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第9話 クロカワレポート トカゲ型UMAリザードマン登場
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都内某所のビルの一室に数名の男女が座っている。
彼らの正面のプロジェクタには魔法の鎧を纏った達人とリザードマンの戦いが映し出されている。
この会議は文明存続委員会がそのスポンサーに向けた報告を行うために開催したものである。
「身体能力は成人男性の約15~20倍、バスの扉を容易くぶち抜く腕力、同等以上の体格のUMAの肉体を容易く引きちぎるパワーと」
プロジェクタ前の黒川博士が言葉を区切る。映像は魔法の鎧が数々の魔法や武器を使う場面を映しだす。
「最高出力ならば軽自動車すら蒸発せしめる火球フロギストン」
「強風とカマイタチに似た攻撃能力を併せ持つ風魔法プノエー」
「高耐久・高硬度の防壁を作り出す土のトイコス」
「さらにこれらとは別に手持ち武器たる杖から発するエレメンタル・ウェポンが確認されているだけで剣・銛・弩の三つがあり四元素の観点からもう一つある事が予想されます」
「これら数々の魔法と武器を使い敵をせん滅する、これが魔法の鎧を纏った人間の戦闘形態たる魔甲闘士なのです」
会場がざわめきに包まれる中黒川はさらに説明を続ける。
「この鎧は青銅と現在地球上には存在しない金属との合金で出来ており全備重量僅か15キロ、戦車砲の直撃にすら傷一つつかない耐久力と地球のエネルギーたるエレメンタル・エナジーを吸収し動力として先ほどの超パワーを発揮する、『超兵器』であります」
「なぜこのようなものがあると確信があったのですか?」
その質問に奥の扉から朽ち果てた鎧が運ばれてくる。
頭部の双眼の内左側が欠け、鎧全体も錆だらけでひしゃげたり殆どの装甲が吹き飛び内部の機械が露出している様は往事の戦闘の激しさを物語っている。
そんな状態でも作り手の意地かかつての装着者の雄々しい魂がそうさせるのか。
見る物に悲壮感より神々しさや気高さを感じさせる何かがあった。
少なくとも文明存続委員会のメンバーはそれを感じ取っていた。
「これは我らの協力者が持っていた火の四元将アイディオンです。御覧の通りこれは『死んでいる』鎧ですが残り三つ、水・風・土の鎧の行方が分かっておらず世界のどこかに眠っていると考えたのです」
「死んでいるとは?」
再びの質問に映像が先日の魔法の鎧が電撃を発して周囲を威圧する先日の調査の様子を映しだす。再びどよめきが会場に湧き上がる。
「各鎧には装着者を選ぶ意思がありそれ以外の者に触れたり近づくことを許さないためのセキュリティが働くのです。このため我々は誰でも装着できる量産可能な魔法の鎧を大至急作らねばならないのです。しかしそのためにはクリアしなければならない課題が多くあります。それは我々のいや全人類の敵たるUMAの特性とも関係があるのです」
画面が最初の戦闘の映像に切り替わりそれがサーモグラフィのようなものに切り替わる。
「UMAの最大の問題は通常の場合こちらから触れることが一切できないの事です。この画面にあるように体の周りに青い靄かオーラのようなものがある事が分ると思います。これが人類側からのあらゆる接触や攻撃を透過してしまう原因なのですが向こう側からはその制約はありません。そして異次元からやってくる彼らは人間を襲うよう本能に刻まれているのです」
画面上では魔法の鎧を取り巻く赤いオーラがUMA側のオーラと重なり消滅していく様が映し出される。
「御覧のようにエレメンタル・エナジーそのものかそれを纏った物体でなければ連中とまともに対峙することはできないのです」黒川は続ける。
「そもそもUMAとはー我々が便宜上そう呼んでいるだけで彼ら自身が自分たちをどう呼んでいるのかは不明ですがー産業革命以後連綿と続く人間による地球環境破壊による気候変動に対応するために人間を含むあらゆる生物の進化体、いや短時間のうちに急激に起こるこの現象は異常進化体と呼んでよいと思います。そして気候変動とは地球上を人体の血流のように流れるエレメンタル・エナジーのバランスが崩れる事で起こる物なのです」
「それでは地球が我々人類を滅ぼそうとしているようではないか!しかも報告によれば世界中でその襲撃と思われる事件が続発している。各国はどう対応しているのだ?」
「異次元といったな。彼らには本拠地があるのか?」
出席者から悲鳴に近い質問が飛び交う。
