お飾り王妃だって幸せを望んでも構わないでしょう?

基本二度寝

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「陛下、これより先は認められません」
「煩い!自分の妻に会うのに認めるもなにもあるか!」
「王妃殿下はもう既に『白い結婚』の申請を済ませてあります。公務外で王妃殿下に会うことは認められません」
「チッ!申請済みなら尚時間がないではないか」

夜も更けた王城の廊下にて、王妃の私室に向かう国王を宰相が阻む。
本当は宰相も王妃をみすみす逃がすつもりなどなかった。
だから再三に渡り王には妃と床を共にするようにと条件も出したし、進言してきたのだ。
果たされることはなかった為、この事態を招いた。

「…もう遅いのです」
「なにっ」
「申請前ならともかく…あの方が出てきたのならば」
「どけっ」

宰相の呟きを国王は拾うこともなく、目の前の障害を排除すると乱暴にサリーシアの部屋の扉を開いた。

「騒々しいですわね。こんな時間に何用ですか」

「っ、王が、妃に会うのに、用件など不要だろうがっ」

ベアディスが言葉に詰まったのには理由があった。

肌が透けて見えるほどの薄い生地を纏った夜着のドレスは、サリーシアの肢体を美しく引き立てている。

わざわざリリネーゼへの愛を宣言しに来た初夜ときは、一般的な夜着だったのに。

…そうか。今夜サリーシアは己の渡りを待っていたのか。

薄く笑いながらベアディスは妃に近づいていく。

興奮する心に、追い付かない身体はそのままだが、それでも、女を嘉がらせる術はある。

男性器を模したモノを使う。
最初からこうすれば良かったのだ。

サリーシアの純潔を奪えば、彼女は此処に囚われたまま。
白い結婚などなかったとベアディスの隣に居るしかない。

気が向けば、相手をしてやっても良い。
ベアディスに夢中にしてやれば。

己を欲するサリーシアを想像して、気分が高揚する。

それでもやはり、身体が熱くなることはない。

「まぁ、白い結婚の申請後は夫婦の接近を禁じられているのですが。そのような法もご存じなかったとは知りませんでしたわ」

「白い結婚などない!今からお前を奪う」

醜悪な顔で笑み、「あらあら」とサリーシアは慌てることもせず、寝台に腰を下ろした。

ゆっくり足を組む様が劣情を誘い、ゴクリと唾を飲む。

「今、私の身は危険な状態にあるようですね?」

サリーシアは側に立つ近衛騎士に向かって微笑んでいる。
動揺する騎士にベアディスは苛立ちを覚えー

「なぜ室内に近衛がいる!…しかも数が、多い…?」

ようやくベアディスは、妃の私室内にいる騎士の数の多さに気づいた。

サリーシアの声かけに、騎士らが動きベアディスの前に立ちはだかる。

「ご自身が不能だからといって、あの様なモノで嬲るつもりでしたのね、まぁ怖い」

やや棒読みのような台詞を発して、サリーシアはベアディスが手に持つモノを指差し、側にいた近衛騎士の腕に縋りついた。

「なっ!」

王だけでなく、縋りつかれた騎士もわたわたと焦っているのは、薄い生地越しの王妃に触れたからだろう。

柔らかい胸が近衛の腕に押し付けられて形を歪めている。

「此処は危険ですわね!身を守るために私は城を出ますので」

サリーシアは近衛の腕に絡みついたまま、夫に笑顔を向けて別れを告げたのだった。
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