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不夜城レスタと面接&試験

無職、わがままリストを攻略する(中)

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 煌びやかな表紙をめくると、手書きの文字の羅列が目に入る。
 丸文字や角ばった文字、やたらと読みにくい文字・・・・・・。書いた人が何人もいるのだろうか。

 「このリストは、使用人や城の住人がお嬢様から受けた依頼をまとめたものです。ちなみに、ここに書かれたものは達成済みの物から消されていく仕組みです」
 パラパラと紙をめくると、何十枚と依頼が箇条書きされたページが続く。

 「つまりこれが全部未達成・・・・・・」
 その内容はどれもハードな物ばかり。
 これをこなすのが仕事とは、なかなかのブラックぶりである。

 「これに取り組んでくださる限りは、レスタより食住居と給金の補償をさせていただきます」
 「ちなみに金額の詳細は?」

 リースはもう吹っ切れたのか、物怖じすることなく手をあげた。
 それに対してメイドの少女はとんでもない額を口にする。

 「月に金貨1枚。依頼はものによってお嬢様が報酬を下さいますが・・・・・・まあ、どれも金貨10枚は下らないものかと」

 金貨。それは硬貨の最大単位であり、4人家族が1枚で3か月は暮らせるといった価値がある。

 それが1ヶ月に1枚もらえる上に、食事と住所の提供。
 まさに破格だ。騎士団の何倍も給料がいい。

 「金貨・・・・・・!!」
 隣では彼女もたいそう盛り上がっている。
 
 「初めての依頼。好きなように選んでください。もちろん、失敗したとしてもリトライは可能ですし、依頼を変えることも問題ありません」
 「なるほど・・・・・・わかりました」
 
 一見とても好待遇に見えるが、それは裏を返すと「辞めた人は皆自主退社」ということになる。
 自分から辞めなければずっといい給料が貰えるのにこの様なのだ。よほどのハードワークが窺える・・・・・・。

 それでは。と彼女は席を立ち、去り際に言い残す。

 「死なないように、最低限のサポートは行います。一つ依頼を達成されましたら業務内容は変わりませんが、一応役職をお与えしますので。・・・・・・どうか、辞めないでくださいね?」

 ちらりと窺えた彼女の表情は、とても疲れているように見えた。

―――――――――

 
 「簡単そうな依頼がないか見てみよっか」
 リースはそう言ってリストを手に取る。
 とは言えどれも高難易度だが、せいぜいこなせそうな物を熟考しよう。


 「そうだな。それに、失敗しても首にはならないようだし、なんだかんだサポートもある・・・・・・。やるだけやってみるか」

 二人でパラパラと紙をめくっていく。

 「フレアスピリットの心臓の採取・・・・・・フレアスピリットってなんだっけ?」
 「火山とかにいる精霊系モンスターだよ。実体がないからほとんど攻撃できないくせに、あっちは熱を操って来るから勝ち目がない」

 もちろん、俺じゃ倒せるわけがない。スピリットの存在を知らない時点でリースも戦えないだろう。

 「じゃあこれ、千年草の枯れ葉・・・・・・。簡単そうじゃない?千年草ってあれでしょ?千年咲き続ける花のなる植物」
 「そうだな。で、花が咲いてるのに葉が枯れるか?」
 「・・・・・・元気そうだね」

 その通り。千年草の名の由来は「千年間青々しく佇み続けること」枯れ葉を探すなんて相当な奇跡が重ならなければ達成できない。
 なにせ枯れ葉で作ったお茶には不老長寿になる効果があるのだとか。

 「難しいね・・・・・・。フェイは何か案無いの?」

 お前も考えろと言うように、彼女はリストを俺に寄せる。

 唸りながら読み進めていくと・・・・・・。

 「あ、いい感じのあるじゃん」
 「どれどれ!?」

 それはもう食い気味に、彼女は身を乗り出して顔を寄せる。

 俺はリストの一行を指差して言った。

 「ジュエルクロウの宝玉採集。これなら場所さえ見つければ簡単だ!」

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