「すでに我が国含めて報道規制を敷いてはいます。しかし押さえつけていられるのも時間の問題でしょう。又先程の質問ですが異次元から来る物もありますがUMAの大半は環境悪化に適応の為の生物の進化なのです。そこでさらなる協力をお願いしたいのです」
画面がさらに切り替わりどこかの山中らしき場所が映し出される。
そこには人間大のトカゲとそれより小柄な黒い鎧武者が対峙している。兜はつるりとした外観で俗にいう鍬形や前立てのようなパーツがない。いわゆる『南蛮具足』というもので巨大トカゲが鎧武者に突っ込んでいくが武者は体の軸をずらしてかわす。
さらにトカゲがその長大な尻尾で鎧武者を打ち据えようと振り回すがその尻尾を鎧武者に掴まれ、背負い投げの要領で地面に叩きつけられる。
すかさず鎧武者は腰の前垂れに当たる部分からUSBメモリのような物を取り出し刀の鍔部分に差し込む。
刀身部分が青白い閃光を発しエレメンタル・エナジーで満たされる。まだ抵抗の意思を示す咆哮を上げる怪物の胴を
「ハアッ」という若い女性の気合一閃逆袈裟に切り捨ててしまった。
巨大トカゲが爆発する様を見て
「これが我々の開発した試作型人工魔法の鎧『プロトマルス』です。この報告用にいい場面をお見せしたのですがいかんせん技術的な問題から出力調整に難があり、戦闘中いきなり機能停止する危険を孕んでいます。そこで現在開発中の物は出力を落とす代わりに各種ガジェットによる補助により戦闘力を確保する予定です」
その設計図に画面を切り替えながら黒川は説明を続ける。
「つまりオリジナルよりエレメンタル・エナジーの吸収率や変換率が悪いのですか?」出席者の質問に
「いえ、我々の開発したプロトマルスはいわば電池のようにエレメンタル・エナジーを『充電』して使うことにしています。そのためエネルギーを外部から無条件に補給できない欠点があるのです。オリジナルと同様の機能を再現するにはエナジーの毒性を消す機能の研究が必要なのです」
「しかしエレメンタル・エナジーは我々の生存に必要なものなのでしょう?」別の出席者の疑問に黒川は
「つまり酸素と同じですよ。我々が生きていくには必要不可欠でありますがその濃度が少しでも高くなれば逆にその毒性により我々は生きてはいけない。つまり高濃度または極端な低濃度のエレメンタル・エナジーが生物を怪物化させる要因なのです」と答える。
「以上を持ちまして報告を終わりたいと思います。どうかこの人類対地球の戦争を人類生存という勝利のために力を貸していただきたい。UMAのこれ以上の侵攻は人間社会の崩壊を意味するのです」
拍手と共に壇上の黒川はお辞儀をして去っていく。
「敵に関しての情報を隠して大丈夫ですかね?後で問題になったら大変ですよ」
会議が終わった後の会議場で古沢の心配そうな言葉にティブロンが答える。
「怪物共がありとあらゆる場所に時間を問わず出てくることですか?連中からしたらおちおちトイレにも座ってられない。いつ襲われるかわからないんですからね。それこそ恐慌状態になりますよ。文明崩壊の引き金がその対策会議の場だなんてとんだお笑い種だ」
古川はその言葉にいら立ちを隠さず
「ミスター・ティブロン、あなたは自分が持っているあの鎧が具体的にどんな機能を有しているかを他人にも我々にも教えようとしない。しかもあんなものがあるとは今日初めて知りましたよ。驚きを隠すのに相当苦労しましたがね。本当に人間文明を救うつもりがあるのですか?」
「もちろん。ただ私も開発者ではないのでね。どこがどう動くとか専門的な説明はできないのです。今は不確かな情報を一つ一つ解明する段階です。人類側の本格的な反撃はそれからという訳です。それまでは試作機たちに頑張ってもらう。そうですね黒川博士」
その言葉に同意するよう黒川は頷く。
「ティブロン、あの事を古川技術主任に話してもよいですか?」
黒川の言葉にティブロンが了解の意思を示す。
「あの事とは?」
「先日君が鎧に関して言っていた不可解なことだよ。炭素測定も金属片の分析結果も間違っていない。人間がこの事実を受け入れないだけなのだ」
「バカな。じゃあそれらが正しいとしてその事実から何が導きだせるっていうんです?」
「君はアトランティスという言葉を知っているか?」
「そりゃ言葉くらいは」
いかに現代の科学を信奉する古川努も伝説の大陸アトランティスの事は知っている。
ただしそれは空想上の馬鹿げた産物としてはあまりに有名だからに過ぎない。
だが目の前の大の大人2人はそれを大真面目に信じているとでもいうのだろうか?
