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2章 渡界人の日報
2-5 悪人転生④恐怖の夜からの解放
しおりを挟む「次更剛士!お前は完全に包囲されている!大人しく出てこい!」
拡声器から警官の声が響き渡る。見れば部屋の窓からいくつもの回転する赤いサイレンの光が私達を照らしていた。
「来やがったか。だがちょうどいい。異世界に行けないなら外国へ高飛びと行くか。おいお前立て」
次更はこれで助かったと思った私の襟首を掴むと強引に立たせる。私を人質にして逃走手段を持ってこさせようというのは明白だった。
「待ちたまえ。人質なら僕がなろう。君としてはどちらでも構わないのでは?」
「フン。お前は何を考えているか分からないからな?こっちのマヌケの方がやりやすい」
渡がそう言うが強盗は私を掴んだままそう言った。
「そうですか。異世界への道を自ら閉ざすというのならどうぞご自由に」
「何?嘘じゃないだろうな?」
その渡の言葉に思う所があったのか、次更は僕を投げ捨てる様に開放すると渡に詰め寄った。
「ええ。僕を人質にして窓の傍まで行ったら、警視庁の真龍弾警部を呼ぶように言って下さい。それで通じると思いますよ」
「サツに逮捕されるだけじゃねえか!ふざけるな!!」
「ところがこの真龍警部というのは警視庁内に犯罪者更生プログラムの一環として異世界へ受刑者を送る特殊な組織を立ちあげているのです。個人的にはその思想に賛同しかねるので黙っていたのですが・・・」
「首輪ついてるんじゃ意味ねぇだろうが」
再び危険な瞳を向けられても渡は臆する事が無かった。確かに異世界に行ってまで監視の中あれこれ命令されるのでは堪った物ではないだろう。私はそう思いながら先程乱暴に解放された時に後頭部を打ったのと強盗の殺気に当てられて気絶する。だから次の会話は後から渡から聞いた物であることを先に断っておく。
『それがねえ、自由なんですよ。全くの監視無し。そしてこのプログラムを終えたら晴れて釈放というね。詳しくは後で聞いてみるのですね』
『嘘ならその場でぶっ殺してやるからな』
そうして渡を人質にした次更は先の渡からの要求を提案するとその1時間半後真龍警部なる人物が現場に到着した。
真龍警部に会う時、次更はまるで王侯貴族のような足取りで警官達の間を歩いて行ったそうだ。だがその舐めた態度も真龍警部から無言の鉄拳を食らう事で終わりを告げた。
真龍警部は乗って来た覆面パトカーにのたうち回る次更を投げ込むように乗せて『立てこもり事件』は終わった。
翌日の夜、珍しく渡が私の部屋に来た。彼は手に一枚の封筒を持っていてそれを私に見せる。
「それは何だい?」
私は痛む頭をさすりながら聞いた。
「真龍警部からだ。僕らに事件の重要参考人としてくるようにとね」
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