6 / 16
六
しおりを挟む
『王が、子をなせない妾にしか身体が反応しないとなれば、跡継ぎをどうするつもりなのですか』
『さぁ?王は元々彼女しか愛さないと公言していましたし。私に先代王弟の子息の公爵当主をあてがって来たくらいですから、王家の血筋の養子でも迎えれば良いのでは?』
『あてがってきたって…』
司書の男は呆然としている。
あまりに突飛で信じられないのだろう。
『それも見越して公爵夫人にもおまじないを実践してもらっていましたから、私の身は守られました。
その後も懲りずに何人もの王家の血筋の貴族当主をつれて来られましたけどね。
少しお痛がすぎる者はこれを機に捕縛させていただきましたが』
『…おと、王はそのような人物なのか』
王立図書館の司書である彼は平民だ。
平民が知る王の像はきっと違ったのだろう。
仕事は出来る。サリーシアと同じく民の事を考えている王であることには違いない。
平民には治世の安定が王の評価なのだ。
『国民に愛される王が出来た人物だと思っていらっしゃったのなら夢を壊して申し訳ありません』
司書の男は、サリーシアのこの計画を反対していた。
サリーシアが婚姻前に一度婚約破棄されたことも、平民まで話は流れていなかったらしい。
婚約者がいながらその友人と恋仲になる男が王だとは。
『あと少し。離縁が認められるまで』
黙った目の前の男は、サリーシアの手元にあった古書をじっと見つめている。
『離縁された後は…どうなさるおつもりですか…』
『そうね。元王妃なんて不良物件はだれも手を出しかねるでしょうから。市井に下るのもよいかと』
貴族らしい貴族のサリーシアの父が出戻りを許すとも思えない。
『…平民は、貴族の方が耐えられる環境ではないですよ。もっと現実的な案を』
真面目に考えろと眉を釣り上げた男に、サリーシアはニコリと笑った。
『そうかしら?私は王立図書館の司書を夫に持つのも良いかと思っておりますけど』
『お戯れを』
『ですが、あり得た未来ではないですか』
司書の男は首を振る。
彼が此処で苛立っているのはサリーシアの将来を案じての事だとわかっている。
サリーシアを厭い拒否されているわけではない…はずだ。
『王が…自身の不能に気づき、私に他の王家の血筋の者と子を作らせようとしたあの時』
目の前の男は古書から目を外し、サリーシアに顔を向けた。
『従弟の公爵よりもっと近い人物がいるのに、と思いました。
その方が現れたのであれば、きっと離縁はできなかったでしょうね』
『…呪いが効いていない相手だから』
『そうです。それに、きっと私は拒まなかったでしょうから』
そうでなかったから全力で拒否した。
『…』
『秘匿された王子。側妃を母に持つ第一王子は、王妃が産んだ第二王子を王にするために、側妃諸共王宮から追い出された悲劇の王子』
ふぅと目の前の司書の男が息を吐く。
『城を出されたのは十になる前の頃でしたか。王に兄の記憶がなかったのは彼がまだ幼かったから?』
『よく…調べましたね。私の存在は抹消されているはずなのに』
司書の男は、肩をすくめ両手をあげて降参の姿勢をとった。
『さぁ?王は元々彼女しか愛さないと公言していましたし。私に先代王弟の子息の公爵当主をあてがって来たくらいですから、王家の血筋の養子でも迎えれば良いのでは?』
『あてがってきたって…』
司書の男は呆然としている。
あまりに突飛で信じられないのだろう。
『それも見越して公爵夫人にもおまじないを実践してもらっていましたから、私の身は守られました。
その後も懲りずに何人もの王家の血筋の貴族当主をつれて来られましたけどね。
少しお痛がすぎる者はこれを機に捕縛させていただきましたが』
『…おと、王はそのような人物なのか』
王立図書館の司書である彼は平民だ。
平民が知る王の像はきっと違ったのだろう。
仕事は出来る。サリーシアと同じく民の事を考えている王であることには違いない。
平民には治世の安定が王の評価なのだ。
『国民に愛される王が出来た人物だと思っていらっしゃったのなら夢を壊して申し訳ありません』
司書の男は、サリーシアのこの計画を反対していた。
サリーシアが婚姻前に一度婚約破棄されたことも、平民まで話は流れていなかったらしい。
婚約者がいながらその友人と恋仲になる男が王だとは。
『あと少し。離縁が認められるまで』
黙った目の前の男は、サリーシアの手元にあった古書をじっと見つめている。
『離縁された後は…どうなさるおつもりですか…』
『そうね。元王妃なんて不良物件はだれも手を出しかねるでしょうから。市井に下るのもよいかと』
貴族らしい貴族のサリーシアの父が出戻りを許すとも思えない。
『…平民は、貴族の方が耐えられる環境ではないですよ。もっと現実的な案を』
真面目に考えろと眉を釣り上げた男に、サリーシアはニコリと笑った。
『そうかしら?私は王立図書館の司書を夫に持つのも良いかと思っておりますけど』
『お戯れを』
『ですが、あり得た未来ではないですか』
司書の男は首を振る。
彼が此処で苛立っているのはサリーシアの将来を案じての事だとわかっている。
サリーシアを厭い拒否されているわけではない…はずだ。
『王が…自身の不能に気づき、私に他の王家の血筋の者と子を作らせようとしたあの時』
目の前の男は古書から目を外し、サリーシアに顔を向けた。
『従弟の公爵よりもっと近い人物がいるのに、と思いました。
その方が現れたのであれば、きっと離縁はできなかったでしょうね』
『…呪いが効いていない相手だから』
『そうです。それに、きっと私は拒まなかったでしょうから』
そうでなかったから全力で拒否した。
『…』
『秘匿された王子。側妃を母に持つ第一王子は、王妃が産んだ第二王子を王にするために、側妃諸共王宮から追い出された悲劇の王子』
ふぅと目の前の司書の男が息を吐く。
『城を出されたのは十になる前の頃でしたか。王に兄の記憶がなかったのは彼がまだ幼かったから?』
『よく…調べましたね。私の存在は抹消されているはずなのに』
司書の男は、肩をすくめ両手をあげて降参の姿勢をとった。
209
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜
ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……?