(職場を変える事も考えないとな)
真面目にそう考え始めた古川努に
「あの鎧はそのアトランティスで作られ、ティブロン氏はそのアトランティス人の末裔と言ったら?」
「なんですって?馬鹿馬鹿しい。最新の研究で海底プレートは大昔から海の底にあった、つまり伝説にあるような大陸が沈んだ形跡はないと科学的に証明されているんですよ」
「古川君、人間が異次元に飛ばされるならより大きな力が働けば大陸だって移動するとは考えられないかね。この世界から異次元に行く時まるで地面に吸い込まれるように見える」
「それが大陸が次元移動する時見かけには海中に沈んでいるように見える?」
その事実に古川は愕然とする。一応の辻褄は合う。だがそれだけの大災害を引き起こした原因は何なのか
「その大災害を引き起こしたのは四元将の暴走なのだよ」
古沢の考えを見透かしたようにティブロンが言う。
科学者としての脳が古沢にその事実を受け入れ考えることを拒否していた。
その時部屋の電話が鳴る。その音で古沢は現実に引き戻される。
それを取った黒川は電話口の笠井恵美からとんでもない報告を聞く。
「そうか。馬鹿がまた一つ増えたか」
TVの電源を入れると各局すべてがある宣戦布告についての特番を組んでいた。
彼らの正面のプロジェクタには魔法の鎧を纏った達人とリザードマンの戦いが映し出されている。
この会議は文明存続委員会がそのスポンサーに向けた報告を行うために開催したものである。
「身体能力は成人男性の約15~20倍、バスの扉を容易くぶち抜く腕力、同等以上の体格のUMAの肉体を容易く引きちぎるパワーと」
プロジェクタ前の黒川博士が言葉を区切る。映像は魔法の鎧が数々の魔法や武器を使う場面を映しだす。
「最高出力ならば軽自動車すら蒸発せしめる火球フロギストン」
「強風とカマイタチに似た攻撃能力を併せ持つ風魔法プノエー」
「高耐久・高硬度の防壁を作り出す土のトイコス」
「さらにこれらとは別に手持ち武器たる杖から発するエレメンタル・ウェポンが確認されているだけで剣・銛・弩の三つがあり四元素の観点からもう一つある事が予想されます」
「これら数々の魔法と武器を使い敵をせん滅する、これが魔法の鎧を纏った人間の戦闘形態たる魔甲闘士なのです」
会場がざわめきに包まれる中黒川はさらに説明を続ける。
「この鎧は青銅と現在地球上には存在しない金属との合金で出来ており全備重量僅か15キロ、戦車砲の直撃にすら傷一つつかない耐久力と地球のエネルギーたるエレメンタル・エナジーを吸収し動力として先ほどの超パワーを発揮する、『超兵器』であります」
「なぜこのようなものがあると確信があったのですか?」
その質問に奥の扉から朽ち果てた鎧が運ばれてくる。
頭部の双眼の内左側が欠け、鎧全体も錆だらけでひしゃげたり殆どの装甲が吹き飛び内部の機械が露出している様は往事の戦闘の激しさを物語っている。
そんな状態でも作り手の意地かかつての装着者の雄々しい魂がそうさせるのか。
見る物に悲壮感より神々しさや気高さを感じさせる何かがあった。
少なくとも文明存続委員会のメンバーはそれを感じ取っていた。
「これは我らの協力者が持っていた火の四元将アイディオンです。御覧の通りこれは『死んでいる』鎧ですが残り三つ、水・風・土の鎧の行方が分かっておらず世界のどこかに眠っていると考えたのです」
「死んでいるとは?」
再びの質問に映像が先日の魔法の鎧が電撃を発して周囲を威圧する先日の調査の様子を映しだす。再びどよめきが会場に湧き上がる。
「各鎧には装着者を選ぶ意思がありそれ以外の者に触れたり近づくことを許さないためのセキュリティが働くのです。このため我々は誰でも装着できる量産可能な魔法の鎧を大至急作らねばならないのです。しかしそのためにはクリアしなければならない課題が多くあります。それは我々のいや全人類の敵たるUMAの特性とも関係があるのです」
画面が最初の戦闘の映像に切り替わりそれがサーモグラフィのようなものに切り替わる。
「UMAの最大の問題は通常の場合こちらから触れることが一切できないの事です。この画面にあるように体の周りに青い靄かオーラのようなものがある事が分ると思います。これが人類側からのあらゆる接触や攻撃を透過してしまう原因なのですが向こう側からはその制約はありません。そして異次元からやってくる彼らは人間を襲うよう本能に刻まれているのです」
画面上では魔法の鎧を取り巻く赤いオーラがUMA側のオーラと重なり消滅していく様が映し出される。
「御覧のようにエレメンタル・エナジーそのものかそれを纏った物体でなければ連中とまともに対峙することはできないのです」黒川は続ける。
「そもそもUMAとはー我々が便宜上そう呼んでいるだけで彼ら自身が自分たちをどう呼んでいるのかは不明ですがー産業革命以後連綿と続く人間による地球環境破壊による気候変動に対応するために人間を含むあらゆる生物の進化体、いや短時間のうちに急激に起こるこの現象は異常進化体と呼んでよいと思います。そして気候変動とは地球上を人体の血流のように流れるエレメンタル・エナジーのバランスが崩れる事で起こる物なのです」
「それでは地球が我々人類を滅ぼそうとしているようではないか!しかも報告によれば世界中でその襲撃と思われる事件が続発している。各国はどう対応しているのだ?」
「異次元といったな。彼らには本拠地があるのか?」
出席者から悲鳴に近い質問が飛び交う。
「すでに我が国含めて報道規制を敷いてはいます。しかし押さえつけていられるのも時間の問題でしょう。又先程の質問ですが異次元から来る物もありますがUMAの大半は環境悪化に適応の為の生物の進化なのです。そこでさらなる協力をお願いしたいのです」
画面がさらに切り替わりどこかの山中らしき場所が映し出される。
そこには人間大のトカゲとそれより小柄な黒い鎧武者が対峙している。兜はつるりとした外観で俗にいう鍬形や前立てのようなパーツがない。いわゆる『南蛮具足』というもので巨大トカゲが鎧武者に突っ込んでいくが武者は体の軸をずらしてかわす。
さらにトカゲがその長大な尻尾で鎧武者を打ち据えようと振り回すがその尻尾を鎧武者に掴まれ、背負い投げの要領で地面に叩きつけられる。
すかさず鎧武者は腰の前垂れに当たる部分からUSBメモリのような物を取り出し刀の鍔部分に差し込む。
刀身部分が青白い閃光を発しエレメンタル・エナジーで満たされる。まだ抵抗の意思を示す咆哮を上げる怪物の胴を
「ハアッ」という若い女性の気合一閃逆袈裟に切り捨ててしまった。
巨大トカゲが爆発する様を見て
「これが我々の開発した試作型人工魔法の鎧『プロトマルス』です。この報告用にいい場面をお見せしたのですがいかんせん技術的な問題から出力調整に難があり、戦闘中いきなり機能停止する危険を孕んでいます。そこで現在開発中の物は出力を落とす代わりに各種ガジェットによる補助により戦闘力を確保する予定です」
その設計図に画面を切り替えながら黒川は説明を続ける。
「つまりオリジナルよりエレメンタル・エナジーの吸収率や変換率が悪いのですか?」出席者の質問に
「いえ、我々の開発したプロトマルスはいわば電池のようにエレメンタル・エナジーを『充電』して使うことにしています。そのためエネルギーを外部から無条件に補給できない欠点があるのです。オリジナルと同様の機能を再現するにはエナジーの毒性を消す機能の研究が必要なのです」
「しかしエレメンタル・エナジーは我々の生存に必要なものなのでしょう?」別の出席者の疑問に黒川は
