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第6話 日常

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「ただいまって、何か美味そうな匂いが」
「ハルトさんおかえりなさい。丁度夕食が出来ましたよ。」
テーブルには色鮮やかなサラダに、スープ、ハンバーグが並べられていた。
「え、シュキルさんが作ったんですか!?」
「はい。こちらに滞在させて頂くので、せめて出来る事はと思いまして」
「むしろ有り難いです。サタンとは大違いだな」
「サタン様は一人では何も出来ないでしょうし」
「おい!どさくさに紛れて俺の悪口を言うな」
「失礼致しました。いやはや、サタン様があまりに出来損ないで。」
「俺に謝まってるかと思いきやディスるでない!」
「さて、冷めないうちに食べましょう」
「あ、シュキル貴様っ!ったく仕方ないから先に食べてやる」
サタンの扱いが慣れているところからしてかなり上の位なのかとシュキルの様子を見ていた。
勿論、食事は3人で全て平らげた。
「それにしても、良く人間食が分かりましたね。それに食べれるのが、意外でした。」
「大体は、食べれますね。人間食と魔物食は食材が違う事ですかね。勿論、人間食も食べれます。」
「人間食はあんまり好きじゃないけどな」
「サタン様、こちらに滞在している以上人間食に慣れて下さい。」
「嫌だ」
はぁーっとシュキルが溜息をつく。
その後、アッと思い出した様に話し出す。
「勇者の件ですが、探すのが困難みたいです。」
「何故だ?」
「勇者としての反応は察知出来るみたいですが。こちらでは、1市民でしかない為察知が難しいようです。」
「じゃあ、何故この世界にいると分かったんだ?」
「恐らくですが、こちらに戻る一瞬反応が残るのではないかと」
そこで話に割り込んだ。
「あの、シュキルさん。」
「どうしましたか?」
「その、勇者を見つけたらどうするんですか?」
「そうですね。話し合いで解決出来るならいいですが。」
「そうですか」
「シュキル、殺さないのか?」
「まだこちらの世界を把握していない状況で事を荒げるのは得策ではありませんので」
人殺しの会話を聞いていると心穏やかに過ごせない。
その為、シュキルの話を聞きホッとしていた。
その後に、ふと疑問が残った。
「その勇者の反応?もシュキルさんが調べているんですか?」
「いえ、城の者と連絡を取っています。こちらの石が連絡手段の一つです」
そう言うと首に下げている石を見せた。
「成る程。なんかスゲーな。」
「そうですか?後は、ゲートで行き来してですかね。それが一番手っ取り早いのですが、勇者に情報を与えてしまう恐れがある為使えないのです」
「石の方は情報与えないんですか?」
「かなり微量ですので、勇者として過ごしていなければ問題ありません」
「へー。色々大変ですね。」
「そうですね。特にサタン様の面倒を見るのが」
「シュキル、貴様最近調子乗ってないか?」
「いえいえ、別に根に持ってたりとかはしてないですよ」
あ、根に持ってるんだなと確信してしまった。
「ですが、私は普段からあまり変わらないですよ?」
「まぁ、確かに貴様は普段からそんな感じだな」
それ、完全に舐められてる。
実はサタンより敵に回すと怖いのはシュキルの方だとも思った今日この頃。
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