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十一
ルデが悲鳴を上げていた時と同じ頃。
王城でも同じ様に声を上げた者がいた。
城に残ったサリーシアの侍女が、去り際にサリーシアから渡されていた書類を差し出したことで、宰相は絶句し、国王は怒声を上げて怒りのままそれを破り捨てた。
「っこんなものっ!無効だ!!」
「…恐れながら。陛下、その書類は写しです。破り捨てたところで…離縁の無効は、不可能です」
宰相は呆れたように諭した。
そんな事は十分わかっているだろうが。
「私はっ認めていない!!」
「婚姻を管理する神殿が認めたのですから、陛下の意思は関係ないのです。
いえ、白い結婚が、陛下の婚姻継続の意思なし、ともいえますね」
「っそれはっ、だが、そうだ、あの女は私に抱かれたがっていた!だからあの様な挑発的な格好をしていたのではないか!」
もう一度触れてみたかった肢体を、蠱惑的な衣装でベアディスを迎えたのだ。
サリーシアの方が、ベアディスを求めていたのだと信じて疑うことはない。
今夜は先触れもなく、勝手にサリーシアの元に押しかけた事を、王は都合よく忘れている。
「それについては、誤解を」
控えめに、サリーシアの侍女が声を上げた。
「…なんだ、侍女の分際で」
「ベアディス陛下がこちらの部屋に訪れた時には、実はもう離縁は成立しておられたようです」
「…」
宰相には、サリーシアが神殿へ申請を終えたとしか伝えられていなかった。成立するまで即日でどうにかなるものでもない。
つまり、もっと前に申請は終わっていた。
宰相の情報網に遅れがあった、それだけのこと。
「…サリーシア様は、ご自分の想う方を誘惑したく、あのような格好をされていただけなのです」
「だからそれは、私を」
「…誘惑?」
ベアディスの言葉は無視して宰相が驚く。
城を出る理由付けに、陛下の愚行を引き出すためだと思っていたのだが…。
「…先王の近衛騎士か、」
同じ部屋に居たのは、侍女と騎士ら。
そういえば、一人サリーシアに縋られ、狼狽えていた騎士がいた。
「サリーシア様は、白い結婚の離縁が成立した時点で城を去るつもりのご様子でしたが、先代国王陛下の近衛騎士が護衛にあたると現れた時、少しでも長く側にと、部屋に居られただけに過ぎません」
「…」
「…」
「よもや、不貞などと騒ぎ立てぬことのありませんよう」
離縁は成立していたのですから。と侍女は匂わせた。
最も、離縁がまだだった頃、先代国王の前でも同様にあの二人は仲睦まじくしていたが、ベアディスらはそれを知らないし、バルディスに甘いディスガルド様は不問にした。
ベアディスが妃を取り戻す手立ては無いのだ。
ベアディス自身が行った、王家の血を引く者らを王妃に宛てがって子を成そうとした事実が、他の貴族らの耳に入っている。
なぜそのようなことをしたのか。
ベアディス陛下は不能なのではないか。
それを隠すための愛妾への『唯一の愛』の宣言なのではないかと憶測を呼ぶ。
噂を裏付けるように、王がこの先自身の子を持つことはない。
それを知らぬのは、ベアディス本人と、愛妾のリリネーゼだけだった。
王城でも同じ様に声を上げた者がいた。
城に残ったサリーシアの侍女が、去り際にサリーシアから渡されていた書類を差し出したことで、宰相は絶句し、国王は怒声を上げて怒りのままそれを破り捨てた。
「っこんなものっ!無効だ!!」
「…恐れながら。陛下、その書類は写しです。破り捨てたところで…離縁の無効は、不可能です」
宰相は呆れたように諭した。
そんな事は十分わかっているだろうが。
「私はっ認めていない!!」
「婚姻を管理する神殿が認めたのですから、陛下の意思は関係ないのです。
いえ、白い結婚が、陛下の婚姻継続の意思なし、ともいえますね」
「っそれはっ、だが、そうだ、あの女は私に抱かれたがっていた!だからあの様な挑発的な格好をしていたのではないか!」
もう一度触れてみたかった肢体を、蠱惑的な衣装でベアディスを迎えたのだ。
サリーシアの方が、ベアディスを求めていたのだと信じて疑うことはない。
今夜は先触れもなく、勝手にサリーシアの元に押しかけた事を、王は都合よく忘れている。
「それについては、誤解を」
控えめに、サリーシアの侍女が声を上げた。
「…なんだ、侍女の分際で」
「ベアディス陛下がこちらの部屋に訪れた時には、実はもう離縁は成立しておられたようです」
「…」
宰相には、サリーシアが神殿へ申請を終えたとしか伝えられていなかった。成立するまで即日でどうにかなるものでもない。
つまり、もっと前に申請は終わっていた。
宰相の情報網に遅れがあった、それだけのこと。
「…サリーシア様は、ご自分の想う方を誘惑したく、あのような格好をされていただけなのです」
「だからそれは、私を」
「…誘惑?」
ベアディスの言葉は無視して宰相が驚く。
城を出る理由付けに、陛下の愚行を引き出すためだと思っていたのだが…。
「…先王の近衛騎士か、」
同じ部屋に居たのは、侍女と騎士ら。
そういえば、一人サリーシアに縋られ、狼狽えていた騎士がいた。
「サリーシア様は、白い結婚の離縁が成立した時点で城を去るつもりのご様子でしたが、先代国王陛下の近衛騎士が護衛にあたると現れた時、少しでも長く側にと、部屋に居られただけに過ぎません」
「…」
「…」
「よもや、不貞などと騒ぎ立てぬことのありませんよう」
離縁は成立していたのですから。と侍女は匂わせた。
最も、離縁がまだだった頃、先代国王の前でも同様にあの二人は仲睦まじくしていたが、ベアディスらはそれを知らないし、バルディスに甘いディスガルド様は不問にした。
ベアディスが妃を取り戻す手立ては無いのだ。
ベアディス自身が行った、王家の血を引く者らを王妃に宛てがって子を成そうとした事実が、他の貴族らの耳に入っている。
なぜそのようなことをしたのか。
ベアディス陛下は不能なのではないか。
それを隠すための愛妾への『唯一の愛』の宣言なのではないかと憶測を呼ぶ。
噂を裏付けるように、王がこの先自身の子を持つことはない。
それを知らぬのは、ベアディス本人と、愛妾のリリネーゼだけだった。
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