※残酷な描写あり
⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。
ムーンライトノベルズ からの転載です。
【完結】偽装結婚の代償〜他に好きな人がいるのに結婚した私達〜
伽羅
恋愛
侯爵令嬢のヴァネッサはある日、従兄弟であるリュシアンにプロポーズされるが、彼女には他に好きな人がいた。
だが、リュシアンはそれを知りながらプロポーズしてきたのだ。
リュシアンにも他に好きな人がいると聞かされたヴァネッサはリュシアンが持ち掛けてきた契約結婚を了承する。
だが、ヴァネッサはリュシアンが契約結婚を持ち掛けてきた本当の理由に気づかなかった…。
私と結婚したいなら、側室を迎えて下さい!
Kouei
恋愛
ルキシロン王国 アルディアス・エルサトーレ・ルキシロン王太子とメリンダ・シュプリーティス公爵令嬢との成婚式まで一か月足らずとなった。
そんな時、メリンダが原因不明の高熱で昏睡状態に陥る。
病状が落ち着き目を覚ましたメリンダは、婚約者であるアルディアスを全身で拒んだ。
そして結婚に関して、ある条件を出した。
『第一に私たちは白い結婚である事、第二に側室を迎える事』
愛し合っていたはずなのに、なぜそんな条件を言い出したのか分からないアルディアスは
ただただ戸惑うばかり。
二人は無事、成婚式を迎える事ができるのだろうか…?
※性描写はありませんが、それを思わせる表現があります。
苦手な方はご注意下さい。
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
【完結】夢見たものは…
伽羅
恋愛
公爵令嬢であるリリアーナは王太子アロイスが好きだったが、彼は恋愛関係にあった伯爵令嬢ルイーズを選んだ。
アロイスを諦めきれないまま、家の為に何処かに嫁がされるのを覚悟していたが、何故か父親はそれをしなかった。
そんな父親を訝しく思っていたが、アロイスの結婚から三年後、父親がある行動に出た。
「みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る」で出てきたガヴェニャック王国の国王の側妃リリアーナの話を掘り下げてみました。
ハッピーエンドではありません。
すれ違いのその先に
ごろごろみかん。
恋愛
転がり込んできた政略結婚ではあるが初恋の人と結婚することができたリーフェリアはとても幸せだった。
彼の、血を吐くような本音を聞くまでは。
ほかの女を愛しているーーーそれを聞いたリーフェリアは、彼のために身を引く決意をする。
*愛が重すぎるためそれを隠そうとする王太子と愛されていないと勘違いしてしまった王太子妃のお話
真実の愛は望みませんが偽りの愛も不要なのです
cyaru
恋愛
ジェイス伯爵家の令嬢ティフェルの婚約者はペルデロ侯爵家の子息カイン。
あの日まで、お互いが足らない所を補い仲睦まじくやってきた。
運命の日は突然やってくる。
シェリーという子爵令嬢が領地から王都にある学園に1年間だけ入学をしたのだ。
病弱だと言う事で本来2年間学園に通わねばならないところを1年に免除されたシェリー。
ティフェルは学年主席だという事もあり学園に馴染むまでのシェリーの面倒を見る事になった。
大人しいシェリーにはなかなか友人が出来ない。必然的に一緒に居る事になれば婚約者のカインとも会う機会が増えていく。そんな時ティフェルは一目でわかってしまった。カインとシェリーが恋をしている事に。
次第にカインに対して自分にはそんな笑顔を向けてくれたことがあっただろうか。そんなに優しい声で名を呼んでくれただろうか。そんな思いを抱えるようになってしまうティフェル。
ある日、ティフェルは見てしまった。カインがシェリーに思いを告白する場面を。
両思いなのだと知った2人は結局諦めを付けられず密かに交際を始める。
ティフェルがその事を知っているとは知らずに。
※内容に病名等ありますが、患って居られる方を揶揄するものではありません。
同じ病名だけど似たようなもの…と解釈頂けるとありがたいです。
※概念は捨ててお読みください。
作者の勝手な設定の為、こうではないか、あぁではないかと言う一般的な物とは似て非なると考えて下さい
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※作者都合のご都合主義です。外道な作者なので色々注意が必要です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【10話完結】 忘れ薬 〜忘れた筈のあの人は全身全霊をかけて私を取り戻しにきた〜
紬あおい
恋愛
愛する人のことを忘れられる薬。
絶望の中、それを口にしたセナ。
セナが目が覚めた時、愛する皇太子テオベルトのことだけを忘れていた。
記憶は失っても、心はあなたを忘れない、離したくない。
そして、あなたも私を求めていた。
【完結】亡くなった妻の微笑み
彩華(あやはな)
恋愛
僕は妻の妹と関係を持っている。
旅行から帰ってくると妻はいなかった。次の朝、妻カメリアは川の中で浮いているのが発見された。
それから屋敷では妻の姿を見るようになる。僕は妻の影を追うようになっていく。
ホラー的にも感じると思いますが、一応、恋愛です。
腹黒気分時にしたためたため真っ黒の作品です。お気をつけてください。
6話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる