お飾り王妃だって幸せを望んでも構わないでしょう?

基本二度寝

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十五

「ルデ…?」

驚くサリーシアの顔は、何を言いたいのかわかっている。
彼女を抱く手に力を込めて、そのまま黙っているように伝えた。

「私は古い文字の研究をしております。もう読まれなくなった古語で書かれた書物に王家の血について書かれていた記述がありました。…自分とも関係ある事柄だったので覚えています」

「何が言いたい」

先王は続きを促した。

「王家の血には、真に愛した女がいれば、その女以外抱けぬようになる、と」

盛大な先王の笑う声があり、首を振る。

「よくもまぁ、この期に及んで見え透いた嘘を」
「ですが、現国王も、その従弟にあたる公爵も、想う相手しか抱けないではありませんか」

「ルデ」

思わずサリーシアの制止が入るが、ルデは彼らの状況を利用させてもらうことにした。

「…?どうしてそんなことを知っている」

「閨の時にサリーシアに聞きました。サリーシアを襲おうとした国王も公爵も彼女の前では不能であったと。自分に魅力がないのではと、勘違いしてらしたのでお慰めしました」

本当は、その話を聞いたのはずっと前の話。
あの時は呪いの成果を自分には魅力がないのねと茶化して話していた。

先王はサリーシアに目を向けた。
サリーシアは口を噤んで、その視線を真っ直ぐに受ける。
普通ならたじろぎそうな先王の視線も、堂々としたものだった。

「サリーシア様ではなく、他の者から確認してください。まだ王城に貴方の手足があるのでしょう?その方が貴方も信用できるでしょう。
血の繋がりがあるだけの愚かな子の戯言だと今はお思いでしょうが」

「…そんなことは、お前を愚かなどとは思っていない」




先王は部下を呼びつけ動かした。

ここで、戯言と切り捨ててしまってよいものか。
嘘だとわかっていても裏付けは取っておこうと、王だった頃の経験と勘が部下を動かせた。

昨日のベアディスがサリーシアの部屋に押しかけてきた事は騎士らに聞いて知ってはいた。

男性器を模した道具を所持し、サリーシアを辱めようとしたらしい、と言う事は。

ベアディスが、あの愛妾しか抱かぬという信念を曲げぬために、サリーシアへの嫌がらせ程度にしか考えていなかったけれど、…もしバルディスの言う言葉が正しければと、反応しない身体の代わりにその道具で白い結婚を阻もうとしたのなら…。

一日の半分が過ぎ、夕刻になろうとした頃に情報は揃った。

先王は自分の執務室で、部下らが集めてきた報告を聞いて、言葉を失った。

バルディスが言うように、ベアディスは自分の愛する妾にしか身体が反応しないらしいこと。
公爵も王命で王妃を抱されようとしていたことにも驚いたが、彼も愛妻にしか身体が反応しないらしい。

同じ様に、王家の血が交じる貴族当主に確認させたが、愛する妻や、愛人など、これと決まった一人にしか身体が反応しなくなっていると皆首を傾げ、口を揃えているらしい。
誰かが示し合わせたのか。
バルディスにその力が…?

いや、彼は城から離れていて、最近まで生存を知らなかったバルディスを担ぎ上げる勢力はなかった。
バルディスにそんな力が無いことは、先王が一番わかっている。

もし力があるなら、サリーシアはバルディスを頼ったに違いない。

本当に、バルディスが言うように王家にはそんな隠された血の呪いがあったのか…?

「そんな、ばかな」

先王は違った。
側妃を愛していたが、王妃との間にも子はできた。

それが正しければ、王妃と閨は出来なかったはずだ、と。


直ぐに、バルディスとサリーシアを呼ぶように部下に命じた。


先程、バルディスが乗り込んできた応接室に入れば、すでに二人は居た。

二人には部屋を与えて情報が揃う間待たせていたが、真っ赤になっているサリーシアの腫れている唇を見れば、大人しく待っていた訳ではなさそうだ。

「…盛っていたのか」

「思いの外性衝動が強くて」

想定外だというバルディスの言葉に、眉が上がる。

「大丈夫です。サリィにしか反応しません」

「なにが大丈夫なものか」

呼び方まで変わって、先程よりも強くサリーシアに執着いるバルディスの姿に先王は舌打ちした。

「報告は聞いた。しかし、信じられん。儂がそれに該当しないからな」

バルディスは首を傾げ、ああと二三度頷いた。

「真に愛する者が条件ですから。きっと貴方は、母への想いも王妃への想いもだっただけではありませんか?」

「…」

「文献にもかかれていましたから。浮気性の王は血に縛られなかったと」

先王は黙った。
愛する者の子に、お前の愛はその程度だと言われてしまった。
彼らをすぐに諦めた王には言い返せるだけの言葉を持っていない。


それよりも重大なのは、
もし、バルディスがサリーシアにしか反応しない身体になってしまったのならば、最愛を失えば、自分の後継者は途絶えてしまう。

子を成せぬ愛妾にしか反応しない現国王では、次代は期待できない。

先王は、決断するしかない。

サリーシアの前に置かれたままの、毒入りのカップを片付けさせた。

それが先王の答えだ。

彼女を先王の庇護下に置くことで、守っていくしか先王の血は残らないのだから。

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