SAVE_YOU

星逢もみじ

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七廻目 誰が為に

第131話 疑惑

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「…………にわかには信じ難い。信じ難いが……はぁ、そこまで知られていては信じるしかないか」
「ありがとうございます」

 平穏無事なPLOWで、これまでの経緯を余すことなく蛍と霧山さんに話す。
 そうして話を進めて行くうちに分かったのだが、どうやらこの世界でもすでに無﨑は殺された後のようで、前回と同じように地下実験場に遺体があるのをすでに霧山さんは確認していたようだった。

 とりあえず、無﨑という悩みの種は一つ消えたということか。

「……それじゃあ、烏野さんが無﨑さんを……?」
「ああ」
「そんな……」

 蛍は信じられないといった顔をしている。それもそうだろう、自分が以前世話をしていた患者がそんなことをしたと知ってはショックも大きいはず。……やはりこの件は蛍に話すべきではなかっただろうか。

「それで、爆弾の件なんですが――」
「分かってる。アンのことを言いたいんだろう? 実は、後一時間ほどで昔の知り合いと会う約束をしていてね。……今はあまり冷静に話を聞いてくれる状態とも思えないが、状況が状況だ。嫌々ながらも協力してくれるだろう」
「昔の知り合い……?」

 それはもしかして黒石のことだろうか? 木流さんと話をしている姿が強烈に残っているせいか、厳しく恐ろしい印象しかないが、彼が味方についてくれるなら心強い。それに黒石がこちらに付いてくれるのなら、必然的に花柳も協力してくれるということになる。そうなれば、たとえアンでも簡単にはいかないだろう。

 そしてそれは決して非現実的な話ではない。黒石は木流さんと決着をつけようとしている。それをよく分からない横やりで邪魔されたくはないはず。それなら霧山さんの言う通り、協力してくれる可能性は充分考えられた。

 後は吾御崎が味方についてくれれば、より万全に近い状態になるが――。

「リリィに吾御崎という少女を探してもらっていたんだが、残念ながら彼女を見つけることはできなかった」
「……そうですか……」

 吾御崎は秘匿されていない。それなのに見つからないということは、秘匿されているアンの近くにいる可能性が高いのだろう。

 ということは、六〇階の水族館エリアに行けば会える可能性が――いや、無﨑が死んでいる以上、アンが爆弾を監視する必要も無いのだ、行けば会えるというわけでもないか。

 まさか無﨑が死んでいるという事を知らないというわけでもないだろうし、仮に知っていたとするならそれでも起爆させていない時点でアンの行動を読むことは難しい。

 ……だが、もし吾御崎がを見ていないのだとすれば、最悪の場合アン側につく可能性もあるのか……?

「……分かりました。助っ人の件、よろしくお願いします」
「ああ。しかし、そうなるとやはり一番の問題は烏野という男がどう出てくるかだが……」

 ルメを使った殺戮は前回限りの気まぐれ――そう考えるのはあまりに状況を楽観視しすぎだ。……かといって、どうすることもできないのが現状ではあるのだが……。

「――ねえ、今の話を聞いてて思ったんだけど」
「ん? どうした?」

 頭を捻っていると、それまで黙っていた蛍が神妙な面持ちで口を開く。

「……もしかしてなんだけど、これまで志樹を襲ってきた無﨑って、実はだったんじゃない?」
「え?」

 無﨑が烏野? 一体どういう意味だ? ……まさか同一人物だとでも言いたいのだろうか。

 だが、流石にそんな見間違いはしていない。言われてみれば烏野を思わせるような言動があったかもしれないが、古森や黒石、そして俺を殺した時に見た姿は紛れもなく無﨑本人のもの。変装にしてもあまりに完璧すぎる。

「これはあくまで可能性の話なんだけど……」

 と、そう前置きして蛍は続ける。

「志樹の話だと無﨑さんは前回――おそらく烏野さんによって殺害された。そうよね?」
「ああ」
「もしそれが偶然の産物ではなく必然的なものだったとしたら、これまでも確実に起きていたことだとしたら、志樹が知らないだけで毎回無﨑さんは死んでいたことにならない?」
「ちょっと待ってくれ、突然何を言ってるんだ。そんなことがあったら霧山さんが真っ先に気付くはずだろ?」
「……いや、私もSOWISをクラッキングするのに忙しかったからな、地下研究所に行く暇はこの一週間取れてなかった。だから無﨑さんが殺されていたとしても気付くことはできなかった」

 そうか。確かに以前霧山さんが無﨑を探してくれたのは俺が事情を説明したからだ。だが――。

「いや、でもそれはないよ」
「ない?」
「これまで無﨑は最終日でも変わらず生きて俺たちに襲い掛かってきていた。だから毎回死んでいた――ということにはならないはずだ」
「本当にそれは無﨑さんだった?」
「そうだけど……?」
「あのね、実は前の世界の事を薄っすらと覚えてるんだけど……私を殺したのは無﨑さんだった」

 無﨑が……? だが、前の世界で無﨑はすでに殺されていた。それは俺も確認済みだ。

「……勘違いじゃないのか? だって無﨑は――」

 そこまで言って、蛍の言いたい事に気付きハッとする。
 蛍が言いたいのは、俺が見間違えているのではないかということではなく、があるのではないかということだったのだろう。

「まさか……ホログラムを利用して、烏野が無﨑の皮を被っていた……⁉」
「妄想の域を出ない話だけどね」

 妄想……確かにそうかもしれないが、筋は通る。
 〝最重要被験者〟というリストに名前があった以上、無﨑に秘匿を付与されていたとしてもおかしくはない。秘匿さえされていればAIの目はいくらでも誤魔化せる。だが、までは誤魔化せない。しかしホログラムを使えば、そのどちらも騙し通すことが出来る。

 ……なるほど、確かにこうして蛍に指摘されるまで想像もしていなかった。もしこれが事実なら、見事に騙されていたということになる。

 そして、烏野の狙いはおそらくそれだけじゃない。最終的な目的が何かは分からないが、人間とAI両方の目を誤魔化すことが出来れば――無﨑の姿で事を成せば、すべての罪を無﨑一人になすり付けることも可能。

 だがそうなると、これまで俺たちを襲っていたのは――。

「くっ……!」

 してやられたという感情と共に、他者を欺くための入念な根回しに畏怖する。
 一体、烏野はこれまで何を考えながら俺と話していたのか。

「……こんな事態は想定していなかったから、上手くいくか分からないが」

 言いながら、霧山さんはキーボードを叩き始める。

「霧山さん……?」
「たった今、PLOWにいるすべてのAIにウイルスを仕込んだ」
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