不夜城レスタのわがまま姫と受難門番

繭墨くろむ

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不夜城レスタと面接&試験

無職、空へ(下)

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 飛行船の船長は少し戸惑いながらも、船内へと案内してくれた。
 船だというのに上等な宿のような設備。壁際にはバーまで用意されている。
 興味を引かれて見に行くと、なんと無料との事だった。

 「す、凄いですよフェイさん!無料です!飲み放題!」
 「あ、あんまりはしゃぎ過ぎないでくださいね・・・・・・?」
 「わかってます!」
 しゅたっと敬礼すると、リースはカウンターに向けて一言。
 「オススメのワインを一杯」
 ちょっとかっこつけているが、体格的になかなか決まらない。
 高いカウンターテーブルから顔を覗かせる姿は、まさしく夕飯を催促する子供だった。

 「少々お待ちください」
 と、カウンター内のゴーレムが言う。
 スタイリッシュな空間に似合う、メカニックなゴーレムだった。

 彼?は手早くグラスとボトルを用意し、無駄のない手つきでそのうす青い液体を注ぐ。

 「どうぞ。心を落ち着ける効果がございます」
 「ふふっ―――あ、ごめん」

 思わず笑ってしまい、謝る。
 はしゃいだせいでゴーレムに落ち着かせられるとか笑うしかないだろう・・・・・・?

 「し、失礼ですよ!・・・・・・あ、美味しい!」

 こんなの飲んだことがないとはしゃぎつつ、直ぐ様おかわりを要求している。
 落ち着けなかったようだ。

 やることも無いしと俺もカウンターに座り、オススメを注文する。

 小さなグラスに注がれた翡翠色の酒は、ストレス解消の効果があるらしい。

 美味しい酒を飲みながら話すうちに、リースとはだいぶ馴染んできた。
 これから同僚になると言うのに敬語を使い続けるのも難儀なので、態度を砕く。

 「わたしさ、色々やっちゃって故郷を追い出されちゃったからさー。もうここで働くしかないんだよね」
 となんとも反応し難い発言に困惑したり。
 「でもレスタに行ってから数日で帰ってくる人もいるみたいで、そんな大変な仕事わたしにできるのかな・・・・・・?」
 なんて不安な発言をされたり・・・・・・。

 「え?帰ってきた奴がいるのか?」
 そんなもったいないことをするやつが本当にいるのだろうか?
 彼女は、自分もよくは知らないけどと前置きして語りだす。

 「なんでもレスタの面接から青い顔をして帰ってくる人が一杯いるんだってさ。しかも皆、何があったか聞いても全然話してくれないの・・・・・・。いや、話せないって言った方がしっくりくるかも」
 「話せない?ベロを抜かれた訳じゃないんだろ?」
 舌を出しながらそういうと、そうじゃないよと首を振ってクスリと笑う。

 「なんでも面接に係わる話をできないようにされてるみたい。たぶんそういう契約魔法をかけてるんだろうけど・・・・・・。でもね、怪我してたりする人はいないみたいだから安心していいよ!」
 「さすがにそこまで闇は無いみたいだな。しかし、契約魔法か。情報漏洩を警戒するのはわかるが、全員採用の試験でそれをやるか?」

 普通、そういう類いの契約魔法は「名門魔法学校の受験」とか「皇国直属騎士団ロイヤルガード」の入団試験とかにしか使われない。

 そんな魔法が簡単なわけもなく・・・・・・。

 「それを受験者全員にかける周到さ。ちょっと怪しいね」
 「・・・・・・船で言ったら減点されるかも知れないぞ」
 「あ!嘘ですごめんなさい!!」

 なんとなく彼女が真面目なテンションになるのは違和感があったため、脅してバランスをとる。

 にしても確かに怪しい話だ。
 こんな求人の時点で怪しいが、そこに契約魔法が加わり拍車がかかる。

 「あぁー・・・・・・なんだ。怪しむのは当然だろうよ」

 不意にそんな声が聞こえてきた。
 突然の第三者の介入に少しだけ強張る。

 「おっと。そんな構えなくて良いさ・・・・・・俺だよほら、ここの船長」
 やがて顔を表したのは疲れた表情の男。
 やせ形の高身長で、癖の強い茶髪を手で撫で付けながらカウンターに座った。
 長い足を汲んで、置いてあったボトルを直接あおる。

 「ああ!船長さん!えっと、当然って言うのは・・・・・・」
 リースが首をかしげる。

 「そりゃ当然は当然よ。だって唐突な無条件の人員募集がかかったと思ったら、その面接や試験内容は一切明かされない。言ったやつに聞こうにも高度な契約魔法のせいで何も聞き出せない。・・・・・・怪しまないほうがおかしいだろ?」
 「まあ・・・・・・確かに」
 俺も今じゃ疑いまくりだ。
 なんなら臓器をいくつかとられて無理矢理黙らされてるのかも知れない。

 「だから今朝は驚いたよ。まだ受験希望者がいるなんてな」
 「えっ?受験者もいないくらいなんですか?」
 さすがにそこまで怪しまれてるなら、俺も考え直すぞ。
 隣を見ればリースも同じ考えのようで「降りる?」と視線は窓と俺を交互に行き来してそう訴えている。

 そんな俺達をみて笑いながら、船長は言った。

 「時計、見てみな」
 そうして取り出した懐中時計の針は、確かに「出航時刻」を刺していた。
 しかしながら、依然として船内に乗客はいない。

 「お、おいリース!降りよう!」
 「うん!」

 慌ててカウンターから立ち上がる。
 せっかく来てくれた船長には申し訳ないが逃げさせてもらおう。
 謝罪を使用と思って先程まで彼が座っていた席をみると、そこにはもう姿がなかった。

 カチャリ。
 

 嫌な予感がして、出入り口の扉に手をかけるが、案の定動かない。
 焦りをます脳内に、船内アナウンスがやけに鮮明に響いた。

 「これより、レスタ行き飛行船が出航いたします。揺れにお気をつけください」

 それは先程の船長の声。
 俺はたまらず叫ぶ。

 「下ろしてください!こんな怪しいところ行きたくないんです!!」

 しかし、帰ってきたのは悲しい宣告。

 「悪いがそれはできない。俺も誰かしら連れてかないと怒られるからな・・・・・・。大丈夫、死にはしねぇさ」

 多少危険はあるけどな。
 と呟いて、それっきり声は途絶えた。

 「が、頑張ろ・・・・・・。おーー」
 一人座り込んで拳をあげるリース。
 もはややけくそでそれに応じながら、俺達をのせた船は出航した。

 

 

 
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