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2章 渡界人の日報
2-1 駆け落ちは異世界で⑤潜入捜査2
しおりを挟む中から出てきた部員にヨシカズ氏を訪ねるとそれは自分だと言った。
渡は名刺を見せると彼は私達と共に学校の裏手へと案内した。
「実吉ヨシカズさんですね。相手方からはまだ決めかねていると聞きましたが、一つ気になる事や忠告申し上げたい事もありましてね」
「いや、実和から聞きました。こちらを心配してくれた事や私が調べた業者はセールストークばかりでどうも信用ならない。向こうの方が安いですが向こうで何が起こるか判らないという点で信用できるのはやはりそちらだと思います」
「その信用の為送り込む人間を調査しているのです。今回の依頼はあなたが主導しているとみているのですが、どこでこの転生業者の事を知りましたか?」
「実は引きこもりの兄がいるのですが、その兄がネットから見つけてきたのです。兄は昔は優秀だったのですが高校の時ちょっと・・・いえ言いましょう、これも兄と私の関係を疑われない為にも」
渡が先を促すと
「兄は名前までは言えませんがある女性に恋をして振られました。それがよほど堪えたと見えて引きこもってしまったのです。それが家業の傾きで今奮起していましてね。一時は冷え切っていましたが家族仲は今は良好ですよ」
「ほう、あなたが居なくとも家業を継いでくれるお兄様がいらっしゃるわけですか。だからあなたの方は出奔にもあまり躊躇が無い、と。しかし先方はどうなのです?」
「向こうも妹が一人います。実良おじさん、失礼向こうの当主の名前ですが結菜家は姉妹だけです」
「お言葉ですが両家の和解は難しいのですか?あなたは向こうの家に親しみを感じているようですが」
「事情は複雑でしてね。こちらは父が特に彼らを嫌い、向こうでは母親がこちらを嫌っている、という訳なんです。今の当主は入り婿なんです。だから実良さん個人は僕らに同業者としてのライバル意識以上の感情はありませんよ」
「家業は何をされているのですか?」
「ニュースで話題になっていると思いますがYOU&MEホームズが我がミヨシハウジングを買収しようとしているのはご存じでしょう?2つの家は昔から土地関連の仕事で争ってきた歴史があるのです。でも家業が傾いた矢先に買収騒ぎですから父の憎悪もいやが上に高まるし、向こうの母親はますますこちらを見下しているという訳です」
「では決意は固いのですね」
「はい」
「異世界に行ったら二度とは帰ってこられません。まだ卒業まで1か月ほどあります。未練などは残さない様お願いします」
「分かりました」
「では最後に先方の妹さんのお名前は何と言いますか?」
「?操といいます」
私は危うく声を出しそうになった。
渡は頷くと手帳を破り何事かを書くとそれをヨシカズ氏に見せた。
それを見たヨシカズ氏は見る見るうちに顔色を変えた。
「何故わかったのですか?あなたの本業とは実は探偵なのですか?」
「必要に応じて探偵にもなりますよ。いい加減な人物をこちらも送りたくはないのです。ではさようなら」
そう言うと渡は私と共に駅へと歩き出した。
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