとっては想い人かもしれないが、貴族夫人でありながら、わざわざ庭での作業に明け暮れている女。
いくら花が好きとはいえあまりに、不相応だ。
暇だというので、裁縫や読書や楽器を勧めても興味を示さなかった。
夫人の仕事を与えなくていいと主が言うならば従う他ない。
主の望むようにのびのびと生活している。
それのなにが気に入らないのか!
純潔証明だと!白い結婚だと!離縁だと!
そんなもの認めない!!
「あと、執事さんよ。避妊具なんか用意してないぞ」
「構いません」
「えっ?腹が膨れてもいいってのか?」
男は思いの外紳士だなと家令は思う。
いや、紳士はこんな依頼を受けはしない。
「今夜の奥様の食事に避妊薬を混ぜてあるので。どれだけ…為さっても構いませんよ」
家令は笑った。
これは罰だ。家令をあざ笑う女への。
「へぇそれはそれは。周到なことで」
「どれだけ声を出させても構いません。元々そういう為の部屋なので。どれだけ泣いて叫んでも誰にもその声は届きません。…人払いもしていますしね」
夫婦の寝室。
彼女の純潔を奪うのが夫ではないけれど。
下品な男は更に下品に笑う。
「ああ、ただ一つ。情交の痕跡は一目でわかるようにしておいてください。
妙な同情をして行為に及ばなかったなんてことがないように。
純潔を失った、と一目でわかるように」
朝、自分の状態を見たクエッカがどんな顔をするのか。
離縁の為に必至に守って来た純潔が散らされたと知った彼女の絶望。
家令はたまらなくその顔が見たいと思った。
執事は招き入れた男の変装を解かせた。
使用人の采配は総て家令に一任されている。
出入りの人間は漏れ無く調べられている。
主からの不審人物の問い合わせに答えているのが家令だから、家令が問題なしと伝えれば、それはもう不審者ではなくなるのだ。
使用人の仮採用という体で一人の男を招き入れた。
今夜一晩だけの採用だ。
使用人や護衛の誰かを使うか悩み、事が済んでからその者の奥様への挙動が不審になれば事が公になるやもしれぬと恐れ、家令は人を雇うとこにした。
「ええ。構いません。この家を守るために必要なのです」
「嫁いできた奥様が『純潔証明』を請求するなんてなぁ。離縁する気まんまんじゃねぇか」
くくく、と忍び笑う下品な男は、廃れた酒場にいたところを家令が顔を隠して声をかけた。
報酬と条件を出すと、簡単に男は飛びついてきた。
「…白い結婚など認めさせるわけには参りません」
月に二度、神父が訪れる度に奥様は『純潔証明』を発行させていた。
その行為はまるで家令を挑発し、主を貶しているように見えたのだ。
それに、家令は主からの「クエッカを家にとどめておくように」指示を受けている。
何度も主には屋敷に戻るように働きかけたが、「忙しい」とこの三ヶ月ほどは一度も戻られていない。
三年も純潔を守り『白い結婚』で離縁など、させるわけにはいかないのだ。
代々この家に仕えてきた家令の意地でもあった。
「確認するぞ。仕事は、『奥様の純潔奪う』、でよかったんだな?」
「ええ」
「俺は楽しんでもいいんだよな?」
「…お好きにどうぞ。身体に傷をつけられると旦那様に気づかれる恐れがあるので怪我等は避けてくだされば結構です」
「よっしゃ!言質とったかんな」
ご機嫌な男を家令は冷めた目で見る。
主にとっては想い人かもしれないが、貴族夫人でありながら、わざわざ庭での作業に明け暮れている女。
いくら花が好きとはいえあまりに、不相応だ。
暇だというので、裁縫や読書や楽器を勧めても興味を示さなかった。
夫人の仕事を与えなくていいと主が言うならば従う他ない。
主の望むようにのびのびと生活している。
それのなにが気に入らないのか!
純潔証明だと!白い結婚だと!離縁だと!
そんなもの認めない!!
「あと、執事さんよ。避妊具なんか用意してないぞ」
「構いません」
「えっ?腹が膨れてもいいってのか?」
男は思いの外紳士だなと家令は思う。
いや、紳士はこんな依頼を受けはしない。
「今夜の奥様の食事に避妊薬を混ぜてあるので。どれだけ…為さっても構いませんよ」
家令は笑った。
これは罰だ。家令をあざ笑う女への。
「へぇそれはそれは。周到なことで」
「どれだけ声を出させても構いません。元々そういう為の部屋なので。どれだけ泣いて叫んでも誰にもその声は届きません。…人払いもしていますしね」
夫婦の寝室。
彼女の純潔を奪うのが夫ではないけれど。
下品な男は更に下品に笑う。
「ああ、ただ一つ。情交の痕跡は一目でわかるようにしておいてください。
妙な同情をして行為に及ばなかったなんてことがないように。
純潔を失った、と一目でわかるように」
朝、自分の状態を見たクエッカがどんな顔をするのか。
離縁の為に必至に守って来た純潔が散らされたと知った彼女の絶望。
家令はたまらなくその顔が見たいと思った。
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