「つまり酸素と同じですよ。我々が生きていくには必要不可欠でありますがその濃度が少しでも高くなれば逆にその毒性により我々は生きてはいけない。つまり高濃度または極端な低濃度のエレメンタル・エナジーが生物を怪物化させる要因なのです」と答える。
「以上を持ちまして報告を終わりたいと思います。どうかこの人類対地球の戦争を人類生存という勝利のために力を貸していただきたい。UMAのこれ以上の侵攻は人間社会の崩壊を意味するのです」
拍手と共に壇上の黒川はお辞儀をして去っていく。
「敵に関しての情報を隠して大丈夫ですかね?後で問題になったら大変ですよ」
会議が終わった後の会議場で古沢の心配そうな言葉にティブロンが答える。
「怪物共がありとあらゆる場所に時間を問わず出てくることですか?連中からしたらおちおちトイレにも座ってられない。いつ襲われるかわからないんですからね。それこそ恐慌状態になりますよ。文明崩壊の引き金がその対策会議の場だなんてとんだお笑い種だ」
古川はその言葉にいら立ちを隠さず
「ミスター・ティブロン、あなたは自分が持っているあの鎧が具体的にどんな機能を有しているかを他人にも我々にも教えようとしない。しかもあんなものがあるとは今日初めて知りましたよ。驚きを隠すのに相当苦労しましたがね。本当に人間文明を救うつもりがあるのですか?」
「もちろん。ただ私も開発者ではないのでね。どこがどう動くとか専門的な説明はできないのです。今は不確かな情報を一つ一つ解明する段階です。人類側の本格的な反撃はそれからという訳です。それまでは試作機たちに頑張ってもらう。そうですね黒川博士」
その言葉に同意するよう黒川は頷く。
「ティブロン、あの事を古川技術主任に話してもよいですか?」
黒川の言葉にティブロンが了解の意思を示す。
「あの事とは?」
「先日君が鎧に関して言っていた不可解なことだよ。炭素測定も金属片の分析結果も間違っていない。人間がこの事実を受け入れないだけなのだ」
「バカな。じゃあそれらが正しいとしてその事実から何が導きだせるっていうんです?」
「君はアトランティスという言葉を知っているか?」
「そりゃ言葉くらいは」
いかに現代の科学を信奉する古川努も伝説の大陸アトランティスの事は知っている。
ただしそれは空想上の馬鹿げた産物としてはあまりに有名だからに過ぎない。
だが目の前の大の大人2人はそれを大真面目に信じているとでもいうのだろうか?
(職場を変える事も考えないとな)
真面目にそう考え始めた古川努に
「あの鎧はそのアトランティスで作られ、ティブロン氏はそのアトランティス人の末裔と言ったら?」
「なんですって?馬鹿馬鹿しい。最新の研究で海底プレートは大昔から海の底にあった、つまり伝説にあるような大陸が沈んだ形跡はないと科学的に証明されているんですよ」
「古川君、人間が異次元に飛ばされるならより大きな力が働けば大陸だって移動するとは考えられないかね。この世界から異次元に行く時まるで地面に吸い込まれるように見える」
「それが大陸が次元移動する時見かけには海中に沈んでいるように見える?」
その事実に古川は愕然とする。一応の辻褄は合う。だがそれだけの大災害を引き起こした原因は何なのか
「その大災害を引き起こしたのは四元将の暴走なのだよ」
古沢の考えを見透かしたようにティブロンが言う。
科学者としての脳が古沢にその事実を受け入れ考えることを拒否していた。
その時部屋の電話が鳴る。その音で古沢は現実に引き戻される。
それを取った黒川は電話口の笠井恵美からとんでもない報告を聞く。
「そうか。馬鹿がまた一つ増えたか」
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