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番外 元婚家
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ボルスターは、上司より少し休みを取れと命ぜられ、自宅に戻っている。
屋敷の雰囲気は重く、家令の顔色も以前のままだった。
「クエッカは…?」
「…二週ほど前にはもう」
「…そんなに前から」
あの話し合いから、間を置かずに出ていったと言うことだ。
うじうじ悩まずに宰相にもっと早く相談できていれば、…彼女と話し合う決意も、もっと早くに持てていたかもしれない。
あの時ちゃんと向き合えば、…。
「奥様は実家に戻られました」
「実家…」
クエッカの異母弟についてはまだ捜査中なので口外していない。
異母弟は娼館を回って異母姉を探しているところを、迷惑していた娼館からの要請で地区の衛兵に捕らえられたらしい。
しばらくの間留置され、本来なら口頭注意で釈放されたはずだが、彼を探していた騎士団から迎えが来てそのまま連行された。
実家にいるのならば、わざわざ異母姉を探し彷徨うこともしなかっただろう。
なら、彼女は今何処に。
危険な目にあっていないだろうか。
ボルスターもいますぐ飛び出していきたい気持ちだが、何処へ向かったら良いのか検討もつかない。
「…クエッカの行きそうな場所に心当たりは、」
「…はい?」
「いや」
屋敷から出なかったクエッカが立ち寄りそうな場所などわかるはずもない。
なにか、手がかりはないのか。
「クエッカの好きだった本など…なにか彼女を知れる物はないか?」
「…本も刺繍も興味はないようでした」
家令は、ふと窓に目をやると何かを思い出したように、あ、と声を出した。
「なんだ」
「奥様は花が好きで庭によく出られていましたが、お部屋に花類を持ち込んだことはほとんどありませんでした」
クエッカの家具には家紋の花をモチーフにしたものが多かったせいか、花を飾ろうとはしなかった。
「ですが…あの日、あ、いや。一度だけ窓辺に飾られていた花がありました」
「花…?」
「二色の花弁を持つ小さな花で…その内の一色は奥様の髪色と同じ色だったかと」
クエッカが花好きだと知ってボルスターは少し花について調べていた。
二色を持つ花は多くない。
家令の僅かな情報から該当する花は。
「『片想い』『記憶』『思い出』」
色が違えば『誠実な愛』や『純愛』もあった。
「…旦那様?」
あとは…、
「『一人にしないで』」
味方のいないこの屋敷で、彼女は一人だと思っていたのか。
いや、実際一人だった。
「クエッカ、…すまなかった」
面と向かって一度も伝えられなかった謝罪の言葉は、行き場を失って消えていく。
黙って涙を流すボルスターの横で、家令は思い出していた。
(あの花のもう一色は、あの日雇った男の髪色に似ていたな。偶然だろうが)
クエッカがあの男に会いたいと言っていたことを、家令は秘匿した。
メモの場所は随分前から誰も住んでいない空き家だったから。
行っても無駄だと知っていた。
クエッカがあの男に会う事はないと、大人しく実家に帰るだろうと、そう思って信じていた。
今もなお。
屋敷の雰囲気は重く、家令の顔色も以前のままだった。
「クエッカは…?」
「…二週ほど前にはもう」
「…そんなに前から」
あの話し合いから、間を置かずに出ていったと言うことだ。
うじうじ悩まずに宰相にもっと早く相談できていれば、…彼女と話し合う決意も、もっと早くに持てていたかもしれない。
あの時ちゃんと向き合えば、…。
「奥様は実家に戻られました」
「実家…」
クエッカの異母弟についてはまだ捜査中なので口外していない。
異母弟は娼館を回って異母姉を探しているところを、迷惑していた娼館からの要請で地区の衛兵に捕らえられたらしい。
しばらくの間留置され、本来なら口頭注意で釈放されたはずだが、彼を探していた騎士団から迎えが来てそのまま連行された。
実家にいるのならば、わざわざ異母姉を探し彷徨うこともしなかっただろう。
なら、彼女は今何処に。
危険な目にあっていないだろうか。
ボルスターもいますぐ飛び出していきたい気持ちだが、何処へ向かったら良いのか検討もつかない。
「…クエッカの行きそうな場所に心当たりは、」
「…はい?」
「いや」
屋敷から出なかったクエッカが立ち寄りそうな場所などわかるはずもない。
なにか、手がかりはないのか。
「クエッカの好きだった本など…なにか彼女を知れる物はないか?」
「…本も刺繍も興味はないようでした」
家令は、ふと窓に目をやると何かを思い出したように、あ、と声を出した。
「なんだ」
「奥様は花が好きで庭によく出られていましたが、お部屋に花類を持ち込んだことはほとんどありませんでした」
クエッカの家具には家紋の花をモチーフにしたものが多かったせいか、花を飾ろうとはしなかった。
「ですが…あの日、あ、いや。一度だけ窓辺に飾られていた花がありました」
「花…?」
「二色の花弁を持つ小さな花で…その内の一色は奥様の髪色と同じ色だったかと」
クエッカが花好きだと知ってボルスターは少し花について調べていた。
二色を持つ花は多くない。
家令の僅かな情報から該当する花は。
「『片想い』『記憶』『思い出』」
色が違えば『誠実な愛』や『純愛』もあった。
「…旦那様?」
あとは…、
「『一人にしないで』」
味方のいないこの屋敷で、彼女は一人だと思っていたのか。
いや、実際一人だった。
「クエッカ、…すまなかった」
面と向かって一度も伝えられなかった謝罪の言葉は、行き場を失って消えていく。
黙って涙を流すボルスターの横で、家令は思い出していた。
(あの花のもう一色は、あの日雇った男の髪色に似ていたな。偶然だろうが)
クエッカがあの男に会いたいと言っていたことを、家令は秘匿した。
メモの場所は随分前から誰も住んでいない空き家だったから。
行っても無駄だと知っていた。
クエッカがあの男に会う事はないと、大人しく実家に帰るだろうと、そう思って信じていた。
今もなお。
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