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三十 結婚後六月 A
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『またアイツが屋敷の前を彷徨いている』
アレンは酒場でグラスを傾けていた。
耳に直接届いた声は猫のもの。
周りの音にかき消されるほど小さな声量だけれど、風魔法を得意とするこの仲間は、風を使って小さな声を特定の相手に届けることができるのだ。
アイツ。
屋敷の前と聞いて、思い当たるのはクエッカの異母弟。
結婚して直ぐにも屋敷の前に何度か現れていた。
屋敷の衛兵が先触れも旦那様の許可もない人間の訪問は認めなかった。
裏口から侵入しようとして、アレンが捕らえ、衛兵を呼ぶと、騎士団警備局に突き出された。
それからしばらくは姿を見ていなかったのだけれど。
『未確認だが、自分では爵位を継げないことを知ったのかもしれない。当主教育を開始しているはずだから』
クエッカが家族と折り合いが悪かった様な事は会話で察した。
誕生日に小さな花を贈っただけで泣かれた。
先日、離縁を旦那さまに突きつけるから、アレンも側にいて欲しいと願われた。
離縁となれば、実家の方に支度金の返還を求められるのではと聞けば、花嫁の支度のために使われていないのだから返して当然だと辛辣だった。
賠償金でも何でも払わせれば良いと、あのクエッカが言うのだから、家族に情はないのだろう。
思えば、嫁いでから一度でも帰りたいとも家族に会いたいとも聞いたことがなかった。
屋敷にいる間は、良くも悪くも衛兵といつのまにか増えた警備兵のお陰でクエッカは守られている。
奴の目的が何なのか調べなければ。
これは私情ではないと、自分に言い聞かせて。
アレンは酒場でグラスを傾けていた。
耳に直接届いた声は猫のもの。
周りの音にかき消されるほど小さな声量だけれど、風魔法を得意とするこの仲間は、風を使って小さな声を特定の相手に届けることができるのだ。
アイツ。
屋敷の前と聞いて、思い当たるのはクエッカの異母弟。
結婚して直ぐにも屋敷の前に何度か現れていた。
屋敷の衛兵が先触れも旦那様の許可もない人間の訪問は認めなかった。
裏口から侵入しようとして、アレンが捕らえ、衛兵を呼ぶと、騎士団警備局に突き出された。
それからしばらくは姿を見ていなかったのだけれど。
『未確認だが、自分では爵位を継げないことを知ったのかもしれない。当主教育を開始しているはずだから』
クエッカが家族と折り合いが悪かった様な事は会話で察した。
誕生日に小さな花を贈っただけで泣かれた。
先日、離縁を旦那さまに突きつけるから、アレンも側にいて欲しいと願われた。
離縁となれば、実家の方に支度金の返還を求められるのではと聞けば、花嫁の支度のために使われていないのだから返して当然だと辛辣だった。
賠償金でも何でも払わせれば良いと、あのクエッカが言うのだから、家族に情はないのだろう。
思えば、嫁いでから一度でも帰りたいとも家族に会いたいとも聞いたことがなかった。
屋敷にいる間は、良くも悪くも衛兵といつのまにか増えた警備兵のお陰でクエッカは守られている。
奴の目的が何なのか調べなければ。
これは私情ではないと、自分に言い聞かせて。
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